神の鏡・・・兄妹異世界放浪記、妹を嫁にします。

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Ⅱ 王都にて

43 王城にて4

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翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳

ファネル・・・元公爵の御婆ちゃん、翔の骨董仲間でこの国の実力者
ハーネス・・・・公爵、ファネルの息子
アムネリア・・・公爵夫人

セーラ(セフィラネリア)・・・正王妃、ファネルさんの娘
ウル(ウイリアム)・・・この国の第一王子
ナンノ・・・国軍の騎士団大隊長
キャル(キャロライン)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、金髪の妖精の様な超絶美少女
アミ(アルミナス)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、銀髪でキャルと同じく妖精の様な超絶美少女。
マーニャ・・・スノートの貴族の娘、武官の家系で普段から兵士達との交流が有り、口調が荒い。
ニコル・・・黒竜将軍
ーーーーー
(カケル)

そして五日後、俺は再び祝賀舞踏会に参加する羽目になってしまった。
最初の舞踏会は、前夜祭的な色合いの強い身内の祝いみたいなもので、今度のは外国からの来賓も出席する、正式で対外的な王室行事だ。

どちらかに顔を出せば良いとの話だったのだが、なんでも来賓客達から物凄い強い希望が有ったとのことで、ハーネスさんから懇願されて、参加せざるを得なくなった。
再び急いで服を仕立てて貰い、何とか間に合わせた。

会場は王城の中の演舞場、当初は最初の舞踏会場と同じ場所を使う予定だったらしいのだが、外務担当官から池の危険性が指摘され、場合によっては確実に戦争になるとの強い提言があって変更したらしい。
真ん中にダンスフロアが有って、その回りを円形のテーブルが囲んでいる、うん、オーソドックスな形だ。

会場への入り口は二カ所、北側の階段と南側の大扉だ、最初に北側の階段から王族達が会場へ入り、階段下に並べられた椅子に座って客を出迎える。
国内有力貴族が最初に呼ばれ、会場入り口で王族達に頭を下げてから執事に案内されて指定された席に向かう、俺達は最後の方に呼ばれて末席に着く。

国内関係者で会場の半分ぐらいの席が埋まると、次に来賓達が入場する。
こちらは王の前まで歩いて挨拶し、献上品の目録を差し出す。
本物は従者が携え、係員に渡すのだが、さすがに国宝級の良い品が揃っている、うん、土産物を間違って持って来るような馬鹿はいない。

係員が脇の台の上に並べて行く、その台の脇に小さな円形の台が置いてあり、最初の舞踏会で献上された宝物が置かれている。
うん、宝石や首飾りの真ん中にどんとペットボトルが鎮座している、恥ずかしい事この上ない。

来賓達はペットボトルが気になる様で、自席に案内される時に、一端立ち止まって眺めていた。
全ての客の紹介が終わり、全員が着席すると会場が少し暗くなる。
待機していた魔導士さん達が灯りの調整をしているようだ。

楽団が静かな曲を奏で始めると、北側の階段の上が明るくなり、メリッサ王女が現れる。
静々と階段を降り、階段の下で深々と頭を下げて王の脇の空いている席に腰を下ろす。

明るく華やかな曲に変わる、客が一斉に立ち上がってパートナーの手を取って中央のフロアに向かう。
俺も彩音に手を引かれてフロアに向かうが、屠畜場へ向かう家畜の気分だ。

隅っこでこそこそ踊ろうと思ったのだが、彩音がずんずん真ん中に歩いていく。
結局見るからに自信の有りそうな連中に囲まれて踊る羽目になった、火の能力で周りを探ってぶつからない様にするので精一杯だった。

曲が終わる、とっと引き上げようとしたら、後ろから襟首を掴まれて、再び中央に引き戻された。
振り向くと白いマントを羽織った白い騎士服姿のキャルだった。
彩音と違い、背も高いし足も長いし力も強い、振り回されている気分だった。

曲が終わったら後ろから肩を叩かれた、うん、アミだった。
結局、アミとキャルに何曲か踊らされ、心身共に消耗して自席に向かう。

「おーい、カケル」

途中で紅い髪の美人さんに呼ばれた、黒いマントに黒い騎士服だから騎士なのだろう。

「なんだカケル、忘れたのか」

あっ、思い出した、前は短い短髪だったので直ぐに判らなかったが、スノートの少女達の一人、マーニャだ。

「いやすまん、髪を伸ばして物凄い美人さんになったんで見違えたよ、マーニャ」
「相変わらずすけこましな科白だなカケル、褒めたって突っ込ませないぞ」

うん、マーニャだ。

「何か物凄く目立ってたぞ、下手なくせに美人相手に何曲も踊ってよ」
「恥ずかしいから言わないでくれ、踊りは苦手なんだ」
「あっはははは、あたいも苦手だよ。ところでカケル、おまえが東部下マナ原の指揮者なんだよな」
「おう、一応な、成行きでやらされた」
「相変わらず流されてるなおまえ」
「ああ、俺もそう思う」
「・・・・・。ところでうちの頭がお前に会いたがってるんだが良いか」
「ああ、構わん」
「すまんな。おーい、将軍」

マーニャが壁際で立って談笑している老人に手を振って呼び寄せる、単なる隊長クラスの上司かと思っていたら将軍様だった。
肩幅が広く胸板が厚い、軍人らしい男性だった。
精悍な顔付で渋い魅力が有り、今も女性にもてるに違いない。

「何だマーニャ、男が見つかったのか、外泊許可なら直ぐ出すぞ」
「違うわい」
「小僧、こいつはまだ処女だから優しくしてやれよ」
「だから違うって言ってんんだろ、爺。こいつが例の指揮者なんだよ」

部下に爺呼ばわりされて笑っている、気さくで飾らない武人なんだろう。

「カケルと言います。成行きで指揮者を務めてましたが今は単なる事務職の冒険者です」
「ほう、君がそうか、私はニコルだ。もし明日暇だったら黒竜騎士団の兵舎に来て貰えないか、聞きたい事がある」
「はい、明日は特に用事が有りませんからお伺いします」
「ありがとう、ならば礼だ。マーニャ、カケル殿のダンスのお相手をしろ。命令だ」
「うっく、了解しました。さあ、カケル行くぞ」

また、フロアの中央に引っ張って行かれてしまった、なんとも迷惑なお礼だ。
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