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6 ゴブリンを襲う
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夜が明ける少し前、ネノルさんが指揮を執って村の皆に集落の表門を襲わせた。
だがこれは、ゴブリン達を陽動するための作戦で、実質的な攻撃の主体である冒険者さん達は、裏門脇の闇の中で息を殺していた。
裏門を警備していた二匹のゴブリンが、表門へ向かって急いで走って行くのを見届けてから、全員が裏門から集落内へ侵入した。
まず最初に、ジシロさんが裏門脇の小屋へ飛び込み、手慣れた動作で眠っているゴブリンを切り殺した。
これは、いざと言う時の退路を確保しておくためだ。
それを確認してから、それぞれがあらかじめ決めて有った家へと走る。
僕の担当は東奥の家だ。
夜行動するのは初めての経験なのだが、闇の中で足音を殺して疾走すると、静かな緊張感と僅かな高揚感がある。
僕はケレンさんという女冒険者さんとペアを組んだ。
ケレンさんが表へ回り、僕は勝手口から中へ侵入した。
表門の騒動に気が付かず、僕の担当の家の四匹のゴブリンは、まだ眠り呆けていた。
声を立てない様に毛布で顔を覆い、抑え付けて喉を短刀で切り裂いて、動かなくなるまで待つ。
ボウガンは巻き上げ音や弦音が大きいのが欠点で、このような場面では使えない。
ケレンさんが玄関に近い部屋で寝ていた二匹、僕が奥で寝ていた二匹を倒した。
担当の家が終われば、ゴブリンナイトが寝ている家、奴等の本部へと向かう。
途中表門へ向かって走るゴブリンがいたので、背後から襲い、首を掻き切って物陰へ引き摺り込んだ。
足音に耳を澄ませ、後続が来ない事を確認してから、ケレンさんに合図を送る。
目的の家に辿り着いた時には、皆集まっており、家の周囲で息を殺している。
表門から騒々しい音や叫び声が聞こえてくる。
それなのに、家からゴブリンが出て来る気配がない。
眠り呆けている訳じゃ無いのは、冒険者達の緊張した気配からも解る。
「ジシロ」
「ケレンか、奴等中で気配を消して待ち構えている」
「火を着けて炙り出すかい」
「駄目だ。狼煙を上げて奴らの本隊に異変を教える様な物だ」
「突っ込むかい」
「これから先は長い。前哨戦の段階で怪我人を出したくない。挑発して外へ誘き出せれば良いんだがな」
「ゴブリンナイトが簡単に挑発に乗るとは思えないね。明るくなって狼煙でも上げられたら、こっちの方が不利だよ」
「ああ、解っている」
「俺なら屋根の小窓から屋根裏へ入れます。このボウガンで屋根裏から攪乱しましょうか」
「ああ、おまえなら入れるか・・・。うん、頼む」
「あたいも行くよ」
「・・・胸は兎も角、その尻で入れるのか」
「失礼な爺さんだね」
屋根に攀じ登る、手掛かりや足掛かりが多いから、そんなに大変な事ではない。
窓から侵入する前に、念のため中を能力で覗いてみた。
屋根裏は物置になっており、驚いた事に、ゴブリンが一匹警戒に当たっていた。
「中に入るんで、ジシロさんへ合図をして下さい」
「あいよ」
ケレンさんが脇を向いている隙に、中のゴブリンを屋根の上から射殺す。
表門の騒音で、弦の音が紛れてくれる。
「手を引っぱってくれ」
ジシロさんの見立ては正しく、ケレンさんの腰が窓枠に詰っかえている。
「うわっ、ちょっと」
手を思い切り引っぱったら、スポッと抜ける様にケレンさんが落ちて来た。
窓枠に、ケレンさんのレザーアーマーの半ズボンと小さな白いパンティーが残されている。
取りに行きたかったのだが、物音に気が付いたゴブリンが、続々と梯子を上って来てそれどころじゃ無くなった。
下半身裸のケレンさんが、梯子に駆け寄り、梯子を上って来たゴブリンに切り掛る。
僕も梯子の降り口から次々に首を出すゴブリンを射殺しながら降り口に近付き、梯子に取り付こうとするゴブリンを上から射殺す。
その次々に射殺されて行く姿を見兼ねたのか、ゴブリンナイトが盾を構えて梯子を上って来た。
梯子の途中の空間に穴を作り、盾がその穴を通り過ぎた瞬間に引き金を引いた。
顔の真ん中を鉄の矢で打ち抜かれたゴブリンナイトが、後ろのゴブリン達を道連れにして梯子から落下した。
残ったゴブリン達が一斉に逃げ出し、家の外からゴブリンの断末魔が聞こえて来た、やれやれだ。
鉄の矢を回収していたら、ケレンさんに袖を引かれた。
まだ下半身は裸のままだ。
「ケレンさん、早く下着を」
「ねえ、あんた。上でエッチしない」
全身に返り血を浴び、目を潤ませてショートソードに着いた血を舐めている。
この人は危ない人だ、大事な所を切り飛ばされそうな気がしたので、僕は慌てて逃げ出した。
ーーーーー
D級冒険者 ジシロ
「ケレンどうだった」
「逃げられちゃった。でも、とっても美味しそう。あたいが三匹殺っている間に、十匹も獲られちゃったさ」
「でっ、どうだったあれは」
「うん、あんたの言ったとおり消えたよ。なんか興奮しちゃうよね。ねえー、ジシロ、しようよ」
