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Ⅱ 王都にて
10 始動
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翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳
ミンク・・・冒険者ギルドの事務職員
ケーノス・・・ナラスの商人ギルドの長
ダン・・・ナラスの荷車組合の長
マッフル・・・王都ギルドの幹部
カエデ・・・荷車隊の護衛の一人、王都のEランク冒険者
ケスラ・・・彩音の治療魔法の師匠、王都で治療院を経営している
ケケロ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者
ミリ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者
ミラ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者、ミリの妹
ミユ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者
タト・・・白金貨の単位
チト・・・金貨の単位
ツト・・・大銀貨の単位
テト・・・小銀貨の単位
トト・・・銅貨の単位
1タト=10チト=100ツト=1000テト=10000トト
1トトは日本円で100円位
1日=24鐘=(24時間)
1鐘=60琴=(60分)
1琴=60鈴=(60秒)
一歩=百爪=(100センチ)
一街=千歩=(1Km)
一狼煙=十街=(10Km)
ナラス・・・翔達が滞在している王都の川向にある東部平原地帯の中心都市
クス・・・王都の川向にある東部平原地帯の河口にある港
ヘス・・・王都の川向にある東部平原地帯の港、ナラスとは少し離れている。
ーーーーー
(ミンク)
くそー、何か腹が立つ。
これじゃ私は道化だ。
あの若造は生意気だ、ルールの話であの性悪爺さん達の前で言い負かされてしまった。
王立学問院を卒業した二十二の歳からこの冒険者ギルドで働き始めて早十年、ルールの話でルール学科卒の私に敵う奴なんて居なかった。
なのに十五の餓鬼に言い負かされてしまった、物凄く悔しい。
「それじゃミンクさん、俺はここで少し情報収集するから、キャンセルした仕事の再手配お願いします」
この餓鬼、”私に指示するなんて百年早い”喉元までこの台詞が込み上げて来たが、飲み込んで頷くしかなかった。
てめーを指揮者にしてやったのは私だぞ、くそっ。
そりゃ頭の回転が少し早いのは認めるよ、でも良く考えりゃ十五でDランク冒険者って可笑しいだろ。
絶対に親の七光りだ、だからあんなに生意気なんだろう。
皮被りの餓鬼のくせに、くそー。
ギルドの階段が見えて来た、深呼吸、深呼吸。
さっ、気分を切り替えて仕事だ。
ーーーーー
(カケル)
商人ギルドの職員さん達に手伝って貰って、この町の維持に必要な荷車数を計算した。
在庫量の下限を設定して幅を計算しても意外に苦しい。
この町自体が河の増水の影響をもろに受けている。
まず、河の渡し場の負担をこの町が背負い込んでしまっている。
河の方角に向かう荷車量が予想以上に多いのだ、しかも帰りは空荷なので効率が悪い。
クスの港町も全く同様で、単に町を維持するだけの荷が多い。
これでは渡し場とクスの港が借金を抱えて疲弊するのが目に見えている。
一月半後にはそれぞれの町は破綻し、それまで収めた荷の対価は貸倒れる。
それはこの町の経済全体の負荷となり、王都からの借入金の利息の上昇として顕在化する。
これは俺の机上の空論では無く、過去のデータがはっきりと示していた。
この町は王都からの借金に苦しみ続けている、それが内状を知る二人の長の態度に現れていた様だ。
そこで俺はケーノスさんに数字を示してある提案をした。
渡し場とクスの港町の人々をこの町に数か月引き取って養うのだ。
何かが好転する話じゃない、ただ単に傷口が浅くなるだけの話だ。
それでも、王都への高い利息を払うぐらいなら、同じ費用でそれぞれの町を疲弊させない方が得策との俺の提案に納得してくれた。
