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57 大迷宮6
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大迷宮とは、大砂漠のど真ん中に広がる迷宮群の通称で、ミトとファトとルンテとファンテという中核的な四つの都市と無数の遺跡が点在する丘陵とで構成されている。
統治している政府の様な組織は無く、気の荒い一攫千金を夢見る冒険者達が、金と暴力をルールに過ごしている。
「天国みたいなところじゃねえか」
うん、繊細な僕と違い、ユリエさんみたいな大雑把な人には向いている場所かも知れない。
そんな大迷宮の世界で、一番力が有る組織は砂船組合。
慢性的な食料不足に悩む大迷宮の中にあって、大砂漠沿縁の都市との間の航路を維持して、穀物などの食料を命懸けで確保している組織だ。
逆らうと、兵糧責めにされる怖ーい組織なので、誰も頭が上がらない。
元々大迷宮に住んでいた人達が作った組織で、岩礁地帯の地形を熟知し、砂虫との戦い方も良く心得ている人達が多い。
その次に力がある組織は商会連合会で、大砂漠沿縁の都市の有力商人達が大迷宮から産出する魔石や宝物を買い取る為に作った組織で、下部組織として冒険者ギルドや商人ギルド、宿組合や治療所や教会を抱えている。
ただ組織としての結束力は緩く、魔石や宝物の買い取りなどの商売は、複数の商店が乱立して争っている。
どちらの組織も、それぞれの組織に影響を及ぼさない限り、基本的には冒険者同士の争いには干渉しない。
ただ、取引の約束を破ったり、組織の人間に害を及ぼしたりすると、傭兵軍団にしょっ引かれて、砂の中に埋められてしまうらしい。
いや、”らしい”じゃなくて、事実目の前で、船の返却で揉めて係員を殴り倒した連中が、傭兵達に袋叩きにされて砂漠の方へしょっ引かれて行った。
うん、砂虫が喜びそうだ。
「すいません、この船少し擦っちゃいました」
駄目だと言ってあったのに、ユリエさんが勢いで砂虫の群に船をけしかけ、近くの岩で擦ってしまったのだ。
「ほら、ユリエさんも謝って」
「でもよー」
「こら、ユリエちゃんと謝れ」
「ごめんなさい」
ハンゾーさんが頭を押え付けて謝らせている。
「これくらい大丈夫ですよ」
「ほーれ見ろ、だからぶっ壊れた訳じゃねーから大丈夫だって言ったんだよ。おめーら二人はチンコ小さいんだよ。あたいに謝れよ」
くそー、ユリエさんが踏ん反り返ってえばっている、僕のチンコは小さくない。
「岩礁地帯を通過して、この程度の傷で済んでるなんて大したもんです」
「ほーら、そーだろ、そーだろ。なのにこのしみったれ共は、グチグチ煩いんだよなー。酷いだろ」
「タケミチさんですよね」
「はい」
「一休みしてからで結構なんですが、うちの幹部からお願いしたいことが有るんで、後で事務所に顔を出して頂けますか」
「ええ、今日はもう予定がないですから良いですよ」
「ありがとうございます」
追加料金も発生せず、無事船を返し終えた。
僕と明美、ハンゾーさんとユリエさん以外は皆、今日に宿泊予定の宿へ向かっている。
ハンゾーさんは団長、ユリエさんは副長、僕は操船責任者兼金庫番なので船の返却に立ち会っていた。
本来ユリエさんが金庫番の筈なのだが、気が付いたら僕がやらされていた。
宿場港の宿に泊まる度に、酒代が気になって仕方が無かった。
それに、百人分の生活費が入った革のバックは、心にもずっしりと重い。
通りを歩いていると、何度も掏りと遭遇したが、魔素の目を持つ僕には通用しない。
男は遠慮なく僕が叩きのめさせて貰い、女は遠慮なく、蔓がくすぐり捲った。
「おー、タケの傀儡術は容赦ねーな。あいつ小便漏らしてたぜ」