「仕方がねーな。してやるから刃物を終え。ゴブリンの屍骸の中が良いんだよな」
「うん」
だがこれは、ゴブリン達を陽動するための作戦で、実質的な攻撃の主体である冒険者さん達は、裏門脇の闇の中で息を殺していた。
裏門を警備していた二匹のゴブリンが、表門へ向かって急いで走って行くのを見届けてから、全員が裏門から集落内へ侵入した。
まず最初に、ジシロさんが裏門脇の小屋へ飛び込み、手慣れた動作で眠っているゴブリンを切り殺した。
これは、いざと言う時の退路を確保しておくためだ。
それを確認してから、それぞれがあらかじめ決めて有った家へと走る。
僕の担当は東奥の家だ。
夜行動するのは初めての経験なのだが、闇の中で足音を殺して疾走すると、静かな緊張感と僅かな高揚感がある。
僕はケレンさんという女冒険者さんとペアを組んだ。
ケレンさんが表へ回り、僕は勝手口から中へ侵入した。
表門の騒動に気が付かず、僕の担当の家の四匹のゴブリンは、まだ眠り呆けていた。
声を立てない様に毛布で顔を覆い、抑え付けて喉を短刀で切り裂いて、動かなくなるまで待つ。
ボウガンは巻き上げ音や弦音が大きいのが欠点で、このような場面では使えない。
ケレンさんが玄関に近い部屋で寝ていた二匹、僕が奥で寝ていた二匹を倒した。
担当の家が終われば、ゴブリンナイトが寝ている家、奴等の本部へと向かう。
途中表門へ向かって走るゴブリンがいたので、背後から襲い、首を掻き切って物陰へ引き摺り込んだ。
足音に耳を澄ませ、後続が来ない事を確認してから、ケレンさんに合図を送る。
目的の家に辿り着いた時には、皆集まっており、家の周囲で息を殺している。
表門から騒々しい音や叫び声が聞こえてくる。
それなのに、家からゴブリンが出て来る気配がない。
眠り呆けている訳じゃ無いのは、冒険者達の緊張した気配からも解る。
「ジシロ」
「ケレンか、奴等中で気配を消して待ち構えている」
「火を着けて炙り出すかい」
「駄目だ。狼煙を上げて奴らの本隊に異変を教える様な物だ」
「突っ込むかい」
「これから先は長い。前哨戦の段階で怪我人を出したくない。挑発して外へ誘き出せれば良いんだがな」
「ゴブリンナイトが簡単に挑発に乗るとは思えないね。明るくなって狼煙でも上げられたら、こっちの方が不利だよ」
「ああ、解っている」
「俺なら屋根の小窓から屋根裏へ入れます。このボウガンで屋根裏から攪乱しましょうか」
「ああ、おまえなら入れるか・・・。うん、頼む」
「あたいも行くよ」
「・・・胸は兎も角、その尻で入れるのか」
「失礼な爺さんだね」
屋根に攀じ登る、手掛かりや足掛かりが多いから、そんなに大変な事ではない。
窓から侵入する前に、念のため中を能力で覗いてみた。
屋根裏は物置になっており、驚いた事に、ゴブリンが一匹警戒に当たっていた。
「中に入るんで、ジシロさんへ合図をして下さい」
「あいよ」
ケレンさんが脇を向いている隙に、中のゴブリンを屋根の上から射殺す。
表門の騒音で、弦の音が紛れてくれる。
「手を引っぱってくれ」
ジシロさんの見立ては正しく、ケレンさんの腰が窓枠に詰っかえている。
「うわっ、ちょっと」
手を思い切り引っぱったら、スポッと抜ける様にケレンさんが落ちて来た。
窓枠に、ケレンさんのレザーアーマーの半ズボンと小さな白いパンティーが残されている。
取りに行きたかったのだが、物音に気が付いたゴブリンが、続々と梯子を上って来てそれどころじゃ無くなった。
下半身裸のケレンさんが、梯子に駆け寄り、梯子を上って来たゴブリンに切り掛る。
僕も梯子の降り口から次々に首を出すゴブリンを射殺しながら降り口に近付き、梯子に取り付こうとするゴブリンを上から射殺す。
その次々に射殺されて行く姿を見兼ねたのか、ゴブリンナイトが盾を構えて梯子を上って来た。
梯子の途中の空間に穴を作り、盾がその穴を通り過ぎた瞬間に引き金を引いた。
顔の真ん中を鉄の矢で打ち抜かれたゴブリンナイトが、後ろのゴブリン達を道連れにして梯子から落下した。
残ったゴブリン達が一斉に逃げ出し、家の外からゴブリンの断末魔が聞こえて来た、やれやれだ。
鉄の矢を回収していたら、ケレンさんに袖を引かれた。
まだ下半身は裸のままだ。
「ケレンさん、早く下着を」
「ねえ、あんた。上でエッチしない」
全身に返り血を浴び、目を潤ませてショートソードに着いた血を舐めている。
この人は危ない人だ、大事な所を切り飛ばされそうな気がしたので、僕は慌てて逃げ出した。
ーーーーー
D級冒険者 ジシロ
「ケレンどうだった」
「逃げられちゃった。でも、とっても美味しそう。あたいが三匹殺っている間に、十匹も獲られちゃったさ」
「でっ、どうだったあれは」
「うん、あんたの言ったとおり消えたよ。なんか興奮しちゃうよね。ねえー、ジシロ、しようよ」
「仕方がねーな。してやるから刃物を終え。ゴブリンの屍骸の中が良いんだよな」
「うん」
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