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Ⅰ 第一学年
20 人食い鬼1
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「お兄ちゃん」
迷子と舞と三人で高等部の食堂で昼飯を食っていた時だ、ランドセルを背負った小学生がトレイを持って僕の脇の席に座った。
勿論服は着ている、ちゃんと二人に説明したのだが、先週の児童P法疑惑はまだ完全に拭い去られていない。
迷子と舞の冷たい視線が僕に突き刺さる。
「雷君の妹さん?」
迷子が疑惑八十九%入りの声で尋ねる。
「いや、摩耶の妹だ」
「お二人はお兄ちゃんのご友人ですか。私、初等部の雷羅雷姫と申します。お兄ちゃんが何時もお世話になっております」
「どうしたんだ姫、わざわざこっちまで飯食いに来て」
初等部は別棟なので食堂は別にある、テーブルも椅子もここに比べて小振りだ、だから小学生がこの食堂に来ることは滅多に無い。
「お爺さまが、お兄ちゃんの鵺討伐を聞いて喜んでいた事をお伝えしようと思いまして」
うわー、さすが本家、ずいぶん情報の把握が早い、姫は連休中に帰省して聞いたのだろうから、少なくとも三日後に情報が伝わっていたことになる。
「もう少し早くお伝えする積もりだったのに、雷子に邪魔されてこちらに来るのが遅くなりました。お爺さまが”でかした”と仰ってました。高校生で鵺討伐が可能ならば、十分に私の婿の資格は有ると太鼓判を押されておりました」
えっ!何だって。
「だから私は昔からお兄ちゃんは才能が有るって言ってたんです。やっとお爺様も理解して下さいました。今度お兄ちゃんのお部屋へお泊まりに行っても宜しいですか」
「良かったわね、雷君。お好みの彼女が出来て、でも逮捕されるわよ」
「雷君、東京都青少年の健全な育成に関する条例って知ってる。犯罪だよ、犯罪」
「大丈夫ですわ、真摯な交際関係にある場合は適用されませんから。それでは、私茶道のお稽古が有りますので、ご機嫌よう」
姫は言いたい事を言うとすたすたと食べ終わったトレイを持って立ち去ってしまった、うん、勿論メニューはお子様ランチだ。
僕はロリじゃない、なのに疑惑百%入りの視線で二人から睨まれている。
「ん?今の姫じゃないの、まあ良いわ、昔からあんたに懐いてたからねあの子。雷人、今日の講義が終わったら研究室に顔を出せって、恭平が言ってたわ、なんか警視庁の方が見えられるらしいわよ。ちゃんと伝えたわよ」
摩耶も伝言を伝え終わるとさっさと立ち去った、さすが姉妹、フットワークが良い。
警視庁?ぎくり、児童P物の不法所持がばれたのだろうか、実はまだメモリーに画像を保管してある。
二人の視線の疑惑度が二百%にアップした。
「雷人、紹介しよう。電雲警視だ」
ごめんなさい、ゲロしますんで鑑別所送りは勘弁して下さい。
「サイバー犯罪を担当している。俺の研究室の同期だ」
ん?少年育成課の方では無いようだ。
「すまんね、雷人君。マル暴関係の殺人事件で相談が有るんだ」
ああ、おじさんは来週一週間、学会の総会があるんで沖縄に出張する、それで僕を呼んだんだ。
「最初にこの映像を見て貰えるかい」
パソコンにCDを入れて映像を流し始めた、首都高の監視映像なのだろう、走行する黒いベンツが写っていた。
ん?車の窓に一瞬変な映像が混じった。
「直接データを見せて貰っても良いですか」
「ああ、構わないよ」
CDのデータに直接意識を送り込む、あのテレビに映った児童Pの画像を消す為に、僕は物凄く画像処理に詳しくなってしまった。
