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Ⅱ ネルトネッテ伯爵領
4 ケンノケロ4
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マリアは順調にスキルアップして行き、一度に治療できる患者数を増やして行った。
次第に町の病人の数も減って、マリアが休日を取るような時間的な余裕も生じて来た。
なのでマリアが休みの日は俺もトイレ掃除を休める、涙が出る程嬉しかった。
トイレの数が千基を越えて居るのだ。
治療所は増築を重ね、七割はトイレで占められているという変な状況になっている。
俺に磨術という訳の解らない魔術が生えて来なかったら、朝から夜半までトイレ掃除で過ごす日々を過ごさなければならなかったところだ。
でもおかげで俺は筋肉が付いてマッチョになった。
なんだか勇者らしい体格になったのだが、バケツとブラシを持った作業着姿がすっかり馴染み、近所のおばちゃん達にはお掃除のお兄さんと呼ばれて気軽に話掛けてくれる。
近所の人達と一緒に合同で行うドブの浚いの時は、旦那さん達にも作業が捗るので物凄く喜ばれている。
勿論マリアは有名人になった、元々最初から聖女なのだが、聖女様のようだと拝まれている。
コロコロと楽しそうに笑うようになり、呼び止められれば気軽に町の人達とも話している。
マリアは、一度に五十人、一日三千人の患者の治療を行っている筈なのに、一人一人の症状を覚えているらしい。
それぞれの体調変化を聞いて、相手に感激されている。
町へ買物に出掛ける時は、ワンコ達もぞろぞろ付いて来る。
石の人形が歩いているのだが、町の人達は彫像の様な種類の犬と認識しているようで、全然驚いていない。
食い物屋の外で待たせている時には、近くの子供達が餌をくれるので美味しそうに食っているようだ。
此奴等の餌は、基本的に魔石なのだが、雑食性で食わせれば何でも食う。
肉であろうが、野菜であろうが、皿であろうが食う。
休日には、二人でこのワンコ達を連れて岩山へ出かける。
当初、俺達の龍退治の訓練の筈だったのだが、マリアはすっかりワンコ達と一緒に魔獣を追掛け回す方へ夢中になっている。
”ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる”
岩山に到着すると、ワンコ達が一斉に濡れた身体から水を払う様に身体を震わせ始める。
するとワンコ達の背中に大きい陶器のような白い翼が生えてくる。
「出発!」
マリアの号令一下、ワンコ達が一斉にその翼をはためかせて、空へ飛び立ち、魔獣を捜しに散って行く。
「ホーリーフライ!」
光輪を背負ってマリアの身体が白く輝き、背中に大きな白い翼が現れる。
その翼をはためかせてマリアも空に飛び上がった。
マリアは、癒術だけじゃなくて聖術も経験を重ねて伸ばしている。
”キュア”や”ヒール”に”ホーリー”を纏わせると浸透力が増すので重ね掛けして使う様にしていたらしいのだ。
聖術がぐんぐんレベルアップし、レベルが10に上ったところでこの飛翔術が現れたらしいのだ。
ワンコ達とマリアは感覚が繋がっている。
魔獣を発見したワンコがいたらしく、マリアはその方向に向かって物凄い勢いで急降下して行く。
俺も追掛ける、背中に氷でジェット機の様な翼を作り、その両端に氷の筒を作り、熱術で作った爆発力により推進する。
本当は、氷の翼を作って優雅に飛びたいのだが、まだ技量が全然足りてない。
マリア達に追い付いた時には、魔獣はワンコ達に倒されており、マリアが空でワンコ達とじゃれあっていた。
武骨な俺の翼と違い、自在に空を飛び回っているマリアが羨ましい。
解体してマジックボックスの収納する回収係が俺の役目だ。
旅をしながら移動するプランの筈だったが、すっかり町に居付いてしまった。
今マリアが町から出て行くと宣言したら、たぶん暴動が起こりかねない。
