上 下
7 / 89
Ⅰ 王都へ

6 沼の町

しおりを挟む
翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳
ニケノス・・・カルナの荷車の御者
メル(メルトス)・・・翔達の荷車の同乗者、小学生に見える少年。
ファラ(ファラデーナ)・・・メルの連れ合い、こちらも小学生に見える少女
カルメナ・・・翔達の荷車の同乗者、一番大人びた少女。

カルナ・・・王命による地方から送られる少年少女の半強制移住者の呼び名、疫病の影響で減ってしまった都市部の少年少女を補充し、文化や技術を継承することを目的にしている。
ユニコ・・・眉間に輝く角を持つポニーくらいの馬。

タト・・・白金貨の単位
チト・・・金貨の単位
ツト・・・大銀貨の単位
テト・・・小銀貨の単位
トト・・・銅貨の単位

1タト=10チト=100ツト=1000テト=10000トト
1トトは日本円で100円位

ーーーーーーーーーー

途中で一緒になった荷車とはここで別れる、次の町に手を振りながら向かって行った。
俺達はここで一泊する。

「荷車を離れて大丈夫なのか」
「うん、ニケノスさんに断っておけば大丈夫なんだって。メルとファラも宿に泊まるし、宿の場所も聞いてあるよ。それとこの町に無料の温泉があるんだって、カルメナ達も行くって言ってたよ。だから早く行こう」

ニケノスは御者の名前、カルメナは荷車に同乗する少女の一人だ。
背が高く、同乗する少女達の中では一番大人っぽい。
彩音に手を曳かれて荷車に急ぐ、荷車は広場脇の屋根付きの厩の中に停めてあった。
久々に絨毯を畳んで背負子に乗せる。
厩脇の詰所でお茶を飲んでいたニケノスさんに彩音が説明し、町の中へと飛び出した。

「ノイサ高原からの荷車が遅れてるから明日は昼過ぎの出発だって。明日の朝はゆっくりできるよ」

まず最初に二人は冒険者ギルドに向かった。
町並みは干し煉瓦に紫色の木の皮を拭いた平屋。
荷車の行き交う通りは広く清潔だった。

「彩、ここのポニーって、うんこしないのかな」
「ユニコって名前なんだって。お利口さんだからトイレ以外でうんちもおしっこもしないだけだよ。一月くらい我慢ができるらしいよ」

俺はユニコに転生しなくて良かったと思った。
彩音が四連の白い漆喰が塗られた建物の前で立ち止まって、左右を見渡している。

「お兄ちゃん、何か冒険者ギルドらしくないよ。人相の悪い人がたむろってないし、酒場の印も無いし」

恐々と中を覗くと、紙を貼った大きな板が一杯並んでおり、大勢の人がその紙を見て回っていた。
その奥の部屋には机が窓際に一杯並んでおり、その机の前に行列ができている。
一先ず机の部屋に入ってみる。

「お兄ちゃん、一番奥に換金窓口って書いてあるよ」

幸い並んでいる人は居なかった。
机の反対側に座っている女性職員に彩音が書付けを渡す。

「○×△□、○○△■」
「●■×○▽▲□×○、#×=$▲%、△▲□○。○○□×$%*?」
「お兄ちゃん、冒険者ギルドに登録すれば、今回の報酬も獲得点数に加算してくれるんだって。ペア登録すれば私も点数貰えるらしいよ。登録料は一人一テトで全国共通なんだって」
「それじゃ登録しとくか、どうせ向うのギルドで仕事探さなきゃならないからな。ペアで良いぞ」
「うん、じゃ、登録して置くね」
「●■△×%$、○○△■」
「○□×%%、=△■×○」

職員が机の下から紙とペンとインクを取り出し、その紙に彩音がペンを走らせる。
一カ所だけ、何故か暫く考え込んでから、頬を赤らめて書き込んでいた。
その紙を職員に渡すと、職員はその紙を持って奥の部屋へと消えて行った。
暫く待たされ、職員は革紐が通された銅の札と小さな袋を持って戻って来た。

「□△○×□」
「○△□○○」

袋と札を受け取って俺達は立ち上がった。

「○○□△○」
「○△□×□」

彩音が女子職員に手を振っている。彩音が凄く嬉しそうにしている。

「彩、何て言われたんだ」
「うーん、頑張って下さいかな」

彩音にせがまれて二人で掲示板を覘いて行くことになった。
俺は見ても全然解らない。

「お兄ちゃん、薬草採取の依頼があるよ。でも籠一杯で二テトだからやっぱり安いね」
「あっ、荷車の護衛の依頼があるよ。三日で五ツト、食事付きだって。護衛の依頼って結構儲かるんだね。でもお兄ちゃんが家に居ないと寂しいな」
「あっ、魔獣討伐があるよお兄ちゃん。報酬が二タト十五チトだって、凄いね。でもゴールドランク以上限定だね」

