神の鏡・・・兄妹異世界放浪記、妹を嫁にします。

切粉立方体

文字の大きさ
上 下
57 / 89
Ⅱ 王都にて

31 再会

しおりを挟む
翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳

マッフル・・・王都冒険者ギルドの幹部
ファネル・・・元公爵の御婆ちゃん、翔の骨董仲間でこの国の実力者
アリア・・・ファネルさんの館のメイド長
ナンノ・・・国軍の騎士団大隊長
ムラーノ・・・公爵の館の守備隊長

キャル(キャロライン)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、金髪の妖精の様な超絶美少女
アミ(アルミナス)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、銀髪でキャルと同じく妖精の様な超絶美少女。

東部下マナ原・・・王都の川向にある東部平原地帯

ーーーーー
(カケル)

謁見の順番を待っていた訪問客達も退屈していたらしく、皆、待合室からぞろぞろと出て来て野次馬を決め込んでいる、なにせ美少女二人が暴れ回っているのだ、これは見物に違いない。
引率者らしき騎士や直ぐ脇の部屋から出て来た護衛兵も取り押さえようとするのだが、刃物を振り回す二人に危なくて近付けない。
駆け付けた護衛達も野次馬と化した訪問客達が邪魔で近付けない。

被害者である俺は、孤立無縁で刃物を振り回す危ない少女達から逃げ回る。
まあ、相変わらずの大振りなので切られる心配はしていないのだが。
疲れた頃合いを見計らって、足を払う、これも相変わらずに見事に転がってくれる。
野次馬達は大喜びだ、美少女が惜しみなく脚線美を披露してくれるのだから。

タイミングを見て剣を取り上げる、護衛兵と引率者が折り重なって二人を押さえ付けた。

「地下牢へぶち込んでおけ」

何とか野次馬を掻き分けて出て来た守備隊長が部下に命令する。

「いや、それは」
「ナンノ大隊長殿はご不満か、此処は公爵家の屋敷内であるぞ、騎士だろうが将軍だろうが、我が家の治安を乱した者は我々の指示に従って貰う」

引率者の男性はナンノさんと言って、大隊長さんらしい。
なんか体格の良い人だとは思っていた。

「まだ子供ですし、良く言い聞かせますので、そこをなんとか」
「駄目です、ここで縛り上げないのが、せめてもの配慮と思って頂きたい」
「うー」

二人の緊縛姿も拝んでみたい気もするが、原因は俺なのでちょっと気が引ける。

「隊長さん、申し訳ない。その二人は俺の知り合いなんで何とか勘弁して下さい」
「カケル殿、襲われてたのはあなたでしたか。襲われた本人がそう言うのであればご隠居様にご相談して」
「ムラーノ、構わないわよ」

ファネルさんだ、いつの間にか野次馬に混じって見ていたらしい、目が笑っている、絶対に面白がっていたと思う。

「これはファネラ様、誠に申し訳ありません」

大隊長さんが米搗きバッタのようにファネルさんに謝っている。
アミとキャルも押さえ付けられて頭を下げているが、目はまだ俺を睨んでいる。

「今度のお人形さん達は元気が有って良いわね。新年らしく賑やかで良かったわ」
「はっ、誠に、誠に申し訳ありません」
「新しい騎士さん達の紹介にいらっしゃったんでしょ」
「はっ」
「それなら、応接室にお通ししましょ、ムラーノ、誰かに案内させて」
「はっ」

俺と同い年くらいの少年少女がぞろぞろと兵士の後を付いて行く。
アミとキャルの腕は、大隊長さんがしっかりと押さえている。
万事丸く収まったところで、俺はとっとと退場しよう。

「駄目よカケルちゃん、逃げちゃ。あなたも来るの!」

再び応接室に戻される、綾音は二十四時間の勤務明けとなるので帰りは夕方だ。
まだ時間は有るし、長引く様であれば露店で出来合いの物を買って帰ろう。

全員の紹介と挨拶が終わる、何故か俺はファネルさんの脇に座って一緒に挨拶を受けてる風になってしまった、絶対に可笑しいぞ。

「大隊長さん、私はもう議長を辞めてから長いんですから、挨拶に来なくても大丈夫ですよ」
「いえ、これは我が騎士団の長年の習慣でありますから、私で途絶えさせる訳には行きません」
「はー、仕方が無いわね」