「あの窓に写った映像、内側から操作された物ですね。たまたまあの角度だからカメラに写ったんでしょう。中に乗っていた人物達は全く別の場所を走っている積りだったんじゃないでしょうか」
「さすがだな、恭平よりも優秀なんじゃないか」
「余計な御世話だ、まあ、優秀なのは確かだ。高校に入って僅か一月で初級に受かった」
「そりゃ凄いな、実は我々も君と同じ予想を立てている。この車に乗っていた連中は秋葉のコインパークに車を乗り入れた後消えたんだ。この駐車場の監視カメラを見る限り車から降りている気配が無い。車の中で掻き消えたとしか思えないんだ。しかも車内に多数の血痕の反応と爪痕が残ってた。鑑識の邪類の連中は人食い鬼の仕業だと言っている。食われたのは池袋の福吉会の連中で、仕掛けたのは今都内で急速に勢力を伸ばしている赤菱連合だとマル暴の連中は考えている」
「雷人、可能性として考えられるのは召喚なんだがな、召喚するには大きくて強い印と呪文が必要なんだ。ところがこの事件にはその両方が無い。唯一の手掛かりがこの画像の記録だけだからサイバーにお鉢が回って来たらしいんだが、何か解るか」
「もう少し詳しく視れば術の方向くらいは解ると思うよ。このCD借りても良いですか」
「勿論構わないよ。駄目元で良いから調べて貰えるかい」
「はい」
金曜日の午後、飯田橋から有楽町線に乗って桜田門へ向かう、うん、警視庁だ、おじさんの講義の実習と言う事にして貰っている。
出雲さんの所へ出向くと身長が百九十くらい有りそうなスキンヘッドの怖そうなおじさんが待っていた。
「マル暴の権田さんだ。権田さん、彼が今話した雷夢君だ。該者の車のナビを見せてやってくれ」
「了解しました」
映像を解析したら術方向が車の脇、ナビから送られている様なのだ。
その話を連絡したら、ナビの確認を頼まれたのだ、僕は今日生まれて初めて暴力団の事務所を訪問する。
「小僧、電車の方が早いから電車で行くぞ」
「はい」
地下鉄有楽町線で池袋に向かう、権田さんが座ってると、混んでるのに脇に座ろうとする人がいなかった。
迷子と舞と三人で高等部の食堂で昼飯を食っていた時だ、ランドセルを背負った小学生がトレイを持って僕の脇の席に座った。
勿論服は着ている、ちゃんと二人に説明したのだが、先週の児童P法疑惑はまだ完全に拭い去られていない。
迷子と舞の冷たい視線が僕に突き刺さる。
「雷君の妹さん?」
迷子が疑惑八十九%入りの声で尋ねる。
「いや、摩耶の妹だ」
「お二人はお兄ちゃんのご友人ですか。私、初等部の雷羅雷姫と申します。お兄ちゃんが何時もお世話になっております」
「どうしたんだ姫、わざわざこっちまで飯食いに来て」
初等部は別棟なので食堂は別にある、テーブルも椅子もここに比べて小振りだ、だから小学生がこの食堂に来ることは滅多に無い。
「お爺さまが、お兄ちゃんの鵺討伐を聞いて喜んでいた事をお伝えしようと思いまして」
うわー、さすが本家、ずいぶん情報の把握が早い、姫は連休中に帰省して聞いたのだろうから、少なくとも三日後に情報が伝わっていたことになる。
「もう少し早くお伝えする積もりだったのに、雷子に邪魔されてこちらに来るのが遅くなりました。お爺さまが”でかした”と仰ってました。高校生で鵺討伐が可能ならば、十分に私の婿の資格は有ると太鼓判を押されておりました」
えっ!何だって。
「だから私は昔からお兄ちゃんは才能が有るって言ってたんです。やっとお爺様も理解して下さいました。今度お兄ちゃんのお部屋へお泊まりに行っても宜しいですか」
「良かったわね、雷君。お好みの彼女が出来て、でも逮捕されるわよ」
「雷君、東京都青少年の健全な育成に関する条例って知ってる。犯罪だよ、犯罪」
「大丈夫ですわ、真摯な交際関係にある場合は適用されませんから。それでは、私茶道のお稽古が有りますので、ご機嫌よう」
