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高年期[二学期・後編]
体育祭が終わって・・・
しおりを挟むふと意識が浮上し目を開けると見知らぬ天井・・・いや、みた事あるな。
上半身を起こし辺りを見渡すと・・・うん、理事長室の奥にある仮眠室だねここ。いつの間に・・・ああ、多分銀徹さんが連れてきてくれたんだろうなぁ。
窓はカーテンは閉まっておらず薄暗くなっていた。あ、今何時?・・・理事長室から明かりが漏れてるから2人いるのかな?
「起きたか薫風。」
「銀徹さん・・・有難う、わざわざ連れてきてもらって、寝かせてもらって。」
「風間から許可を得ているから大丈夫だ。」
「あ、ところで風間理事長は?」
そう、理事長室には銀徹さんのみで風間くんの姿はなかった。・・・ほっとしたような淋しいような・・・
「あいつはまだ事後処理している。まぁ・・・あの閉会式での事だがな。クレームを言ってきた保護者もいたから風間に直接言ってくる者もいるし。」
「・・・またクレーム?」
「いや、内容からして謝罪のようだったな。それとお前を称える話も聞いたぞ?これでお前のあの忌々しい噂は消えるかもな。」
「え?」
「まぁそれも踏まえて風間はお前を全生徒の前で歌わせたんだろうな。」
マジか。計算されてたんだ・・・。なんか、うん、効果抜群?なんじゃない?明日は休みだからわからないけと・・・来週どうなることやら。
その後。銀徹さんに送ってもらい(もちろん五十嵐家の車で)少し夕食時に遅れて帰宅した。
「お帰りなさいませ薫風様!・・・お急ぎ下さい、旦那様たちがお待ちしております。」
「あ、ああ、ただいま。・・・なにかあった?」
「説明しながら準備を・・・」
なんか執事の鞍馬がすっごく焦ってるんですが・・・
え?母さんが料理を?・・・ああ、僕のチームが優勝したからね。でも何故?・・・切っ掛けは父さんの一言。うーん・・・母さんの前で話す話ではなかったね。昼間、無理矢理笑顔で美味しいと言って食べたのが悪かったのか?・・・それで?みんな僕の帰りを待ってたわけ?・・・そんなにヤバそうなの?
「・・・」
「・・・ねぇ、なんか言ってよ鞍馬。」
「だ、旦那様が食後に胃薬をもってきてくれると。」
「はぁ・・・なん~のフォローにもなってない!」
「ふ、ふぉろー?」
「ああ、なんでもない・・・はぁ。気合い入れて夕食を頂こうか。」
気合いというか心構え?母さんのご飯は壊滅的だからなぁ・・・料理人がいるのになぜあんな仕上がりになるんだ?・・・多分アレだよね。料理ベタな人特有の「これを入れたらもっと美味しくなるんじゃないかな」という変な自信をもってアレンジするチョイ足し調味料がマズイんだよね~。
あれですよ。カレーに肉じゃなく刺身を入れたり、ハンバーグにチーズじゃなくキムチを乗せたり・・・スープに塩じゃなく砂糖入れたりとアレンジして失敗で終わる感じ?
そんな感じに母さんが作った料理は普通は酸味の効いてる食べ物が甘かったりと舌が痺れるような料理ができあがるのだ。
「遅くなって申し訳ございません。少々理事長室に呼び出されてしまって話をしていたら遅くなりました。」
「お帰りなさい薫風!これで全員揃ったわね!さぁ夕食をとりましょう!」
まず第一声は勿論、母さんだ。・・・他3人は苦笑いしていた。もちろん僕も。
・・・それから夕食は、言わずもかな、腹五分位でご馳走さましました。なんと、ほぼ母さんの手が加わっていたからだ。・・・見た目は普通だったのに中身が見た目を裏切ったのだった。一応、出された物は残しませんでした残しませんでした。ただおかわりをしなかっただけ。料理長が配慮して量を少なくしてくれたのが有り難かった。
後に流依兄さんの部屋へ真菜と一緒に訪れ料理長が夜食と称しサンドイッチを3人分と、胃を整えるという飲み物をくれた。
「薫風・・・母さんに料理を教えてやったらどうだ?」
「うん・・・あれは酷かったね。今度、母さんが休みの時に誘ってみるね。料理長は母さんにきつく言えないもんね・・・」
「そりゃ雇い主の奥方様だからね。」
「お兄様がご指導するのであれば私も参加したいですわ!私もクッキーを作って莉美ちゃん達に食べてもらいたいですわ!」
「ああ、じゃあお茶会の時に出せるよう練習しようか。」
「はい!お願いします!」
こうして兄妹と仲良く夜食を食べ談笑して部屋に戻り就寝した。
___________
「・・・」
学校へ行ったら校門潜った所で大注目を浴びた。まぁ想定内。そそくさ園庭へと逃げる。
「おはようございます。」
「ああ、八乙女か。おはよう。」
「はぁ~・・・すみません、朝礼が始まるまでここに居て良いですか?」
「ああ・・・人気者は辛いな。」
クックッと目を細め控え目に笑った。う~ん、目の保養。ダンディーだから見惚れちゃうね。唯一この学校で前世より年上の知り合いって庭師さんだけなんだよね。10近く離れてるけど今は倍違う。僕の親よりは下だけどね。
「ダージリンでも飲むか?朝は人が少ないし、作業はほぼ終わったから手が空いてるぞ。」
「本当ですか?是非!」
わー庭師さんが積極的だぁ~。クッキーパワー半端ない!
「ん~・・・美味しい。」
「八乙女・・・あ~お前兄弟2人居るから名前で呼んでいいか?・・・薫風、今日は大変だぞ?」
「へ?」
「朝からお前の話で持ちきりだぞ。まぁ俺も閉会式に参加していたから生徒の噂話には納得するがな。」
「・・・例えば、どんな事を?」
「『八乙女弟は実は理事長と接してる時は演技で本性は淑やかな才子』、『親衛隊に呼ばれているように姫の様な風格がある』、『理事長との噂はあくまで護身のため理事長が噂を流した。』他にも──」
「あーもう結構です。」
「自分で聞いてきたくせに。・・・まぁ手の平を返したような印象だな。お前の親衛隊の隊長?がなんだか興奮していたぞ。」
「・・・」
隊長?神泉先輩かな。・・・まぁ自分が指示してる人の好印象の噂を聞けば胸を張りたくなるよねぇ~。まぁこれで僕の親衛隊への嫌がらせ?はなくなるよね。・・・でも増えられても困るんだけどね。管理大変そうだし。いや、自惚れなら良いんだけど・・・
「・・・襲われないよう用心しろ。」
「フラグ立てないでください。」
「ふらぐ?」
「いえ、こちらの事です。気にしないでください。」
いやぁ~・・・どうしよ?万純くんにずっとくっついていようかな。それなら安心かな?いや・・・万純くん戦力にならないんだよな。できて仲間を呼んでくれるだけ?
「まぁ信頼できる鳥羽や理事長に頼ればいい。」
「そーします。」
気持ちが落ち込みつつ紅茶を飲み干し教室へと行く。はぁ~気が重い・・・
「おはよう。万純くん、紫音さん、麗華さん。」
「おっはよー薫風くん!」
「ごきげんよう薫風さん。」
「ごきげんよう八乙女さん。」
・・・ん?万純くんはいつもと変わらずおちゃらけた笑顔だけど、紫音さんが・・・笑ってる?
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