ファネルさんがちらりとアミとキャルを見る。

「ねえ、其処のお二人、理由が有るんでしょ」

たぶんこれが聞きたかったんだと思う、うん、野次馬根性だ。
アミとキャルが突然ボロボロと涙を流し始めた、これには俺もびっくりだ。
延々と俺に対する恨みつらみを言い始めた。
都に着いてから俺の居場所を一生懸命探したらしい、そして住所をやっと探し当てて手紙を送ったら、何度送っても封も切らずに全て送り帰されて来たらしい。
うん、最初の何通かは誰かさんが送り返したのだろうし、後の何通かはそもそも俺も綾音も部屋に居なかった。
嫌われて冷たくされたと思ったらしく、それでおれの顔を見て逆上したらしい。

「それはカケルちゃんが悪いわよねー、気を持たせて突き放すなんて酷いわよねー」

うー、ぐさり、確かに俺は未練があった曖昧にしていた。

「でもねー、あなた達、カケルちゃんも忙しかったのよ。大隊長さん、東部下マナ原の蟻騒動は知ってるでしょ」
「はい、面目ありません」

これは噂話で聞いたのだが、蟻討伐が終わった後、クムの町に出向いていた国軍は、役立たずと相当批判を浴びたらしい。

「でも本当に良かったわよね、東部下マナ原が原野に還らなくて。うちの国の国力が半減してたわよ」
「仰るとおりです。我が軍がお役に立てなくて申し訳無く思っております」
「でも私達は、かえって冒険者ギルドに任せて良かったって思ってるのよ」
「それは何故ですか」

流石に大隊長もむっと来たらしい。

「あなた報告書は読んだでしょ」
「ええ、勿論です」
「あなたに住民の避難や町の維持や蟻の燻り出しなんて思い付けたの」
「いえ、しかし自分で無くとも軍に人材は豊富におります」
「じゃっ、誰が居たの」
「うっ、・・・・・・」

あれっ、この国の軍ってそんなに人材が薄いのか。

「そうでしょ、居ないでしょうね。きっと正面突破で玉砕だったでしょうね」
「いえ、我が軍の総力を持ってすればそんなことには」
「百四十八万匹よ、蟲直前の蟻が。女王蟻なんか完全に蟲だったのよ。それに死者がゼロなのよ、こんな数相手に」
「うっ、・・・・・」

「これは、私だけの意見じゃないのよねー、カケルちゃんはどう思う。

うわ、傍観してたらいきなり振られた。

「ファネル様、これは軍事機密に触れることがらです、一民間人に意見を求めるのは少々場違いかと」
「良いの、この子なら」
「えっ、何故です」
「だってこの子が張本人、指揮者だったのよ」
『えー!』

アミやキャルも含めてこの場の全員が驚いている、うん、蟻討伐の指揮者は有名人だ。
吟遊詩人達が蟻討伐の話を勝手に盛って広めている、その詩の中の指揮者様は俺と似ても似つかない人物だ。

如何どうなの、カケルちゃん」
「あれはたまたま本で読んだ知識が自分に有っただけです。知識さえ有れば誰にでも出来ます」
「そうなのよねー、その知識が大事なんだけど、軍人って皆勉強しないのよねー」
「それは、我々の本分が武である以上仕方ありません」
「その武だってあなたよりカケルちゃんの方が強いかも知れないわよ」
「これは、ファネル様でも少々お言葉が過ぎるかと」
「じゃ、立ち会って見る?」

こら、こら、こら、当事者をおいて、話が変な方に流れている。

「望むところです」

いや、俺は全然望んでないから。
でも結局、館の練武場で立ち会うことになってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

崖っぷち令嬢の生き残り術

甘寧
恋愛
「婚約破棄ですか…構いませんよ?子種だけ頂けたらね」 主人公であるリディアは両親亡き後、子爵家当主としてある日、いわく付きの土地を引き継いだ。 その土地に住まう精霊、レウルェに契約という名の呪いをかけられ、三年の内に子供を成さねばならなくなった。 ある満月の夜、契約印の力で発情状態のリディアの前に、不審な男が飛び込んできた。背に腹はかえられないと、リディアは目の前の男に縋りついた。 知らぬ男と一夜を共にしたが、反省はしても後悔はない。 清々しい気持ちで朝を迎えたリディアだったが……契約印が消えてない!? 困惑するリディア。更に困惑する事態が訪れて……

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...