俺としては、二つの町の維持に必要な護衛を討伐隊に割り振れるので、物凄くメリットが大きい。
荷車のスケジュールを整理して、効率的に荷車を運用すると、荷車量を二割減らせた。
これはダンさん達荷車組合にとってデメリットであったが、経費の浮いた分を商人ギルドから支払うことで納得してもらった。
これは勿論、平時であれば冒険者ギルドにとってもデメリットだ。
戦時には、拠点の維持が戦闘自体より重要になる、これは読んだ小説の受け売りだ。
一日二日で終決する戦闘ならこの心配は不要だが、二月もの長丁場になれば必須になる。
次に会議テーブルにこの地方の地図を広げて貰って、蟻と野犬の目撃情報を整理した。
商人ギルドの職員と荷車組合の御者を集めて、最もらしいしたり顔で始めたが、これも読んだ小説の真似だ。
小説では森の動物の動きから敵軍の位置を探り出す筋書だった。
地図を見下ろす、左側にストロノス大河、上方にミリアノス山脈、下方にグルアノス海、そして右側にはダッタノス砂漠が広がりダッタの遊牧民の世界になる、そしてミリアノス山脈の裾野にはリアノスの大森林が広がっている。
これがこの地方の概略だった。
蟻の目撃情報は散発的であまり参考にならなかったが、荷車組合の野犬の目撃記録は、記録としての質が高く、群れ単位で整理されており、物凄い事実を地図の上に描き出してくれた。
この一年の群れの動きを地図の上に落していくと、ある地域を中心に、そこから逃げる様に広がっているのだ。
その情報の上に蟻の目撃情報、荷の不達情報、村の壊滅情報を時系列的に落とし込んで行くと、個々の情報が線となり、やがて面となって繋がった。
この作業を荷車組合のベテラン御者や商人ギルドの職員が息を呑んで見詰めていた。
自分達が漠然と感じていた不安が形になって表れて来るのだ。
蟻の跋扈している生息圏が明らかになり、巣が在るであろう場所がうっすらと見えて来る。
最初に、直ぐにでも蟻の生息圏に飲み込まれるであろう村への避難誘導指示に十八隊を送り出した。
次に蟻の生息圏を通過する街道の閉鎖、迂回指示に二十二隊を送り出した。
呼び出しに最初怪訝な表情で現れた隊長、副長達は、皆この地図を見て顔色を変えた。
そして蟻用の神経毒、グロッサ草の採取に五隊を送り出した。
町の維持には最低でも荷車の護衛に五十隊は必要、予め荷の流通整理をしておいて正解だった。
冒険者ギルド全体が大きく動き始めた。
時間の余裕は無さそうだ、これは非常に厳しい。
はっきりした動きが出始めたのは二年以上も前だった。
ミリアノス山脈の裾野をテリトリーとしていた山犬の群れがリアノスの大森林に降り始めたのだ、荷車組合の日誌には天候不順による餌の不足とのメモが書いてあった。
その群れは徐々に森の外部へと移動を重ね、二月前に森を追い出され、今は森からだいぶ離れた場所を移動している。
この動きはこの群れのみの行動ではなく、他の群れも全く同じように、最初山犬達が行動を開始した裾野を中心に放射線状に移動していた。
そして全ての群れが森を出て森から離れた場所に移動している。
リアノスの大森林は完全に蟻の生息圏になっている。
そして蟻は大森林の外に生息圏を急速に拡大している。
俺達が蟻に襲われた場所も、リアノスの大森林の脇に広がる荒野だった。
だから俺は、リアノスの大森林周辺の村に避難誘導指示部隊を派遣し、森の中を通る街道は勿論のこと、森の周囲を横切る街道の閉鎖を指示したのだ。
俺は、この地方の半分、直径三百キロを超えるミリアノス山脈の裾野を中心とした半円状の広大な蟻の生息域を示した地図を腕組みして見下ろした。
動ける残りの部隊は六隊、この少数部隊で巣の正確な位置と規模を急いで特定しなければならない。
ーーーーー
(アヤ)
お兄ちゃんから隼便で手紙が送られてきた。
手紙を受け取りに屋根裏の鳥小屋へ行くと、隼さんが不思議そうに私の顔を覗き込んで首を傾げていた。
鳥匠のおじさんが餌をあげている、返信の手紙は直ぐにでも送れると言っていた。
隼さんなら二十分くらいでお兄ちゃんのいる場所に飛んで帰れるそうなのだ。
私も連れて行って欲しい。
手紙には二月間は帰れないと書いてあった、うん、泣きそうになった。
