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神様になろう!編
俺とおっさんのカーニバル
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ガイアはまさか自分のところまで俺がたどり着くとは思っていなかったのか、表情だけではなく全身にも動揺が見られ、固まって動けなくなっている。
しかしあと数mで俺の手が届くというところで、ガイアは何かに気づいたように突然それまでとはガラリと表情を変え、口の端を吊り上げて叫んだ。
「アルティメットファイナリュオメギャオーヴァードライビュイン本八幡ぁ!!」
噛みすぎだろ。
俺にいくつも惑星を破壊されたガイアは、気が付けばファイオメの発動条件である、自分の惑星を一定割合破壊されるという条件を満たしていた。
ただでさえ残りHPで大分差をつけられてしまっている俺は、相手にファイオメを発動されてしまうと致命的に不利だ。敗北はほぼ確実になる。
しかし、ファイオメは発動しなかった。
これは後から知ったことなんだけど、ファイオメはスキル名の発声を間違えると発動しないらしい。そして、ファイオメの正式名称はアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡だ。
そう、噛み噛みのガイアの発声では、スキルを発動できなかった。神だけに。やかましいわ。
ガイアの顔が焦りで歪む。
俺はガイアとの間に存在する最後の空間を駆け抜けると、その歪んでいる顔に何発も拳をぶち込んだ。気づけば俺の目の前には、戦闘の終了と俺の勝利を告げる、「\(^o^)/」の文字が表示されていた。
戦闘が終わるとすぐにロビーに転送される。すると、転送前も割と近くにいたガイアという変なキャラはずんずんと俺のところに迫ってきて話しかけてきた。
「よう、兄貴には世話になってるぜ。なかなかやるじゃねえか。ただまあ実際の神は惑星をぶつけたり拳で破壊したりしないから、このゲームで強いって言っても?実際の神の仕事には?何の役にも立たないけどね?」
負け惜しみなのかなんなのか、男はそんな良くわからないことを言ってくる。
「兄貴とは知り合いなんですか?」
「ああ。あいつとは遊び仲間みたいなもんさ。中々に楽しませてもらってるよ」
兄貴のやつ、最近はこんな変なのとつるんでるのか……。心配になってきたな。今度俺も構ってやろう。
「ま、兄貴によろしくな。それじゃ」
ガイアは歩いて去っていった。
あれ?そういえば、あいつなんで俺に兄貴がいるって知ってたんだ?ていうか俺のリアルを知ってるみたいな感じだったな。こわっ。
少したつと、一回戦のもう一方の試合、つまりマリンとおっさんの試合も終わったらしく、二人がロビーに転送されてきた。
しかし、ロビーに現れたマリンのキャラ、アンデルセン東郷の様子がどこかおかしい。いや、もうこのゲームの初期設定になっている古代ギリシャ人みたいなアバターが既におかしいといえばおかしいんだけど、そういう話じゃなくて、何か怖いものをみたような、今すぐにでもログアウトしたがっているような、そんな表情を浮かべている。
「アンデルセン東郷、どうしたんだ?何かあったのか?」
「リム君……」
マリンは、俺に気づいてこちらを振り向いた。
「ごめんね……私……負けちゃって……約束、守れなくなっちゃった」
悲しそうに俯いているが、アンデルセン東郷というムキムキのマッスル男アバターでは何かのフリかと思ってしまう。そうじゃない。負けた?マリンが?
「負けたって……お前が?破壊神・紅に?」
思わず俺はそんな当たり前の質問をしてしまう。
「うん……気を付けて……あの人は……」
「そこまでだよ」
マリンの声を遮った主は、破壊神・紅こと俺の最寄のコンビニで店長とミリーの父親をやっているおっさんだった。今更だけどハゲで中年太りをしている。絶対にリアルアバターにしない方が良かったと思うけど、今はそれは置いておく。
「あまり僕の情報をリム君に教えるのはマナー違反じゃないのかな?」
俺にあの手この手を使ってフレンド登録を迫ってきたのもマナー違反だと思うんだけど。
「さあリム君、次は私との決勝戦だね。私が勝ったら君にはリアルフレンド登録をしてもらうから覚悟しておいてね」
何かもう普通に怖い。何でこのおっさんこんなに必死なの?
