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高年期[二学期・後編]
変わった所。変わらない所。
しおりを挟む「ごきげんよう薫風くん。・・・少々お話、宜しいですか?」
「・・・おはよう陽南さん。こちらも少し話したい事がある。裏庭で良いかな。」
「はい。」
園庭から教室へと行く。すると第一声に陽南さんの声が聞こえてきた。
裏庭へと行き辿り着いた途端、膝から力が抜け芝生へと座り込んでしまった。
「・・・わ、たし・・・選択を間違えたのかもしれない・・・」
「大丈夫ですわ。私は昨日の話の内容も、今までの15年分の記憶も、前世も覚えてますわ。・・・それより、どうして朝からそんな真っ青ですの?何かありましたか?」
「・・・うぅぅ」
流依兄さんの婚約者が紫音さんという事、リセットした事によって庭師・鬼龍院さんと蛭間さんの2人の関係が変わってる事を話した。
「リセットによる補正が実行されたようですわね。・・・私もたまに2人が仲睦まじい姿を見ましたわ。・・・それが無かった事になるなんて・・・とても恐ろしいですわね。」
「・・・元に戻らないのかなぁ・・・私の選択のせい、でっ、うっ・・・」
「そんな!花彫さんのせいではありませんわ!・・・この世界が可笑しいのですわ!・・・そういえば風間くんには会いましたか?」
「・・・今日の昼、恒例のお弁当を共に食べる日だけど・・・この状態なら風間くんもきっと・・・」
「まだわかりませんわ!だって未だにピアスを装備してるではないですか!そんなに難しく、悪い方へ考えてはいけませんわ!」
「・・・」
あーどうしよう。もしかして銀徹さんも?愛翔さんも?私の事忘れてたら・・・
「花彫さんしっかり!貴方は今は八乙女薫風ですわ!そして今現在生きてますわ!ここは現実です!・・・そう、皆さん記憶喪失になってるとお考えくださいまし!そうすればこのモヤモヤした感情が少し晴れますわ!」
「っ!・・・そ、そうだね。リセットされただけで、もしかしたらまだ希望がっ・・・!」
「まず全ての現状把握をしなくてはなりません。・・・教室へ戻りましょう。大丈夫ですわ!ヒロインである私がいます!」
「!」
そ、そうだ・・・!ヒロインである陽南さんの記憶はそのままだ。対象者であるはずのヒロインが記憶が残ってるのは明らかおかしい。・・・まだ諦めるには早いって事だよね。
陽南さんの手を借りて立ち上がり教室へと戻る。
いつもの席に左から麗華さん、紫音さん、万純くんと座っていつもと変わらない風景だ。・・・だが
「おはよう万純くん、紫音さん、麗華さん。」
「おはよう薫風くん!なんだい花塚さんと一緒にどこへ行ってたんだい?」
「・・・ごきげんよう。」
「ごきげんよう八乙女さん。」
・・・紫音さんの態度が若干棘があるような気がするのは気のせいかな?
陽南さんも不審に思ったらしく紫音さんを凝視し次に僕の顔を見てきた。
「まさか・・・!」
「・・・悪役令嬢に戻ってる!?そんなまさか?薫風くん!あなた中学で知り合って仲良くなりツンデレを柔らかくしたって・・・!」
「・・・」
あまりの紫音さんの素っ気なさにショックを受けた。・・・万純くんは変わらないようだが・・・ああ、モブだからか?麗華さんは元々僕とあまり話さなかったから仕方ないけど・・・さすがに辛い。
「・・・放課後また話し合いましょう。」
「わかった・・・。」
「気をしっかり持ってください。そして、もしかしたら未来の従兄弟になる可能性がある以上、とにかく前の様な親しい関係に戻るべきですわ。」
「・・・」
それどころじゃない・・・やばい、ショックから立ち直れるかな?