蟻退治の指揮をするそうで、家の害虫駆除の方法を先生に聞いて欲しいと書いてある。
大きな御屋敷の白蟻駆除でも頼まれたのだろうか。
ーーーーー
(ミンク)
商人ギルドから変更依頼が出されて来た、ほとんどが今回の蟻騒動と関係が無い渡し場やクスの港への荷の護衛だ。
これはきっと、商人ギルドの嫌がらせに違いない。
手続きを終えて事務室を出たらギルド内が何やら騒がしい、隊長達の怒号が飛んで冒険者達が右往左往している。
そして耳に入るフレーズに、”カケル指揮官の指示”とか”カケル指揮官の説明”が多い。
私はまだ皆にカケルの指揮者就任は伝えていない。
きっとあいつが吹聴しているに違いない、さあ、とっちめてやるぞ。
まだ戻って来ないところを見ると、商人ギルドで油を売っているに違いない。
あの怠け者め。
勇んで商人ギルドの会議室の扉を開けたのだが、私はその場を支配している緊張感に固まってしまった。
会議テーブルを囲んで十二人が座っており、それぞれの席の前へ籠に入れた梟が六匹並べてある。
「三鐘に一回、用事が無くても必ず梟を飛ばせ、これが互いの無事をしらせる信号になる。絶対無理はするなよ」
『はい、指揮官』
「良し、じゃ調査終了後、ここで互いに元気な顔を合わせよう。解散」
集まっていたのはベテランの冒険者、今回集めた中でも実力が上位の連中だ。
そんな連中がこんな若造の指示で、緊張して部屋を出て行くなんて何か変だ。
それにこの梟、もしかすると商人ギルドが存在を秘匿している携帯梟なのでは。
「ミンクさん、ちょうど良かったです。今呼びに行かせようと思ってたところです」
くそっ、何を偉そうに、あれっ、カエデが私を憐れむような目でみている。
カエデは歳が近くて気が合うので、王都の情報を聞きながら、この町に寄った時には一緒に酒を飲んでいる。
「本部としてこの会議室をお借りしました。これからはすべての情報をこの会議室に集約します。ミンクさんには連絡係を担当して頂きます。これから俺の説明する連絡方法をしっかり覚えて下さい」
何をこの野郎、私に指図する積りなのか?おー上等だ、さっさと指図して見せろ。
変な指示だったら怒鳴りつけてやる。
彩音・・主人公の妹、中1十三歳
ミンク・・・冒険者ギルドの事務職員
ケーノス・・・ナラスの商人ギルドの長
ダン・・・ナラスの荷車組合の長
マッフル・・・王都ギルドの幹部
カエデ・・・荷車隊の護衛の一人、王都のEランク冒険者
ケスラ・・・彩音の治療魔法の師匠、王都で治療院を経営している
ケケロ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者
ミリ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者
ミラ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者、ミリの妹
ミユ・・・翔と同行してる荷車隊の護衛、Gランクの冒険者
タト・・・白金貨の単位
チト・・・金貨の単位
ツト・・・大銀貨の単位
テト・・・小銀貨の単位
トト・・・銅貨の単位
1タト=10チト=100ツト=1000テト=10000トト
1トトは日本円で100円位
1日=24鐘=(24時間)
1鐘=60琴=(60分)
1琴=60鈴=(60秒)
一歩=百爪=(100センチ)
一街=千歩=(1Km)
一狼煙=十街=(10Km)
ナラス・・・翔達が滞在している王都の川向にある東部平原地帯の中心都市
クス・・・王都の川向にある東部平原地帯の河口にある港
ヘス・・・王都の川向にある東部平原地帯の港、ナラスとは少し離れている。
ーーーーー
(ミンク)
くそー、何か腹が立つ。
これじゃ私は道化だ。
あの若造は生意気だ、ルールの話であの性悪爺さん達の前で言い負かされてしまった。
王立学問院を卒業した二十二の歳からこの冒険者ギルドで働き始めて早十年、ルールの話でルール学科卒の私に敵う奴なんて居なかった。
なのに十五の餓鬼に言い負かされてしまった、物凄く悔しい。
「それじゃミンクさん、俺はここで少し情報収集するから、キャンセルした仕事の再手配お願いします」
