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5 オーク
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二か月が経過した。
地球の基準で言い直せば、四ヶ月だ。
この世界のピーナッツ型の月は、満月から満月までに六十日を要するのだ。
週の長さも違う、地球の十日がここの一週間だった。
月、火、水、木、金、土、日までは何故か一緒なのだが、その後に風曜日、闇曜日、祈曜日が続くのだ。
祈曜日は字の如く神殿へ行って祈りを捧げる日、地球の日曜日と一緒だ。
広場での市はこの祈曜日に開催されていた。
言葉もだいぶ覚えて、日常会話には不便しない程度には上達した。
そして、僕はオークと呼ばれていることを知った。
そう、あの豚みたいなモンスターだ。
実際に見た事が有る人は居ないようなのだが、僕の平板な顔、毛の生えた手足、太った体躯、短い足、これが伝え聞くオークの容姿と似てるのでそう呼ばれているようだった。
この世界のオークの雄は定番通りに人間の雌が大好きで、攫って巣に持ち帰って犯すらしい。
この世界の性に初めて興味を持ち始めた女の子は、このモンスターが女性を犯すという異様なシチュエーションに物凄く興味を持つらしく、僕の周囲に寄って来たのも、これが原因だったらしい。
特にオークの股間に関しては、色々な流言飛語が出回っているらしく、僕の股間を覗こうとしたのも、そんな噂を確かめたかったのだろう。
僕の逸物は二股に分かれてないし、蛇の様にとぐろを巻いた状態からそそり立つ訳でもない。
真実を知れば興味を失いそうな物なのだが、何故か彼女達は、相変わらず浴場で僕の側に寄って来る。
そんな不埒なモンスターに似ているので、言葉も判らないこともあって、最初は周囲の人から一歩退かれていた。
だが、偶々、祈曜日に神殿へ迷い込んでしまったことが幸いして、以来、信仰を持った大丈夫な人間として普通に接して貰える様になった。
休日とは知らないで、普段通り前を歩く人に付いて行ったら、目的地が神殿だっただけなのだが、外見が異質でも、共通するベースがあれば人は安心するらしい。
今では、同じ宿を拠点にして日々同じ生活を粛々と繰り返す僕は、勤勉な人間として信用されている。
丸太の運搬帰りに倒した野鼠も二百を越え、レベルも六に上がっている。
目標達成までもう一息だったので、仕事も丸太の運搬だけではなく、もう少し率の良い討伐を受けることにした。
字も多少読める様になったので、ギルドの掲示板に張り出されている依頼の紙が読める様になったのだ。
町の外の討伐依頼は、狼とかゴブリンとか手強そうな物が多かったので、手始めに町内の仕事、下水道の鼠退治を請け負うことにした。
鼠退治は慣れていたし、毛皮と肉の引き取り価格は銀貨一枚と、外の鼠に比べれば安いのだが、一匹に付き討伐報酬が銅貨五十枚貰えるので、数をこなせば結構な収入になるのだ。
町中に設けられている小屋から階段を下り、皆で連携して鼠を追い込んで行く。
小屋前に集まった依頼を受けた冒険者が少なかったので、下水道の中は悪臭に満ちていると思っていたのだが、煉瓦作りの馬蹄形の水路の中は風が吹いており、下水も淀むことなく流れていたので意外に不快ではなかった。
三人一組となり頭に光石を着け、バケツと棒を持って指示された場所へ散り、バケツを叩いて戻って来る。
バケツを叩く音が水路に響き渡り、互いのバケツの音が迫って来ると、どこに隠れていたのか、目の前に突然鼠の群が現れた。
打ち合わせ通りに、互いの邪魔にならないように縦方向に間隔を取って並ぶ。
逃げ惑って僕らの水路に逃げ込んできた鼠を、僕が先頭で棍棒を振り回し殴り殺し、討ち漏らした鼠を次の男性の冒険者が剣で斬り殺して行き、最後に殿の女性冒険者が槍で突き殺して行く。