相変わらずリアルフレンド登録の意味はわからないものの、マリンがやられたからには俺は引き下がれない。
「いいですよ、その代わり俺が勝ったら……」
「勝ったら?」
そこで俺は意を決して願いを述べた。
「俺とのフレンド登録を解除してもらいます」
「な、何だって……」
店長は後ずさる。顔面は蒼白だ。
「な、何でそんなひどいことを言うんだよぉ!!わかった!そこの泥棒猫に何か言われたんだね!?そうさ!そうに決まってる!いや、泥棒猫っていうより泥棒古代ギリシャ人かな!ははっ!!」
あ、やっぱこの初期アバターって古代ギリシャ人だったんだ。
「とにかく……俺もあなたとのリアルフレンド登録というリスクを背負うのですから、それぐらいは当然でしょう。それとも、俺に勝てる自信がないんですか?」
俺はわざと挑発するように言った。
「そんなわけないだろう?クックック……私の必殺技の前では全てのプレイヤーは例外なく、コンビニのドレッシング付きのサラダを買うときに、それだけじゃ足りないかと思って一緒に買っておいた20円のドレッシングに過ぎない……」
コンビニのサラダには大きく分けて二種類ある。ドレッシングが付いているタイプと付いていないタイプだ。その内、ドレッシングが付いているタイプのサラダを買うときに、濃い味付けが好きな人なんかは足りないと思って更に20円の小分けにされたドレッシングを買ったりするわけなんだけど、いざ食べるときに「これドレッシングかけすぎたかな……」と思ってしまうことがたまにあるのだ。
恐らくおっさんは、この場合のドレッシングを買う必要のなかった不要なものだと言いたいのだろう。しかし、俺はそうは思わない。仮にそのときには必要がなかったものだとしても、買ったのは自分であり、問題があるのは自分自身なんだ。ドレッシング自体には罪などあるはずもなく、むしろ俺たちの充実したコンビニサラダライフの手助けをしてくれている。それを、不要なもの扱いというのは傲慢とも言えるのではないだろうか。
段々と何の話をしているのかわからなくなってきたけど、俺はこのおっさんに本当に大切なことは何かを教えてやらなければいけない気がしている。
「俺は付け足しで買った20円のドレッシングにはいつも助けられてるぜ。だからな……」
俺は、しっかり前を向いて胸を張り、おっさんの目を見ながら言った。
「俺が正しい20円ドレッシングの使い方を教えてやるよ」
その言葉とほぼ同時に、マリンの「何言ってんだこいつら」という視線を受けながら、俺とおっさんは対人戦用の宇宙空間へと転送されていく。
宇宙空間へと移動した俺を待ち受けていたのは、恐るべき光景だった。
この日のためにプレイ時間のほぼ全てを宇宙の育成に注ぎ込んできた俺の惑星の数は、一万を超えている。これは、現役プレイヤーの中でも上位に入るほどの数なはずだった。
しかし、今俺の目の前に展開されている破壊神・紅の惑星の数は、その一万ですらも少ないと思えるほどのものだ。一体これはどうなっているのか。
そのとき、遥か向こうで米粒ほどの大きさになっている破壊神・紅が俺に話しかけてきた。まだ戦闘が開始するぎりぎり前なので、試合前にいた空間の距離感が有効に働いているらしい。
「はっはっは!!リム君よ、驚いたかい?これが私の惑星群、『妻と娘と過ごしたはずの、今はもう届かない優しい日々の思い出たち』だ!!」
重い重い。何でそんな重い名前にしたんだよ。
「これだけの惑星を一体どうやって……」
そこまで言いかけて、俺はその可能性に思い当たった。そう、やつは確か……。
「気づいたかい?そうだよ!RMTさ!ゲーム内マネーを、そして仕事に行っている間にも育成代行を!私はありったけの小遣いをつぎ込んで惑星を育てあげた!もはや私を止められるものなどどこにもいないのだよ!!」
何てやつだ……。
「さあ!始めよう!私とリム君のカーニバルを!!!!」
試合開始を告げるアナウンスと共に文字が浮かび上がる。
「コスモファイト。レディ……」