この餓鬼、”私に指示するなんて百年早い”喉元までこの台詞が込み上げて来たが、飲み込んで頷くしかなかった。
てめーを指揮者にしてやったのは私だぞ、くそっ。
そりゃ頭の回転が少し早いのは認めるよ、でも良く考えりゃ十五でDランク冒険者って可笑しいだろ。
絶対に親の七光りだ、だからあんなに生意気なんだろう。
皮被りの餓鬼のくせに、くそー。
ギルドの階段が見えて来た、深呼吸、深呼吸。
さっ、気分を切り替えて仕事だ。
ーーーーー
(カケル)
商人ギルドの職員さん達に手伝って貰って、この町の維持に必要な荷車数を計算した。
在庫量の下限を設定して幅を計算しても意外に苦しい。
この町自体が河の増水の影響をもろに受けている。
まず、河の渡し場の負担をこの町が背負い込んでしまっている。
河の方角に向かう荷車量が予想以上に多いのだ、しかも帰りは空荷なので効率が悪い。
クスの港町も全く同様で、単に町を維持するだけの荷が多い。
これでは渡し場とクスの港が借金を抱えて疲弊するのが目に見えている。
一月半後にはそれぞれの町は破綻し、それまで収めた荷の対価は貸倒れる。
それはこの町の経済全体の負荷となり、王都からの借入金の利息の上昇として顕在化する。
これは俺の机上の空論では無く、過去のデータがはっきりと示していた。
この町は王都からの借金に苦しみ続けている、それが内状を知る二人の長の態度に現れていた様だ。
そこで俺はケーノスさんに数字を示してある提案をした。
渡し場とクスの港町の人々をこの町に数か月引き取って養うのだ。
何かが好転する話じゃない、ただ単に傷口が浅くなるだけの話だ。
それでも、王都への高い利息を払うぐらいなら、同じ費用でそれぞれの町を疲弊させない方が得策との俺の提案に納得してくれた。
俺としては、二つの町の維持に必要な護衛を討伐隊に割り振れるので、物凄くメリットが大きい。
荷車のスケジュールを整理して、効率的に荷車を運用すると、荷車量を二割減らせた。
これはダンさん達荷車組合にとってデメリットであったが、経費の浮いた分を商人ギルドから支払うことで納得してもらった。
これは勿論、平時であれば冒険者ギルドにとってもデメリットだ。
戦時には、拠点の維持が戦闘自体より重要になる、これは読んだ小説の受け売りだ。
一日二日で終決する戦闘ならこの心配は不要だが、二月もの長丁場になれば必須になる。
次に会議テーブルにこの地方の地図を広げて貰って、蟻と野犬の目撃情報を整理した。
商人ギルドの職員と荷車組合の御者を集めて、最もらしいしたり顔で始めたが、これも読んだ小説の真似だ。
小説では森の動物の動きから敵軍の位置を探り出す筋書だった。
地図を見下ろす、左側にストロノス大河、上方にミリアノス山脈、下方にグルアノス海、そして右側にはダッタノス砂漠が広がりダッタの遊牧民の世界になる、そしてミリアノス山脈の裾野にはリアノスの大森林が広がっている。
これがこの地方の概略だった。
蟻の目撃情報は散発的であまり参考にならなかったが、荷車組合の野犬の目撃記録は、記録としての質が高く、群れ単位で整理されており、物凄い事実を地図の上に描き出してくれた。
この一年の群れの動きを地図の上に落していくと、ある地域を中心に、そこから逃げる様に広がっているのだ。
その情報の上に蟻の目撃情報、荷の不達情報、村の壊滅情報を時系列的に落とし込んで行くと、個々の情報が線となり、やがて面となって繋がった。
この作業を荷車組合のベテラン御者や商人ギルドの職員が息を呑んで見詰めていた。
自分達が漠然と感じていた不安が形になって表れて来るのだ。
蟻の跋扈している生息圏が明らかになり、巣が在るであろう場所がうっすらと見えて来る。
最初に、直ぐにでも蟻の生息圏に飲み込まれるであろう村への避難誘導指示に十八隊を送り出した。
次に蟻の生息圏を通過する街道の閉鎖、迂回指示に二十二隊を送り出した。
呼び出しに最初怪訝な表情で現れた隊長、副長達は、皆この地図を見て顔色を変えた。
そして蟻用の神経毒、グロッサ草の採取に五隊を送り出した。
町の維持には最低でも荷車の護衛に五十隊は必要、予め荷の流通整理をしておいて正解だった。
冒険者ギルド全体が大きく動き始めた。
時間の余裕は無さそうだ、これは非常に厳しい。