「・・・万純くん、変な事聞くけどさ、テストの時、どうだった?」
「ん?中間テストの事かい?いやぁ~1学期に比べて一気に成績が上がったから先生にも親にも褒められたよぉ~!薫風くんの指導のお陰だねぇ~!」
「そ、そっか・・・えっと、勉強ってどんな感じでやったの?」
「?主に放課後みんなで勉強したのをちゃんと復習して覚えたよ?・・・どーしたんだい?」
「いや、いい・・・ごめん変な質問して。」
「??」
やっぱり可笑しい・・・紫音さんが話に入ってこない。・・・紫音さんも僕と親しかった記憶が無いようだ。・・・次の休みに話しかけて確認すべきだな。
・・・
「紫音さん、ちょっと良いかな。」
「なんですか薫風さん。あまり話しかけないでもらえますか?」
「っ!・・・少しでいい。」
「私、これから生徒会室へ行くのです。後にしてくださいませ。」
「せ、生徒会室に?何しに?」
「・・・不愉快ですわ。失礼。」
不機嫌な気持ちを隠しもせず僕を睨み付けて教室から出ていった。・・・あ、これかなりマズイ。
「か、薫風くん急にどうしたんだい?あんな邪答院さんに話しかけるなんて・・・!」
「え、普通だろ?」
「何を言ってるんだい!?なぁ朝から可笑しいよ、どうしたんだい?」
「あ、なぁ万純くん、紫音さんは何しに生徒会室に向かったんだい?」
「えぇ!?何を言ってるんだい?邪答院さんはね、ずっと二階堂先輩の事をずっと追いかけてるじゃないか!皆知ってる事を何故今さらそんな事を言い出すんだい?」
「っ!・・・」
・・・シナリオ通りだ。紫音さんは二階堂くんを追いかけて、陽南さんが二階堂くんに近寄るのを凄く毛嫌いして嫌がらせをしてくるんだ。・・・そんなっ、僕と紫音さんと過ごした中学時代の記憶はどうなったんだ?
「ちょっ!?薫風くん?具合悪いのかい?・・・保健室へ行くかい?」
「・・・」
「すみません万純くん、私が保健室へ薫風くんを連れていきますわ。」
「あ、花塚さん・・・!あ、じゃあよろしく。」
・・・おい、万純くん何故陽南さんに話しかけられて赤くなるんだよ!・・・あ?万純くんも少し補正がかかってる・・・?
「さあ行きましょう薫風くん。」
「あ、うん・・・」
肩に手を置かれ少し陽南さんに凭れるかたちで保健室へと向かう。
・・・
「・・・」
「薫風くん・・・さっそく動揺いたしましたね。」
「・・・中学の時の紫音さんとの馴れ初めが思い出がない?・・・愛翔さんも、もしかしたら?」
「・・・そうですわね。・・・今さらですが確かに私は始め攻略者を二階堂くんへと絞ってたわ。でも今は何とも思いませんの。・・・どうしましょう?」
「そこっ!?てか紫音さんどうしよう・・・ショック受けすぎて暫く立ち直れない・・・」
「し、しっかり!・・・私は二階堂くんを攻略するつもりはありませんわ!だって・・・」
バンッ!
「失礼する。・・・陽南、何をしてる?」
「え?二階堂、先輩?それに子鷹狩先輩も・・・」
「八乙女が体調崩したからといって、何も陽南が助ける必要ないだろう。」
「陽南、そんなに八乙女が好きなのか?」
「「・・・」」
え、話が読めないんですけど。・・・てか、呼び捨て?陽南さんを呼び捨てで僕は苗字呼び!?
・・・どーなってんの?
「八乙女は理事長の恋人だろう。何故そいつといつもいる?」
「・・・お前は生徒会書記だ。お前が抜けては仕事が回らない。次の休みに生徒会室へ来い。」
「え、あの・・・?」
「八乙女は先生に任せればいい。男なんだから問題ないだろ。・・・もうすぐ休憩が終わる。私が教室へ誘導してやろう。」
「そうだな。陽南は保健室に用はないだろ?八乙女はほっとけ。・・・では行こう。」
「あ、か、薫風くん・・・」
「・・・いいよ。放課後、ね。」
「・・・わかりましたわ。また後程。」
う、2人に睨まれた・・・今まで僕に迫ってきていた人たちだからかなり戸惑う。・・・まぁ僕が諦めてと言っても諦めてくれなかったからこの方が良いのかもしれないけど。
・・・少し淋しく思うのは我が儘?
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