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Ⅴ 中央大陸
16 兄妹王宮を出る
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ーーーーー
クルシュ家令嬢 アンプローズ
ルクとナツが失敗した事は判るのですが、何故か勇者様は堂々と懇親会に参加されています。
王側と勇者様で争いが有ったのならば、懇親会自体が中止となっている筈なのですが。
何が有ったのでしょうか、ルクとナツが怯えて賢者の側を離れようとしません。
何時も自信たっぷりのルクとナツが怯える姿は初めて見た様な気がします。
王様も王妃様も勇者様に怯えていらっしゃる様です、勿論ルクとナツも。
争いにならない程一方的だったのでしょうか。
でも勇者様は賢者に怯えていらっしゃる様子です、はて、何があったのしょうか。
ーーーーー
困った事にマリア達は、俺が一方的に善からぬ事に及ぼうとしていたと勘違いしている。
さっきから、背後に立ち昇る黒いオーラを纏って俺を睨み付けている。
ルクとナツと言う二人の女性は、この国の王女様だった。
自分達の行為に比べれば、俺の脅しなどは可愛い物だと思うのだが、何故か酷く怯えられている。
王も王妃も初対面の筈なのに酷く怯えている。
王達とは少し離れた場所で、ホークさん達と一緒に十分飲み食いさせて貰った。
宴も終わりが近づき、王様は震えながら許可証を手渡し、とっとと退出してしまった。
王妃も王の後を追う様に脱兎のごとく退出し、取り残された先程の王女様二人は泣きそうな顔をしている。
もしかすると持ち帰りが可、権利はまだ消滅してないのかとも思ったのだが、マリアが怖くて口に出せなかった。
俺は、後ろ髪を曳かれる思いで王宮を後にした。
『お「兄ちゃん」』
そして帰りの籠の中、ホークさんやウィルさんがビビるほどマリアは怒っていた。
ーーーーー
クルシュ家令嬢 アンプローズ
勇者の乗った籠が見えなくなると、ルクとナツは力無く座り込むと抱き合って泣き始めました。
尋常じゃ無いです、そもそもこんな宴会に二人が最後まで残っているのが可笑しい。
何時もなら、真っ先に退出している筈です。
「どうしたの、最後まで残ってるなんて珍しいわね」
「駄目なの、許しが無いから帰れなかったの」
「駄目なの、心が縛られちゃってるの」
「えっ!それって」
「そうなの、あの人に従属の契約を結ばれちゃったの」
「仕方無かったのよ、物凄い魔術で脅かされて逆らえなかったの」
「頭の中に芋虫が一杯入って来た様な感じで何も考えられなかったの」
「でも一方的な脅しなら契約は成立しない筈でしょ」
「騙されたの、形式上私達が仕掛けた事に対する報復だから、対価的に契約が成立しっちゃったらしいの」
「確信犯だと思うわ、術に掛かったふりをして条件が整うまで待っていたんだわ。最初から私達の身体を狙っていたのよ」
「欲望に塗れた濁った犯罪者の眼をしてたわ」
確か王家は契約の女神であるノーラ様の加護を得ている筈だったから、二人はこの宿命から逃れられないでしょう。
それにしても、こんな短期間で王家の子女を二人も奴隷として手中に収めてしまうなんて、やはり勇者は侮れないです。
でも、奴隷は嫌です、これは少し様子見でしょうか、二人がエスなのは知っていますが、新しい扉を開いてくれることを祈りましょう。
ーーーーー
翌朝、出発しようと宿の玄関を出たら、外で王女二人が待っていた。
「なんだお前等」
「なんだは無いと思いますわよ、自分で隷属の契約を結んでおいて」
「私達は貴方に隷属、こほん、奴隷ですかから王宮に居場所はございません。責任を取って下さいませ」
「そうですわ、自分から私達の居場所を奪っておいて、なんだは無いと思いますわ」
「さあ、私達も覚悟を決めました。思う様に弄んでください」
『お「兄ちゃん」!』
「いや、待てマリア。早まるな、誤解だ」
とは言った物の、困った事に思い当たる節はある、あの強要の言葉が言霊として作用してしまったのだろうか。
下半身主導の疚しさ全開でマリアには正直に話せない。
「軽い気持ちの脅しが力を持ってしまったのか、仕方が無い、解除しよう」
欲望全開の本気が力を持ってしまったのか、物凄く勿体ないが、命は惜しいので解除しよう。
「おいジョージ、まだまだ揉めそうか。時間が掛かるなら俺達は酒でも飲んでるぞ」
「すいませんホークさん、そこの酒場で待っていて下さい」
「マリアちゃん、このナイフ使う」
「ありがとう、でもメイス持ってますから大丈夫です」
「解除はまだ出来ません。まだ奴隷としての役目を果しておりませんから」
「そうですわ、貴方の望んだ役目を果せば解除は可能です。覚悟は出来てますわよ」
マリアがメイスを振り被っている。
「ちょっと待て、マリア。他に方法は無いのか、他に」
「ありますが、宜しいのですか。形式的にでも構いませんから私達を娶って頂ければ隷属は解除されます」
「勇者様の妻の身分なら、客人として王宮に滞在可能です」
「それで行こう。あくまでも形式的にだから、なっ、マリア」
「兄ちゃんの馬鹿」
二人の手を引いて神殿に向かう、まあ、キスくらいは多目に見て貰おう。
婚姻証を手に二人が王宮へ戻って行った、これで一安心だ。
「兄ちゃん、後でじっくり話を聞かせて貰うからね」
「はい」
ーーーーー
「結果的には良かったかしら」
「えっ、なんで」
「あの人の代理として王権の移譲を申し出るのよ、二人でこの国を乗っ取りましょ」
クルシュ家令嬢 アンプローズ
ルクとナツが失敗した事は判るのですが、何故か勇者様は堂々と懇親会に参加されています。