僕の足下には鼠の死骸が積上がって行き、向かってくる鼠が居なくなってから確認したら百八匹転がっていた。
大量だ、ほくほく顔で後ろを振り向いたら、後ろの二人は血塗れになって厳しい顔をしていた。
地上に上がったら、依頼主である役人に全員が喰って掛かった。
三人の冒険者が死んでいた。
実は鼠が下水道に大量発生していたのだが、それを知らされないで仕事を請け負った僕ら全員は、かなり危ない、紙一重の状態だったらしい。
剣を片手に脅された役人は、さすがに自分の身に危険を感じたようで、翌日は範囲を狭くして、人数も倍に増やした。
初日で金貨一枚を越える収入が有ったのだが、この儲けは思い切って防具に回した。
鼠が壁伝いに走って襲って来たので、胸から肩にかけてだいぶ噛まれたのだ。
木琴の様な胴巻きもだいぶすり減っており、腹周りの肉がだいぶ落ちていて、長さが余った分の板八枚ほどを重ねて巻いていたので動きにくく、丁度良いタイミングだった。
中古の防具屋を物色し、鎖のTシャツとハーフパンツを買った。
サイズの合う人が居ないので売れ残っていたらしく、新品ならば金貨五十枚はする品物なのに、金貨一枚で売ってくれた。
軽い金属で出来ていて、服の下に着ても違和感が無かった。
常に防具を纏っていると、なんか自分が強くなった気分になってくる。
浴場で着替える時も、自分が格好良くなったようで嬉しかった。
翌日は六十七匹、次日は五十八匹、最終日は四十五匹の鼠を倒し、遂に蓄えが目標額を越えた。
次の祈曜日に奴隷を買おうと、縄や蝋燭を準備して、僕は股間を膨らませた。
だが、神様の嫌がらせという訳ではないだろうが、突然全身に悪寒が走り、僕は高熱を発して倒れた。
流行病だった、同じ宿の冒険者達も次々に倒れて行く。
流行病には治療の魔法は効かない、体の中のウイルスも一緒に癒してしまうからだ。
治療は身体の治癒力に任せるしかないのだ。
少女を抱くまで死ねない、ただその執念で、少女の肢体を思い浮かべて三日三晩苦しみに耐えた。
そして四日目、病の峠を越せたようで熱が下がり、久々に熟睡した。
地球の基準で言い直せば、四ヶ月だ。
この世界のピーナッツ型の月は、満月から満月までに六十日を要するのだ。
週の長さも違う、地球の十日がここの一週間だった。
月、火、水、木、金、土、日までは何故か一緒なのだが、その後に風曜日、闇曜日、祈曜日が続くのだ。
祈曜日は字の如く神殿へ行って祈りを捧げる日、地球の日曜日と一緒だ。
広場での市はこの祈曜日に開催されていた。
言葉もだいぶ覚えて、日常会話には不便しない程度には上達した。
そして、僕はオークと呼ばれていることを知った。
そう、あの豚みたいなモンスターだ。
実際に見た事が有る人は居ないようなのだが、僕の平板な顔、毛の生えた手足、太った体躯、短い足、これが伝え聞くオークの容姿と似てるのでそう呼ばれているようだった。
この世界のオークの雄は定番通りに人間の雌が大好きで、攫って巣に持ち帰って犯すらしい。
この世界の性に初めて興味を持ち始めた女の子は、このモンスターが女性を犯すという異様なシチュエーションに物凄く興味を持つらしく、僕の周囲に寄って来たのも、これが原因だったらしい。
特にオークの股間に関しては、色々な流言飛語が出回っているらしく、僕の股間を覗こうとしたのも、そんな噂を確かめたかったのだろう。
僕の逸物は二股に分かれてないし、蛇の様にとぐろを巻いた状態からそそり立つ訳でもない。
真実を知れば興味を失いそうな物なのだが、何故か彼女達は、相変わらず浴場で僕の側に寄って来る。
そんな不埒なモンスターに似ているので、言葉も判らないこともあって、最初は周囲の人から一歩退かれていた。
だが、偶々、祈曜日に神殿へ迷い込んでしまったことが幸いして、以来、信仰を持った大丈夫な人間として普通に接して貰える様になった。
休日とは知らないで、普段通り前を歩く人に付いて行ったら、目的地が神殿だっただけなのだが、外見が異質でも、共通するベースがあれば人は安心するらしい。