はっきりした動きが出始めたのは二年以上も前だった。
ミリアノス山脈の裾野をテリトリーとしていた山犬の群れがリアノスの大森林に降り始めたのだ、荷車組合の日誌には天候不順による餌の不足とのメモが書いてあった。
その群れは徐々に森の外部へと移動を重ね、二月前に森を追い出され、今は森からだいぶ離れた場所を移動している。
この動きはこの群れのみの行動ではなく、他の群れも全く同じように、最初山犬達が行動を開始した裾野を中心に放射線状に移動していた。
そして全ての群れが森を出て森から離れた場所に移動している。
リアノスの大森林は完全に蟻の生息圏になっている。
そして蟻は大森林の外に生息圏を急速に拡大している。
俺達が蟻に襲われた場所も、リアノスの大森林の脇に広がる荒野だった。
だから俺は、リアノスの大森林周辺の村に避難誘導指示部隊を派遣し、森の中を通る街道は勿論のこと、森の周囲を横切る街道の閉鎖を指示したのだ。
俺は、この地方の半分、直径三百キロを超えるミリアノス山脈の裾野を中心とした半円状の広大な蟻の生息域を示した地図を腕組みして見下ろした。
動ける残りの部隊は六隊、この少数部隊で巣の正確な位置と規模を急いで特定しなければならない。
ーーーーー
(アヤ)
お兄ちゃんから隼便で手紙が送られてきた。
手紙を受け取りに屋根裏の鳥小屋へ行くと、隼さんが不思議そうに私の顔を覗き込んで首を傾げていた。
鳥匠のおじさんが餌をあげている、返信の手紙は直ぐにでも送れると言っていた。
隼さんなら二十分くらいでお兄ちゃんのいる場所に飛んで帰れるそうなのだ。
私も連れて行って欲しい。
手紙には二月間は帰れないと書いてあった、うん、泣きそうになった。
蟻退治の指揮をするそうで、家の害虫駆除の方法を先生に聞いて欲しいと書いてある。
大きな御屋敷の白蟻駆除でも頼まれたのだろうか。
ーーーーー
(ミンク)
商人ギルドから変更依頼が出されて来た、ほとんどが今回の蟻騒動と関係が無い渡し場やクスの港への荷の護衛だ。
これはきっと、商人ギルドの嫌がらせに違いない。
手続きを終えて事務室を出たらギルド内が何やら騒がしい、隊長達の怒号が飛んで冒険者達が右往左往している。
そして耳に入るフレーズに、”カケル指揮官の指示”とか”カケル指揮官の説明”が多い。
私はまだ皆にカケルの指揮者就任は伝えていない。
きっとあいつが吹聴しているに違いない、さあ、とっちめてやるぞ。
まだ戻って来ないところを見ると、商人ギルドで油を売っているに違いない。
あの怠け者め。
勇んで商人ギルドの会議室の扉を開けたのだが、私はその場を支配している緊張感に固まってしまった。
会議テーブルを囲んで十二人が座っており、それぞれの席の前へ籠に入れた梟が六匹並べてある。
「三鐘に一回、用事が無くても必ず梟を飛ばせ、これが互いの無事をしらせる信号になる。絶対無理はするなよ」
『はい、指揮官』
「良し、じゃ調査終了後、ここで互いに元気な顔を合わせよう。解散」
集まっていたのはベテランの冒険者、今回集めた中でも実力が上位の連中だ。
そんな連中がこんな若造の指示で、緊張して部屋を出て行くなんて何か変だ。
それにこの梟、もしかすると商人ギルドが存在を秘匿している携帯梟なのでは。
「ミンクさん、ちょうど良かったです。今呼びに行かせようと思ってたところです」
くそっ、何を偉そうに、あれっ、カエデが私を憐れむような目でみている。
カエデは歳が近くて気が合うので、王都の情報を聞きながら、この町に寄った時には一緒に酒を飲んでいる。
「本部としてこの会議室をお借りしました。これからはすべての情報をこの会議室に集約します。ミンクさんには連絡係を担当して頂きます。これから俺の説明する連絡方法をしっかり覚えて下さい」
何をこの野郎、私に指図する積りなのか?おー上等だ、さっさと指図して見せろ。
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だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
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