王側と勇者様で争いが有ったのならば、懇親会自体が中止となっている筈なのですが。
何が有ったのでしょうか、ルクとナツが怯えて賢者の側を離れようとしません。
何時も自信たっぷりのルクとナツが怯える姿は初めて見た様な気がします。
王様も王妃様も勇者様に怯えていらっしゃる様です、勿論ルクとナツも。
争いにならない程一方的だったのでしょうか。
でも勇者様は賢者に怯えていらっしゃる様子です、はて、何があったのしょうか。
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困った事にマリア達は、俺が一方的に善からぬ事に及ぼうとしていたと勘違いしている。
さっきから、背後に立ち昇る黒いオーラを纏って俺を睨み付けている。
ルクとナツと言う二人の女性は、この国の王女様だった。
自分達の行為に比べれば、俺の脅しなどは可愛い物だと思うのだが、何故か酷く怯えられている。
王も王妃も初対面の筈なのに酷く怯えている。
王達とは少し離れた場所で、ホークさん達と一緒に十分飲み食いさせて貰った。
宴も終わりが近づき、王様は震えながら許可証を手渡し、とっとと退出してしまった。
王妃も王の後を追う様に脱兎のごとく退出し、取り残された先程の王女様二人は泣きそうな顔をしている。
もしかすると持ち帰りが可、権利はまだ消滅してないのかとも思ったのだが、マリアが怖くて口に出せなかった。
俺は、後ろ髪を曳かれる思いで王宮を後にした。
『お「兄ちゃん」』
そして帰りの籠の中、ホークさんやウィルさんがビビるほどマリアは怒っていた。
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クルシュ家令嬢 アンプローズ
勇者の乗った籠が見えなくなると、ルクとナツは力無く座り込むと抱き合って泣き始めました。
尋常じゃ無いです、そもそもこんな宴会に二人が最後まで残っているのが可笑しい。
何時もなら、真っ先に退出している筈です。
「どうしたの、最後まで残ってるなんて珍しいわね」
「駄目なの、許しが無いから帰れなかったの」
「駄目なの、心が縛られちゃってるの」
「えっ!それって」
「そうなの、あの人に従属の契約を結ばれちゃったの」
「仕方無かったのよ、物凄い魔術で脅かされて逆らえなかったの」
「頭の中に芋虫が一杯入って来た様な感じで何も考えられなかったの」
「でも一方的な脅しなら契約は成立しない筈でしょ」
「騙されたの、形式上私達が仕掛けた事に対する報復だから、対価的に契約が成立しっちゃったらしいの」
「確信犯だと思うわ、術に掛かったふりをして条件が整うまで待っていたんだわ。最初から私達の身体を狙っていたのよ」
「欲望に塗れた濁った犯罪者の眼をしてたわ」
確か王家は契約の女神であるノーラ様の加護を得ている筈だったから、二人はこの宿命から逃れられないでしょう。
それにしても、こんな短期間で王家の子女を二人も奴隷として手中に収めてしまうなんて、やはり勇者は侮れないです。
でも、奴隷は嫌です、これは少し様子見でしょうか、二人がエスなのは知っていますが、新しい扉を開いてくれることを祈りましょう。
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翌朝、出発しようと宿の玄関を出たら、外で王女二人が待っていた。
「なんだお前等」
「なんだは無いと思いますわよ、自分で隷属の契約を結んでおいて」
「私達は貴方に隷属、こほん、奴隷ですかから王宮に居場所はございません。責任を取って下さいませ」
「そうですわ、自分から私達の居場所を奪っておいて、なんだは無いと思いますわ」
「さあ、私達も覚悟を決めました。思う様に弄んでください」
『お「兄ちゃん」!』
「いや、待てマリア。早まるな、誤解だ」
とは言った物の、困った事に思い当たる節はある、あの強要の言葉が言霊として作用してしまったのだろうか。
下半身主導の疚しさ全開でマリアには正直に話せない。
「軽い気持ちの脅しが力を持ってしまったのか、仕方が無い、解除しよう」
欲望全開の本気が力を持ってしまったのか、物凄く勿体ないが、命は惜しいので解除しよう。
「おいジョージ、まだまだ揉めそうか。時間が掛かるなら俺達は酒でも飲んでるぞ」
「すいませんホークさん、そこの酒場で待っていて下さい」
「マリアちゃん、このナイフ使う」
「ありがとう、でもメイス持ってますから大丈夫です」
「解除はまだ出来ません。まだ奴隷としての役目を果しておりませんから」
「そうですわ、貴方の望んだ役目を果せば解除は可能です。覚悟は出来てますわよ」
マリアがメイスを振り被っている。
「ちょっと待て、マリア。他に方法は無いのか、他に」
「ありますが、宜しいのですか。形式的にでも構いませんから私達を娶って頂ければ隷属は解除されます」
「勇者様の妻の身分なら、客人として王宮に滞在可能です」
「それで行こう。あくまでも形式的にだから、なっ、マリア」
「兄ちゃんの馬鹿」
二人の手を引いて神殿に向かう、まあ、キスくらいは多目に見て貰おう。
婚姻証を手に二人が王宮へ戻って行った、これで一安心だ。
「兄ちゃん、後でじっくり話を聞かせて貰うからね」
「はい」
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「結果的には良かったかしら」
「えっ、なんで」
「あの人の代理として王権の移譲を申し出るのよ、二人でこの国を乗っ取りましょ」
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