今では、同じ宿を拠点にして日々同じ生活を粛々と繰り返す僕は、勤勉な人間として信用されている。
丸太の運搬帰りに倒した野鼠も二百を越え、レベルも六に上がっている。
目標達成までもう一息だったので、仕事も丸太の運搬だけではなく、もう少し率の良い討伐を受けることにした。
字も多少読める様になったので、ギルドの掲示板に張り出されている依頼の紙が読める様になったのだ。
町の外の討伐依頼は、狼とかゴブリンとか手強そうな物が多かったので、手始めに町内の仕事、下水道の鼠退治を請け負うことにした。
鼠退治は慣れていたし、毛皮と肉の引き取り価格は銀貨一枚と、外の鼠に比べれば安いのだが、一匹に付き討伐報酬が銅貨五十枚貰えるので、数をこなせば結構な収入になるのだ。
町中に設けられている小屋から階段を下り、皆で連携して鼠を追い込んで行く。
小屋前に集まった依頼を受けた冒険者が少なかったので、下水道の中は悪臭に満ちていると思っていたのだが、煉瓦作りの馬蹄形の水路の中は風が吹いており、下水も淀むことなく流れていたので意外に不快ではなかった。
三人一組となり頭に光石を着け、バケツと棒を持って指示された場所へ散り、バケツを叩いて戻って来る。
バケツを叩く音が水路に響き渡り、互いのバケツの音が迫って来ると、どこに隠れていたのか、目の前に突然鼠の群が現れた。
打ち合わせ通りに、互いの邪魔にならないように縦方向に間隔を取って並ぶ。
逃げ惑って僕らの水路に逃げ込んできた鼠を、僕が先頭で棍棒を振り回し殴り殺し、討ち漏らした鼠を次の男性の冒険者が剣で斬り殺して行き、最後に殿の女性冒険者が槍で突き殺して行く。
僕の足下には鼠の死骸が積上がって行き、向かってくる鼠が居なくなってから確認したら百八匹転がっていた。
大量だ、ほくほく顔で後ろを振り向いたら、後ろの二人は血塗れになって厳しい顔をしていた。
地上に上がったら、依頼主である役人に全員が喰って掛かった。
三人の冒険者が死んでいた。
実は鼠が下水道に大量発生していたのだが、それを知らされないで仕事を請け負った僕ら全員は、かなり危ない、紙一重の状態だったらしい。
剣を片手に脅された役人は、さすがに自分の身に危険を感じたようで、翌日は範囲を狭くして、人数も倍に増やした。
初日で金貨一枚を越える収入が有ったのだが、この儲けは思い切って防具に回した。
鼠が壁伝いに走って襲って来たので、胸から肩にかけてだいぶ噛まれたのだ。
木琴の様な胴巻きもだいぶすり減っており、腹周りの肉がだいぶ落ちていて、長さが余った分の板八枚ほどを重ねて巻いていたので動きにくく、丁度良いタイミングだった。
中古の防具屋を物色し、鎖のTシャツとハーフパンツを買った。
サイズの合う人が居ないので売れ残っていたらしく、新品ならば金貨五十枚はする品物なのに、金貨一枚で売ってくれた。
軽い金属で出来ていて、服の下に着ても違和感が無かった。
常に防具を纏っていると、なんか自分が強くなった気分になってくる。
浴場で着替える時も、自分が格好良くなったようで嬉しかった。
翌日は六十七匹、次日は五十八匹、最終日は四十五匹の鼠を倒し、遂に蓄えが目標額を越えた。
次の祈曜日に奴隷を買おうと、縄や蝋燭を準備して、僕は股間を膨らませた。
だが、神様の嫌がらせという訳ではないだろうが、突然全身に悪寒が走り、僕は高熱を発して倒れた。
流行病だった、同じ宿の冒険者達も次々に倒れて行く。
流行病には治療の魔法は効かない、体の中のウイルスも一緒に癒してしまうからだ。
治療は身体の治癒力に任せるしかないのだ。
少女を抱くまで死ねない、ただその執念で、少女の肢体を思い浮かべて三日三晩苦しみに耐えた。
そして四日目、病の峠を越せたようで熱が下がり、久々に熟睡した。
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