姫は言いたい事を言うとすたすたと食べ終わったトレイを持って立ち去ってしまった、うん、勿論メニューはお子様ランチだ。
僕はロリじゃない、なのに疑惑百%入りの視線で二人から睨まれている。
「ん?今の姫じゃないの、まあ良いわ、昔からあんたに懐いてたからねあの子。雷人、今日の講義が終わったら研究室に顔を出せって、恭平が言ってたわ、なんか警視庁の方が見えられるらしいわよ。ちゃんと伝えたわよ」
摩耶も伝言を伝え終わるとさっさと立ち去った、さすが姉妹、フットワークが良い。
警視庁?ぎくり、児童P物の不法所持がばれたのだろうか、実はまだメモリーに画像を保管してある。
二人の視線の疑惑度が二百%にアップした。
「雷人、紹介しよう。電雲警視だ」
ごめんなさい、ゲロしますんで鑑別所送りは勘弁して下さい。
「サイバー犯罪を担当している。俺の研究室の同期だ」
ん?少年育成課の方では無いようだ。
「すまんね、雷人君。マル暴関係の殺人事件で相談が有るんだ」
ああ、おじさんは来週一週間、学会の総会があるんで沖縄に出張する、それで僕を呼んだんだ。
「最初にこの映像を見て貰えるかい」
パソコンにCDを入れて映像を流し始めた、首都高の監視映像なのだろう、走行する黒いベンツが写っていた。
ん?車の窓に一瞬変な映像が混じった。
「直接データを見せて貰っても良いですか」
「ああ、構わないよ」
CDのデータに直接意識を送り込む、あのテレビに映った児童Pの画像を消す為に、僕は物凄く画像処理に詳しくなってしまった。
「あの窓に写った映像、内側から操作された物ですね。たまたまあの角度だからカメラに写ったんでしょう。中に乗っていた人物達は全く別の場所を走っている積りだったんじゃないでしょうか」
「さすがだな、恭平よりも優秀なんじゃないか」
「余計な御世話だ、まあ、優秀なのは確かだ。高校に入って僅か一月で初級に受かった」
「そりゃ凄いな、実は我々も君と同じ予想を立てている。この車に乗っていた連中は秋葉のコインパークに車を乗り入れた後消えたんだ。この駐車場の監視カメラを見る限り車から降りている気配が無い。車の中で掻き消えたとしか思えないんだ。しかも車内に多数の血痕の反応と爪痕が残ってた。鑑識の邪類の連中は人食い鬼の仕業だと言っている。食われたのは池袋の福吉会の連中で、仕掛けたのは今都内で急速に勢力を伸ばしている赤菱連合だとマル暴の連中は考えている」
「雷人、可能性として考えられるのは召喚なんだがな、召喚するには大きくて強い印と呪文が必要なんだ。ところがこの事件にはその両方が無い。唯一の手掛かりがこの画像の記録だけだからサイバーにお鉢が回って来たらしいんだが、何か解るか」
「もう少し詳しく視れば術の方向くらいは解ると思うよ。このCD借りても良いですか」
「勿論構わないよ。駄目元で良いから調べて貰えるかい」
「はい」
金曜日の午後、飯田橋から有楽町線に乗って桜田門へ向かう、うん、警視庁だ、おじさんの講義の実習と言う事にして貰っている。
出雲さんの所へ出向くと身長が百九十くらい有りそうなスキンヘッドの怖そうなおじさんが待っていた。
「マル暴の権田さんだ。権田さん、彼が今話した雷夢君だ。該者の車のナビを見せてやってくれ」
「了解しました」
映像を解析したら術方向が車の脇、ナビから送られている様なのだ。
その話を連絡したら、ナビの確認を頼まれたのだ、僕は今日生まれて初めて暴力団の事務所を訪問する。
「小僧、電車の方が早いから電車で行くぞ」
「はい」
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