タトは白銀貨の単位、金貨十枚が白銀貨一枚と交換される。

「わー、遺跡探検のメンバー募集も有るよ。剣士と治療師が欲しいらしいよ。でもこれもゴールドランクだね」

彩音が俺の腕にしがみ付いて燥いでいる。
俺は読めない字の前に立っているだけで気が滅入って来る。

「彩、宿の申し込みに行かなくても大丈夫なのか」
「あっ、忘れてた。急いで行かなくちゃ」

宿へ向かう途中、彩音は俺の腕をしっかり握って離さなかった。

着いた宿は、沼の見晴が良い斜面に作られた赤い屋根の壁が白く塗られた明るい宿だった。
フロントで彩音が交渉している。

「△△×□×○◇」
「○△□#*×□△」
「お兄ちゃん、部屋取れたよ。最後の一部屋なんだって、良かったね」
「ああ、ぎりぎりセーフか、危なかったな」

指定された部屋へ向かう、一番奥の沼の眺めの良い角部屋だった。
沼に向かってなだらかに下る草原に花が美しく咲き乱れていた。

「眺めの良い部屋だな」
「うん、でもこの部屋って人気が無いから空いていたんだって」
「何でだ」
「この部屋のすぐ下に町を囲んでる塀が有るの」
「ああ、あれか」
「夜中になるとその塀際まで、蜥蜴が一杯登って来るんだって」

俺はこの町を囲む中途半端な高さの塀の目的と、頑強な門である理由を納得した。

「そこのベランダから蜥蜴釣りも楽しめるってフロントで言われたけど、お兄ちゃんやりたい」
「いや、遠慮しとく」

取敢えず、メルとファラを誘って温泉へ行ってみることにした。
部屋の番号は彩音がフロントで聞いてある。
彩音がドアを叩く。

「ファラ、○△×$□」
「アヤ、□△#%×」

中で二人が走り回っている足音が聞こえる。
暫く待たされ、ドアを開けたファラの髪は少し乱れていた。
その後ろから出迎えたメルの服は裏返しだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

シスターハザード ~噛まれれば強制TSする世界で美少女たちと秘密基地で生き延びる!~

乃神レンガ
恋愛
ある日、世界中に謎の少女たちが突如として現れ、人々を襲い始めた。 更に少女たちに噛まれてしまうと、その者たちも少女になってしまう。 まるでゾンビ映画のような光景、シスターハザードが発生した。 主人公氷崎凛也はこの世界で生き残るために、仲間と共に避難を開始する。 自分のストーカーで一応友人の喪不野鬱実。 後輩で料理部の岸辺夢香。その妹である岸辺瑠璃香。 奇しくも周囲は少女ばかりになってしまった。 そんな最中に襲ってくるのは、少女たち、シスターモンスター。 妹モンスターとお姉ちゃんモンスターが、凛也たちに迫る。 凛也たちは苦難の末にそれを退けながら、この狂った世界で生き抜いて行く。 ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

魔法使いの写真屋さん

旅里 茂
ファンタジー
異世界にある、小さな村の一角に、魔法使いの写真屋さんがある。経営しているのは、12歳のユイリィという女の子。ある日、ゴブリンが訪ねてきて、一枚の写真を見せたのだが…。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!

ぽんぽこ@書籍発売中!!
ファンタジー
「助けて、このままじゃヒロインに殺される……!!」 気が付いたら俺はエロゲーム世界のモブキャラになっていた。 しかしこのエロゲー、ただヒロインを攻略してエッチなことを楽しむヌルいゲームではない。 主人公の死=世界の崩壊を迎える『ハイスクール・クライシス』というクソゲーだったのだ。 ついでに俺がなっちまったのは、どのルートを選んでも暗殺者であるヒロインたちに殺されるモブキャラクター。このままではゲームオーバーを迎えるのは確定事項。 「俺は諦めねぇぞ……トワりんとのハッピーエンドを見付けるまでは……!!」 モブヒロインの家庭科教師に恋した俺は、彼女との幸せな結末を迎えるルートを探すため、エロゲー特有のアイテムを片手に理不尽な『ハイクラ』世界の攻略をすることにした。 だが、最初のイベントで本来のエロゲー主人公がとんでもないことに……!? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...