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高年期[二学期・後編]
状況整理
しおりを挟むさて、あと気になるのは蛭間さん・・・
昼間出勤だから放課後、皆と話した後に会いに行こうかな。
「か、薫風くん!た、助けてっ!」
「は?」
愛翔さんと別れ教室に戻ると陽南さんに助けを求められた。・・・何事?
「何故いつも八乙女を求める!?そんなに八乙女が好きか?」
「好きとかそんなの関係ありません!こう無理矢理攻められるのは嫌です!」
「・・・だれ?・・・っ!うおっ、とと!」
知らない男が陽南さんと教室で揉み合っていた。・・・そして何故か僕を見つけて背中に隠れた。・・・おい、僕を盾にするんじゃないよ。
おっと!?なんか突進してきたので伸びてきた腕を掴み、捻って後ろをとり関節外れるギリギリまで絞りたてました。はい。
「いでででででっ!」
「・・・陽南さん、この人誰?」
「し、知りませんわ!急に教室にやってきて私の名前を呼んで、私と目があった瞬間襲ってきたのですわっ!」
「へぇ?か弱い女性に巨体な男が襲いかかったんだぁ~?」
「っ!?」
「僕の恋人知ってる~?・・・ここの理事長なんだけど~・・・どうする?」
「ひっ!」
「陽南さん、どーしたい?」
「え?あ、・・・えっと、せ、先輩?あの、私に何か用があったのですか?」
「っ!・・・ぅあ・・・あ、す、好きです!お、俺と付き合ってください!」
「「・・・」」
・・・こいつ、空気読めよ。あ~お兄と全っ然違う面倒!でもある意味、度胸あるよね。うん、立派だよ先輩?その度胸に免じて解放しようじゃないか。
「っ!?あ・・・?」
「ふ、ふふ・・・陽南さん、返事は?」
「へ?あ、えっと?」
「先輩、凄く度胸ありますね。男らしいです。僕は嫌いじゃないですよ。」
「「!?」」
「でも・・・勢いだけじゃ駄目ですよね?突進してしまったら大抵のご令嬢たちは怪我をしてしまいますよ。」
「あ・・・」
「呼び出して、廊下でもいい、2人きりになって、直接告白しても、あ、もし恥ずかしいのであれば手紙でもいいので、気持ちを伝えるのが得策でしょう。・・・いきなり教室に押し寄せて体当たりは駄目ですよ。」
「・・・」
「てなわけで?陽南さん、返事は?告白を受ける?受けない?それとも保留?」
「・・・すみません先輩。私、先輩の事、なにも知りません。ですのでお断りします。」
「・・・っ、わかった。すまない、迷惑をかけた・・・」
はい、一件落着。・・・ってか先生、廊下で見てないで場を納めてくださいよ。何観察してんのさ?
とりあえず陽南さんにもう一度謝って先輩は自分の教室へと帰ってった。僕も自分の席に戻ると万純くんは目をキラキラさせて、紫音さんは何故か悔しそうな顔して僕を見てきた。・・・え、何?
「いやぁ~薫風くんっていつも格好いいよねぇ~!場を納めるのが上手ってか自分のペースに相手を持っていくのが上手ってゆうかっ!ん~惚れ惚れしちゃうわぁ~!」
「・・・おい、惚れ惚れとか何気味の悪い事を言うんだよ。・・・まぁ誉め言葉として受け取っておくよ。」
「んもぅ~素直じゃないんだからぁ~!」
「何そのオネェ口調!やめれ!」
「おねぇ?ああ、女性の様なこの口調の事!?いやぁ~結構柔軟な受け答えが出来るから気に入っちゃってるんだよねぇ~!」
「この・・・チャラ男め!」
「ははは!」
・・・はぁ~この気軽い話し相手、やっぱ万純くんは友人として特別だなぁ~。多分、万純くんいなかったらこんな楽しい学校生活できなかっただろうなぁ。うん、感謝感謝。
でも何故紫音さんが悔しそうな顔で睨んでくるのかわからない・・・僕、何かした?
