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Ⅰ 王都へ

8 同衾

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翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳
ニケノス・・・カルナの荷車の御者
メル(メルトス)・・・翔達の荷車の同乗者、小学生に見える少年。
ファラ(ファラデーナ)・・・メルの連れ合い、こちらも小学生に見える少女
カルメナ・・・翔達の荷車の同乗者、一番大人びた少女。
ユーナ・・・翔達の荷車の同乗者、カルメラと同郷の少女
カーナ・・・翔達の荷車の同乗者、カルメラと同郷の少女

カルナ・・・王命による地方から送られる少年少女の半強制移住者の呼び名、疫病の影響で減ってしまった都市部の少年少女を補充し、文化や技術を継承することを目的にしている。
ユニコ・・・眉間に輝く角を持つポニーくらいの馬。

タト・・・白金貨の単位
チト・・・金貨の単位
ツト・・・大銀貨の単位
テト・・・小銀貨の単位
トト・・・銅貨の単位

1タト=10チト=100ツト=1000テト=10000トト
1トトは日本円で100円位

ーーーーーーーーーー

宿に戻ってから四人で夕食を食べた。
ここの名物料理は蜥蜴の肉と卵料理、さっぱりした肉とこってりした卵料理の組み合わせが絶妙だった。
卵は沼の中の蜥蜴の巣から奪って来るので、命懸けの高級食材であると給仕の女性が解説してくれた。
翔は、蜥蜴が人を襲う理由を何となく納得した。

部屋に戻る、気にはなったが窓の外は極力見ないようにした。
柵を引っ掻く音が聞こえる様な気がする。

寝る段になって、翔はベットの前で腕を組んで考え込む。
ベットの上に枕が二つちょこんと並んでいる。
毎日寄り添って寝ていたのに、改めて二人で一つのベットに入ること意識すると股間が膨らんでしまう。

「俺、床で寝ようか」
「何、お兄ちゃん、変だよ。毎日一緒に寝てるじゃない」
「そーだよな、何時もと一緒だよな。はははは」
「ふーん、若しかするとお兄ちゃんエッチなこと考えたの」
「妹相手にそんなこと考える筈ないだろ」
「ふーん、お兄ちゃんエッチだからなー。じゃ、部屋から追い出そうかな」
「おい、彩」
「嘘だぴょん。じゃっ、一緒に寝ようか」

翔は気持ちと股間を落ち着けてからベットに潜り込む。
部屋の蝋燭を吹き消した、月明かりが窓から優しく部屋を照らす。
衣擦れの音がして、彩音が布団の中に滑り込んで来た。
翔は緊張に身体を強張らせる。

”彩音は子供だ、それに妹だ。護らなきゃいけない俺が変な事考えてどうする”

翔は自分に言い聞かせた。

「お兄ちゃん、二人で一緒のベットに寝るのって、二年振りくらいかな」
「ああ、昔はお化けが怖いって言って俺の布団に良く潜り込んで来たからな」
「何で一緒に寝なくなっちゃったのかな」
「俺が母さんに怒られたんだよ、風呂も一緒に入ってただろ。だから駄目だって」
「ふーん、お母さんも考え過ぎだよね」

翔は彩香に背を向けて寝ている。
彩音が翔の背中を指で突きながら囁く。
彩音にとって自分は優しい兄なのだ、翔は自重して良かったと思った。

「メルとファナはエッチなことしてるかな」
「まさか、メルは助平だけどまだ子供だからな」
「お兄ちゃん、知らなかったの。メルとファナってお兄ちゃんと同い年だよ」
「えー!」

翔が振り向く。
彩音の顔が目前に有り、目が闇の中に光っている。
翔は慌てて顔を離す。

「メンフェス族だから二人は見た目子供に見えるだけなんだって。二人の町は銀鉱山と金物細工が有名で、メルとファナは幼馴染みで一ぱしの金物職人らしいよ。メルは金物業界では有名人だってファナが言ってた」

翔は何故かメルと気が合っていた。
言われてみれば、メルの助平さには年期が入っていた様な気がしていた。

「町でも十分に暮らして行けたけど、メルが王都で修行したいって言いだしたんでファナも付いて来たらしいよ。二人は王都に着いたら正式に結婚するんだって、素敵だよね」

翔はメルがまだ未練ダダ漏れのような気がした。

「だから二人でこのカルナに参加したんだって」
「彩、そのカルナって、何なんだ」
「えー!お兄ちゃん知らなかったの。カルナって国の求めに応じて地方から王都へ移住する人達や、その人達を運ぶ荷車隊のことなんだよ。だから食費だけで運賃が無かったでしょ」
「そーか、それで安かったのか。でも彩は凄いな、もう何でも知ってるんだな」
「当たり前でしょ、お兄ちゃんこそしっかりしてよ。私達の将来が掛かってるのよ」
「すまん」
「悪かったと思うんなら、お詫びにお休みのキスして頂戴」
「ああ」
「それにねお兄ちゃん」
「なんだ」
「昔一緒に寝てた時、私が寝てると思ってお兄ちゃんエッチなことしてたでしょ。知ってるんだからね」

彩香が突然翔の頭を掴んだ。
そして唇を重ねると暫くその手を離さなかった。
そして翔の胸に頭を埋めると静かな寝息を立て始めた。

”え!彩はOKなのか?”

彩音の言葉の意図を計り兼ねて、翔の右手が暫く空中を彷徨っていたが、力無く彩音の背に落ちて、二人の寝息が月明かりの部屋に満ちて行った。
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