町の中央広場を横断しようとした時だった。
突然行く手を数人の女冒険者に塞がれた。
面倒臭いので、避けてやり過ごそうと思ったら、二百人近い女冒険者達に取り囲まれてしまった。
「トリフェラス、戦いの女神団があたい達に何の用だい」
「魚の糞みてーに俺達の後に付いて来てた様だが、礼でもしてくれるのか」
「あんた達には用は無いさ。用が有るのはその若造さ」
「えっ!俺ですか」
「あんた竜殺しなんだってね、ここででかい面されても鬱陶しんで、最初に締めて置こうと思ってさ。あたいと勝負しな。差しでやるから、あんたら手出しするんじゃないよ」
勿論手出しするなと言っているのは、周囲を取り囲んでいる女冒険者達に向かってだ。
何か一方的にルールを破る様で申し訳ないのだが、何故か彼女達は蔓のどストライクのようで、蔓はさっきからブンブンと大喜びしている。
「ぎゃはははは、こら、卑怯、あはははは、ひー」
さっきの掏り達の時もそうだったのだが、ここのところの禁欲生活で、蔓も随分溜まっていたらしい。
トリフェラスさんが身構える前に、問答無用で、蔓が周囲の女性達も含めて襲い掛かってしまった。
「きゃははは、何、これ、きゃはははは」
「いやー、あははは、いひひひひ」
「何だ、あははは、きゃははは、やめてー」
「うわっ、いや、あはははは、やめて、いひひひひ」
「あはははは、逃げろ、きゃははははは、苦しい」
逃げようとする女性達も、足を取られて引き摺り込まれる。
何が起こっているか解らず、戦いの女神団のお姉さん方は、皆パニックになっている。
しばらくしてから静かになった、
全員口から泡を吹いて気絶している。
野次馬達も、何が起こっているのか解らず、唖然としている。
野次馬の中に、彼女達の宿を知っている人がいたので、案内して貰って送り届けることにした。
「こらタケミチ、やり過ぎだぞ」
「すいません」
蔓は、大満足だったようで、ユラユラしている。
「今の何だったんだ」
「さー、良く解らん」
最後の四人を担ぎあげたとき、野次馬が不思議そうに話していた。
統治している政府の様な組織は無く、気の荒い一攫千金を夢見る冒険者達が、金と暴力をルールに過ごしている。
「天国みたいなところじゃねえか」
うん、繊細な僕と違い、ユリエさんみたいな大雑把な人には向いている場所かも知れない。
そんな大迷宮の世界で、一番力が有る組織は砂船組合。
慢性的な食料不足に悩む大迷宮の中にあって、大砂漠沿縁の都市との間の航路を維持して、穀物などの食料を命懸けで確保している組織だ。
逆らうと、兵糧責めにされる怖ーい組織なので、誰も頭が上がらない。
元々大迷宮に住んでいた人達が作った組織で、岩礁地帯の地形を熟知し、砂虫との戦い方も良く心得ている人達が多い。
その次に力がある組織は商会連合会で、大砂漠沿縁の都市の有力商人達が大迷宮から産出する魔石や宝物を買い取る為に作った組織で、下部組織として冒険者ギルドや商人ギルド、宿組合や治療所や教会を抱えている。
ただ組織としての結束力は緩く、魔石や宝物の買い取りなどの商売は、複数の商店が乱立して争っている。
どちらの組織も、それぞれの組織に影響を及ぼさない限り、基本的には冒険者同士の争いには干渉しない。
ただ、取引の約束を破ったり、組織の人間に害を及ぼしたりすると、傭兵軍団にしょっ引かれて、砂の中に埋められてしまうらしい。
いや、”らしい”じゃなくて、事実目の前で、船の返却で揉めて係員を殴り倒した連中が、傭兵達に袋叩きにされて砂漠の方へしょっ引かれて行った。
うん、砂虫が喜びそうだ。
「すいません、この船少し擦っちゃいました」
駄目だと言ってあったのに、ユリエさんが勢いで砂虫の群に船をけしかけ、近くの岩で擦ってしまったのだ。
「ほら、ユリエさんも謝って」
「でもよー」