長居をすれば追手に通報される心配が有ったので、俺達の手配状況は勿論真っ先に調べた。
確かに冒険者ギルドに似顔絵付きの手配書が貼られていた。
だが、画家の技量が高過ぎたのか、物凄くそっくりに描かれているにもかかわらず、物凄く凶悪な顔に描かれているので誰にも気付かれない。
絵なのに、目を見たら因縁を吹っかけられそうなくらい怖い顔に描かれていた。
手配書の前に俺達が立っていても誰も気が付かないのだ。
「ねえ、お兄ちゃんしようよ」
マリアが服を脱ぎ始めた。
最近のマリアのお気に入りだ。
裸になって抱き合いながら上昇し、上空から螺旋状に降下しながらエッチをするのだ。
俺が熱術で身体を保温膜で覆うので寒くは無い。
重さが消える分、互いの肌の感触に集中できるのだ。
耳元を流れる風切音に混じって、マリアの絶頂に達した歓喜の叫び声が聞こえて来る。
ワンコ達も一緒に回りを飛び交っており、マリアと感覚が繋がっているので一緒に叫び声を上げる。
マリアが直ぐに治してくれるから良いのだが、何匹か、達した途端”ガブリ”と噛付く奴がいる。
別の方向に目覚めそうなので、勘弁して欲しい。
そんな日々を過ごしている時だった、町長経由で伯爵から指令書が届けられた。
”北方より龍飛来の情報あり。
予想進路は王都。
甚大なる被害が発生する虞あり。
全治癒師に対し王都への出立を命令する。
ネルトネッテ伯爵”
"北門に馬車を用意した。
準備を整えて至急集合されたし。
ケンノケロ町長”
飛来時期が二月も早い、準備が不十分だが仕方が無いだろう、急いで向かおう。
俺達を待っていたら申し訳無いので、北門に向かい係員に一言伝えて置く。
「マリア様、まだ皆様集まっておりませんので、先頭の馬車に乗ってお待ち下さい」
「ごめん、俺達は先に行かせて貰う」
「えっ?」
ワンコ達が身体を震わせ翼を伸ばす。
マリアも光輝きながら翼を伸ばす。
周囲の人々から驚きの叫び声が漏れる。
俺はこそこそと地味に氷で翼を拵えた。
「出発!」
マリアの号令一下、俺達は王都に向かって飛び立った。
次第に町の病人の数も減って、マリアが休日を取るような時間的な余裕も生じて来た。
なのでマリアが休みの日は俺もトイレ掃除を休める、涙が出る程嬉しかった。
トイレの数が千基を越えて居るのだ。
治療所は増築を重ね、七割はトイレで占められているという変な状況になっている。
俺に磨術という訳の解らない魔術が生えて来なかったら、朝から夜半までトイレ掃除で過ごす日々を過ごさなければならなかったところだ。
でもおかげで俺は筋肉が付いてマッチョになった。
なんだか勇者らしい体格になったのだが、バケツとブラシを持った作業着姿がすっかり馴染み、近所のおばちゃん達にはお掃除のお兄さんと呼ばれて気軽に話掛けてくれる。
近所の人達と一緒に合同で行うドブの浚いの時は、旦那さん達にも作業が捗るので物凄く喜ばれている。
勿論マリアは有名人になった、元々最初から聖女なのだが、聖女様のようだと拝まれている。
コロコロと楽しそうに笑うようになり、呼び止められれば気軽に町の人達とも話している。
マリアは、一度に五十人、一日三千人の患者の治療を行っている筈なのに、一人一人の症状を覚えているらしい。
それぞれの体調変化を聞いて、相手に感激されている。
町へ買物に出掛ける時は、ワンコ達もぞろぞろ付いて来る。
石の人形が歩いているのだが、町の人達は彫像の様な種類の犬と認識しているようで、全然驚いていない。
食い物屋の外で待たせている時には、近くの子供達が餌をくれるので美味しそうに食っているようだ。
此奴等の餌は、基本的に魔石なのだが、雑食性で食わせれば何でも食う。
肉であろうが、野菜であろうが、皿であろうが食う。
休日には、二人でこのワンコ達を連れて岩山へ出かける。
当初、俺達の龍退治の訓練の筈だったのだが、マリアはすっかりワンコ達と一緒に魔獣を追掛け回す方へ夢中になっている。
”ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる”
岩山に到着すると、ワンコ達が一斉に濡れた身体から水を払う様に身体を震わせ始める。
するとワンコ達の背中に大きい陶器のような白い翼が生えてくる。
「出発!」
マリアの号令一下、ワンコ達が一斉にその翼をはためかせて、空へ飛び立ち、魔獣を捜しに散って行く。
「ホーリーフライ!」
光輪を背負ってマリアの身体が白く輝き、背中に大きな白い翼が現れる。
その翼をはためかせてマリアも空に飛び上がった。
マリアは、癒術だけじゃなくて聖術も経験を重ねて伸ばしている。
”キュア”や”ヒール”に”ホーリー”を纏わせると浸透力が増すので重ね掛けして使う様にしていたらしいのだ。
聖術がぐんぐんレベルアップし、レベルが10に上ったところでこの飛翔術が現れたらしいのだ。
ワンコ達とマリアは感覚が繋がっている。
魔獣を発見したワンコがいたらしく、マリアはその方向に向かって物凄い勢いで急降下して行く。
俺も追掛ける、背中に氷でジェット機の様な翼を作り、その両端に氷の筒を作り、熱術で作った爆発力により推進する。
本当は、氷の翼を作って優雅に飛びたいのだが、まだ技量が全然足りてない。
マリア達に追い付いた時には、魔獣はワンコ達に倒されており、マリアが空でワンコ達とじゃれあっていた。
武骨な俺の翼と違い、自在に空を飛び回っているマリアが羨ましい。
解体してマジックボックスの収納する回収係が俺の役目だ。
旅をしながら移動するプランの筈だったが、すっかり町に居付いてしまった。
今マリアが町から出て行くと宣言したら、たぶん暴動が起こりかねない。
長居をすれば追手に通報される心配が有ったので、俺達の手配状況は勿論真っ先に調べた。
確かに冒険者ギルドに似顔絵付きの手配書が貼られていた。
だが、画家の技量が高過ぎたのか、物凄くそっくりに描かれているにもかかわらず、物凄く凶悪な顔に描かれているので誰にも気付かれない。
絵なのに、目を見たら因縁を吹っかけられそうなくらい怖い顔に描かれていた。
手配書の前に俺達が立っていても誰も気が付かないのだ。
「ねえ、お兄ちゃんしようよ」
マリアが服を脱ぎ始めた。
最近のマリアのお気に入りだ。
裸になって抱き合いながら上昇し、上空から螺旋状に降下しながらエッチをするのだ。
俺が熱術で身体を保温膜で覆うので寒くは無い。
重さが消える分、互いの肌の感触に集中できるのだ。
耳元を流れる風切音に混じって、マリアの絶頂に達した歓喜の叫び声が聞こえて来る。
ワンコ達も一緒に回りを飛び交っており、マリアと感覚が繋がっているので一緒に叫び声を上げる。
マリアが直ぐに治してくれるから良いのだが、何匹か、達した途端”ガブリ”と噛付く奴がいる。
別の方向に目覚めそうなので、勘弁して欲しい。
そんな日々を過ごしている時だった、町長経由で伯爵から指令書が届けられた。
”北方より龍飛来の情報あり。
予想進路は王都。
甚大なる被害が発生する虞あり。
全治癒師に対し王都への出立を命令する。
ネルトネッテ伯爵”
"北門に馬車を用意した。
準備を整えて至急集合されたし。
ケンノケロ町長”
飛来時期が二月も早い、準備が不十分だが仕方が無いだろう、急いで向かおう。
俺達を待っていたら申し訳無いので、北門に向かい係員に一言伝えて置く。
「マリア様、まだ皆様集まっておりませんので、先頭の馬車に乗ってお待ち下さい」
「ごめん、俺達は先に行かせて貰う」
「えっ?」
ワンコ達が身体を震わせ翼を伸ばす。
マリアも光輝きながら翼を伸ばす。
周囲の人々から驚きの叫び声が漏れる。
俺はこそこそと地味に氷で翼を拵えた。
「出発!」
マリアの号令一下、俺達は王都に向かって飛び立った。
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