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高年期[夏休み編]
まんまと生け贄にされてしまった自分、乙。
しおりを挟む「何か欲しい物はございませんか薫風様・・・」
「あーえっと・・・食べやすい果物が欲しいデス。」
「畏まりました。他に何かございましたらベルを鳴らし下さいませ。今用意致します。」
「あ、有難うございます。足利さん。」
「いえ、こちらかこそ。では失礼致します。」
話終わり脱力し寝心地のいいベッドへと身を静める。背中には暖かい人肌を感じ腹部には重たい腕が絡まっている。
首だけを動かし後ろを振り向くと目の下にくっきりと薄黒い隈が出来ている風間くんがピッタリと僕にくっつき眠っている姿が見える。
何故こんな事になったのだろう・・・?
__________
祭りの帰り、先に愛翔お兄の家へ送り2人きりになった時、銀徹お兄が口を開いてきた。
「すまん薫風・・・寄りたい所があるのだが少しいいか?」
「ん?いいよ。別に明日も夏休みなんだし夜更かししても問題ない!むしろもっと遊びたい!」
「・・・遊びには・・・行かないな。まぁ許可ももらった事だし、少し寄り道するな。・・・すまん薫風。」
「?」
何故謝るのか疑問に思ったが行き先を見て謝った理由がわかった。・・・なんと行き先が風間家だったからだ。
えー何でだよ!何が目的?すっごく嫌な予感がするんだけど!嫌な予感しかしない!
銀徹さんと一緒に風間家に行くと、すかさず風間くんの執事、足利さんがお出迎えしてくれた。
「すまん・・・風間が死にそうでな・・・薫風不足だとか譫言を言い出してな・・・仕事率が下がって困ってるんだ。・・・ここは一つ頼む。」
「・・・え、僕は生け贄か、なにかですか?」
「すまん。とにかく風間と会ってくれ。そしてどうにかできそうなら頼む。風間に褒美をやってくれ!」
「・・・この事、あとで愛翔お兄に言いつけてやるからね。」
「!!?い、いや待て、何故愛翔が出てくる?てかそんな事言ったら俺はどうなる?」
・・・そう、何を隠そう前世の3人家族の中で最も怒らせて怖いのは藍人お兄なのです。ニーッコリ笑顔で猛毒を吐く藍人お兄はガクブルです。・・・それは今世の愛翔お兄にも受け継いでる雰囲気がある。
「愛翔お兄から落とし前をつけてもらいなよ。ねぇ銀徹さん?」
「っ・・・す、すまん。愛翔にだけは言わないでくれ。鳥羽の顔でブリザードは迫力有りすぎる。」
「・・・あーね。・・・はぁ、お兄これは貸しにしとくよ。今度返してね。」
「今度、俺が出来る限り甘やかしてやる。今回はほんと緊急なんだ・・・」
「・・・そんなに酷いの?風間くん・・・」
「くんって・・・まぁ前世からして風間は年下だが・・・まぁいい、よろしく頼む。」
お祭りの時とはうって変わって物凄く疲れた顔をされた。うわぁ・・・なんかカオスな予感。そして出迎えてもらった執事さんもなんだか窶れてる気がするのは目の錯覚かな?僕を見るなり目を輝かせて安堵したような顔をされたのですが?
そそくさと案内されたのは風間くんの執務室。・・・なんか唸る声が中から聞こえるのですが?え、ここに入るの?僕、生きて帰れるの?
コンコン。
「足利です。失礼します。」
「・・・あぁ」
なーんか声が?え、この中から返事したの、本当に風間くん?
「ああ・・・何かあっ・・・た・・・か・・・?」
「薫風様がお見えになりました。」
「こんばんは風間先ぱっ・・・ひえっ!?」
「薫風ーーー!!!」
中に入るとまさしくカオス状態になっていた。空気がどんよりして辺りが薄暗くて書類の束の山・山・山・・・おぅ。
その奥に書類とにらめっこしている風間くんがいた。・・・あ、メガネ掛けてる。でも・・・なんでだろう、髪がボサボサ。凄いレアな風間くんを見た気がする。
そんでもって中に入り僕の姿を見た途端、瞬間移動したんじゃないかと思う程の速さでこちらに近付きガッチリと両肩を掴まれた。おう、怖いぞ今の風間くん・・・
「か、薫風?え、どうしたの?あれ幻?ああ私はついに幻覚を見るようになったのか?」
「ちょっ!?この人大丈夫?なんかうわ言を言い出したけど!?え、僕どうしたらいい?ぎ、銀徹さん!?」
「あーかなり精神キてるな。足利、風呂は用意できてるか?」
「はい。準備は整っております。」
「よし、薫風、悪いがこいつを直ちに風呂へ連れていく。てか連れてきてくれ。」
「はぁ!?」
なにこの展開!?・・・うん、確かに少し臭うか?おいおい、公爵様が身だしなみ疎かにしたのか?え、それほどヤバい状況なの?
なんか未だに僕の名前を言いながらうわ言を言ってる風間くんを引っ張りだし風呂場へいく。
風呂場で何故か僕と銀徹さんと執事さんで風間くんを泡だらけにして湯に浸からせて身体を清めた。・・・ナニコレ?
それから正気に戻ったのか僕の背中に引っ付き虫の如くくっつかれそのまま寝室へと連れていかれ冒頭の通りになった。・・・腕でホールドされ身動きが取れない状況になったのだ。
僕、まだ祭りの帰りの私服のまま。トイレはまだ大丈夫だが少し小腹が空いたので遠慮なく執事さんに注文した。・・・確かに寝てる筈なのに腕の力が緩まないってどーゆー事?執着心ハンパないです!
「はぁ・・・こいつ夏休み始めは難なく仕事をしてたんだがな・・・中盤にきてから腕の動きが鈍くなり何故か不眠症になり食事や風呂など身の回りを面倒くさくなり更にはうわ言を言い出したんだ。さすがなかヤバいと思ってお前を呼んだんだ。すまんな。」
「い、いや・・・まぁ構わないですよ。はい。・・・そこまで執着してるとは思いませんでした・・・」
「薫風様にはご不便をお掛け致します。・・・このままお付き合いをお願い致します・・・」
「ああ!足利さん、そんな畏まらなくて構いませんよ!まぁ・・・1泊2泊くらいなら風間先輩の我儘くらい聞きますよ。」
「「・・・・・・」」
「ん?」
あ、あれ?何故2人して神妙な、微妙な、気まずそうな顔をするの?・・・え?なんか嫌な予感が・・・
「1~2日で済めば良いがな。」
「え?」
「薫風様への執着が凄まじいので、あの、何と申せば良いか・・・」
「は?」
「すまんな薫風。できるだけフォローする。」
「私もできるだけ薫風様が過ごしやすいよう務めさせて頂きます。」
「・・・は?え、1日2日だけだよね?・・・だよね!?」
「「・・・・・・」」
いやいやいや!ちょ・・・なんで2人して黙っちゃうわけ!?ちょっと答えてくれないかなぁ2人とも!?
そして銀徹さんは「また明日来る」と言い残し帰っていき、執事さんは 僕が言った食べやすい果物を準備に部屋からでていった。
ふと頭に浮かんだ言葉・・・『生け贄』
え、これ詰んでない?
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