「こら、ユリエちゃんと謝れ」
「ごめんなさい」
ハンゾーさんが頭を押え付けて謝らせている。
「これくらい大丈夫ですよ」
「ほーれ見ろ、だからぶっ壊れた訳じゃねーから大丈夫だって言ったんだよ。おめーら二人はチンコ小さいんだよ。あたいに謝れよ」
くそー、ユリエさんが踏ん反り返ってえばっている、僕のチンコは小さくない。
「岩礁地帯を通過して、この程度の傷で済んでるなんて大したもんです」
「ほーら、そーだろ、そーだろ。なのにこのしみったれ共は、グチグチ煩いんだよなー。酷いだろ」
「タケミチさんですよね」
「はい」
「一休みしてからで結構なんですが、うちの幹部からお願いしたいことが有るんで、後で事務所に顔を出して頂けますか」
「ええ、今日はもう予定がないですから良いですよ」
「ありがとうございます」
追加料金も発生せず、無事船を返し終えた。
僕と明美、ハンゾーさんとユリエさん以外は皆、今日に宿泊予定の宿へ向かっている。
ハンゾーさんは団長、ユリエさんは副長、僕は操船責任者兼金庫番なので船の返却に立ち会っていた。
本来ユリエさんが金庫番の筈なのだが、気が付いたら僕がやらされていた。
宿場港の宿に泊まる度に、酒代が気になって仕方が無かった。
それに、百人分の生活費が入った革のバックは、心にもずっしりと重い。
通りを歩いていると、何度も掏りと遭遇したが、魔素の目を持つ僕には通用しない。
男は遠慮なく僕が叩きのめさせて貰い、女は遠慮なく、蔓がくすぐり捲った。
「おー、タケの傀儡術は容赦ねーな。あいつ小便漏らしてたぜ」
町の中央広場を横断しようとした時だった。
突然行く手を数人の女冒険者に塞がれた。
面倒臭いので、避けてやり過ごそうと思ったら、二百人近い女冒険者達に取り囲まれてしまった。
「トリフェラス、戦いの女神団があたい達に何の用だい」
「魚の糞みてーに俺達の後に付いて来てた様だが、礼でもしてくれるのか」
「あんた達には用は無いさ。用が有るのはその若造さ」
「えっ!俺ですか」
「あんた竜殺しなんだってね、ここででかい面されても鬱陶しんで、最初に締めて置こうと思ってさ。あたいと勝負しな。差しでやるから、あんたら手出しするんじゃないよ」
勿論手出しするなと言っているのは、周囲を取り囲んでいる女冒険者達に向かってだ。
何か一方的にルールを破る様で申し訳ないのだが、何故か彼女達は蔓のどストライクのようで、蔓はさっきからブンブンと大喜びしている。
「ぎゃはははは、こら、卑怯、あはははは、ひー」
さっきの掏り達の時もそうだったのだが、ここのところの禁欲生活で、蔓も随分溜まっていたらしい。
トリフェラスさんが身構える前に、問答無用で、蔓が周囲の女性達も含めて襲い掛かってしまった。
「きゃははは、何、これ、きゃはははは」
「いやー、あははは、いひひひひ」
「何だ、あははは、きゃははは、やめてー」
「うわっ、いや、あはははは、やめて、いひひひひ」
「あはははは、逃げろ、きゃははははは、苦しい」
逃げようとする女性達も、足を取られて引き摺り込まれる。
何が起こっているか解らず、戦いの女神団のお姉さん方は、皆パニックになっている。
しばらくしてから静かになった、
全員口から泡を吹いて気絶している。
野次馬達も、何が起こっているのか解らず、唖然としている。
野次馬の中に、彼女達の宿を知っている人がいたので、案内して貰って送り届けることにした。
「こらタケミチ、やり過ぎだぞ」
「すいません」
蔓は、大満足だったようで、ユラユラしている。
「今の何だったんだ」
「さー、良く解らん」
最後の四人を担ぎあげたとき、野次馬が不思議そうに話していた。
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