「・・・良い所で邪魔が入ったわ。何故いつも邪魔をっ!」
「・・・それは紫音さん、あなたを守る為だよ。」
「っ!?き、聞こえて・・・?」
「紫音さん、陽南さんは二階堂先輩の事は好きでないようです。気にせずアピールするといいよ。」
「な、な、なに、を!?」
「ふふ、紫音さんは美人なんだから素直になれば二階堂先輩、振り向いてもらえるよ。男は甘えられるのに弱いから。」
「っ!?」
「陽南さんには他に気になる人がいるみたいなんだ。もちろん、その相手は僕じゃないよ?僕は恋人がいるから。」
「・・・なんなんですの八乙女さん?何が言いたいのです?」
「ん?・・・僕はただ紫音さんを応援したいだけだよ?・・・僕も、紫音さんの気持ち、解るから。」
「え・・・?」
そう、今の紫音さんの状況は僕の今の状況と同じだ。好きな相手に振り向いてもらえない。それがどんなに辛いことか・・・
「僕は紫音さんの、そのツンデレ姿好きだよ。」
「えっ!?す、すき!?な、何を!?」
「もちろん友人としてね。中学の時いつも一緒だったでしょ?」
「・・・あ」
「前みたいに名前で呼んでよ。麗華さんも。」
「・・・私は馴れ馴れしくて男性を名前で呼べません。」
「うん、麗華さんは相変わらずブレないね。うん麗華さんは好きに呼んで?」
「・・・薫風さん。・・・朝のあの態度は、申し訳ございません。・・・今更ですが。」
「・・・うん、流石ツンデレ。うんうん、いいよ紫音さん。前のように気軽に接して?相談も乗るから。」
「つ、つん?・・・わ、わかりましたわ。」
・・・はぁ~~~これで紫音さんの腹ボテエンドは免れたかな?あ、違うな、二階堂ルートでの悪役令嬢の最後は退学処分&親に高齢のジジイに売られるんだっけ?・・・こんな美人さん、バッドエンドになんかさせませんよ。なんなら僕の兄さんあげるよ。
・・・流依兄さん・・・今なら兄さんの気持ちがわかるな。でも兄さんの気持ちに答えられない。ただ一緒に支える事ならできるけど・・・
その後は先生に取り仕切られて皆席に着いて何もなかったように授業が始まった。
___________
3人揃って、まずはこの状況をお兄二人に話す。険しい顔をされたが理解はしてくれてるようだ。
「・・・つまり、そのリセットにより対象者の人格が変わった、と。」
「人格までは変わってないよ。ほんと、記憶を無くしたような感じなんだよ。」
「・・・そうですわね。でも流依さんが薫風くんにそんな冷たい態度を取るとは思いもよらなかったわ。・・・対象者のみが記憶が無くなって多少は周りに影響が出るのは仕方ないとして・・・あ、まさかっ!」
「?」
「八乙女流依は・・・私が知らなかった全クリによって解放される隠れキャラでは!?」
「!」
そ、そうかー・・・流依兄さんが。あ、だからリセットされた・・・?うぅぅ・・・優しい兄さんに戻って欲しい・・・
「顔が整ってるのに何故ヒーローじゃないのかしらと、ずっと思ってましたの。これで納得しましたわ。」
「・・・僕の兄さんが隠れヒーロー・・・だからその弟の僕も顔が整ってるのか?」
「まっ、ナルシスト!・・・いや日本人に取って薫風さんの顔は誰がみてもイケメンの部類に入りますわよね。」
「この瞳の色もそうだし・・・はぁ~兄さんが・・・うん、あまり実感がわかないね。」
「仕方ないですわ。・・・ところでお二人は話に付いてきてますか?」
「「・・・」」
2人とも凄く険しい顔してるんですが・・・え、何考えてるの?
「・・・リセットされた事によって対象者たちの記憶が無くなったのはわかった。・・・それで、何故花塚がモテるようになった?」
「・・・恐らく、私がヒロインだからでしょう。元のシナリオ通りに話が戻っただけですわ。・・・しかも何故か二階堂さんと子鷹狩さんは私に対してかなり好感度が上がってる状態で・・・」
「・・・てか何故2人は陽南さんが僕の事が好きって流れになってるの?」
「それは・・・よく一緒にいるから?」
「なんか変な記憶操作されてるよね。悪役令嬢の紫音さんも僕が中学の時に悪役令嬢にならないよう淑やかな令嬢へと更生できるよう修正したのに・・・それが無かった事になってるなんて。」
「・・・そーいえば、昼間の出来事、あれイベントでしたわ。」
「・・・は?」
「確かあれは、本当は薫風くんではなく攻略中のヒーローに助けてもらうイベントですわ。そして・・・それを操ってたのが紫音さん、つまり悪役令嬢ですわ。」
「・・・」
どーなのそれ?・・・でも、とりあえずはっきりわかった事は、花塚陽南はヒロインに返り咲きしたって事だね!
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