「GO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ビックリマークの数がまた更に増えているが、もう慣れたもの。俺は何ら動揺することなく、惑星を順調におっさんの惑星群に仕掛けていく。
しかし、案の定というべきか、おっさんの惑星群は数で遥かに俺を上回っているにも関わらず一つ一つがしっかり育っていて、強い。まるで付け入る隙が無い。俺の惑星群は、目の前で次々に砕け散っていく。
とはいえ、ここまではまあ想定の範囲内だ。俺よりも宇宙を育成してるやつぐらいいるとは思っていたし、ガイアだって単純に宇宙だけを見れば俺よりも育ってはいた。やつらは俺よりもプレイ時間は多いはずだ。
俺にはアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡がある。対人限定スキルも全てレベルマックスだし、むしろ負けることを前提として如何に逆転するかを考えてやってきた。そのためのシステム外スキル『惑星粉砕』だって身に付けている。
それから時間が経過していくと、想定より早かったものの、俺側の惑星の数はファイオメが使えるほどにまで削られていた。俺は、待ってましたとばかりにスキルを発動させる。
「アルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡!!!!」
しかし、逆転のスキルを発動され、すいすいと惑星を破壊し避ける俺の姿を見てもまだ、おっさんは動揺を見せることがない。俺はその様子を見て何か嫌なものを感じ取っていた。
そして、そのときはやってくる。おっさんは不敵な笑みを浮かべて、聞いたこともないスキル名を発声する。
「アルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡返し!!!!」
次の瞬間、未だに一万を超える数を誇る惑星群が、一斉に俺に襲い掛かった。
しかしあと数mで俺の手が届くというところで、ガイアは何かに気づいたように突然それまでとはガラリと表情を変え、口の端を吊り上げて叫んだ。
「アルティメットファイナリュオメギャオーヴァードライビュイン本八幡ぁ!!」
噛みすぎだろ。
俺にいくつも惑星を破壊されたガイアは、気が付けばファイオメの発動条件である、自分の惑星を一定割合破壊されるという条件を満たしていた。
ただでさえ残りHPで大分差をつけられてしまっている俺は、相手にファイオメを発動されてしまうと致命的に不利だ。敗北はほぼ確実になる。
しかし、ファイオメは発動しなかった。
これは後から知ったことなんだけど、ファイオメはスキル名の発声を間違えると発動しないらしい。そして、ファイオメの正式名称はアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡だ。
そう、噛み噛みのガイアの発声では、スキルを発動できなかった。神だけに。やかましいわ。
ガイアの顔が焦りで歪む。
俺はガイアとの間に存在する最後の空間を駆け抜けると、その歪んでいる顔に何発も拳をぶち込んだ。気づけば俺の目の前には、戦闘の終了と俺の勝利を告げる、「\(^o^)/」の文字が表示されていた。
戦闘が終わるとすぐにロビーに転送される。すると、転送前も割と近くにいたガイアという変なキャラはずんずんと俺のところに迫ってきて話しかけてきた。
「よう、兄貴には世話になってるぜ。なかなかやるじゃねえか。ただまあ実際の神は惑星をぶつけたり拳で破壊したりしないから、このゲームで強いって言っても?実際の神の仕事には?何の役にも立たないけどね?」
負け惜しみなのかなんなのか、男はそんな良くわからないことを言ってくる。
「兄貴とは知り合いなんですか?」
「ああ。あいつとは遊び仲間みたいなもんさ。中々に楽しませてもらってるよ」
兄貴のやつ、最近はこんな変なのとつるんでるのか……。心配になってきたな。今度俺も構ってやろう。
「ま、兄貴によろしくな。それじゃ」
ガイアは歩いて去っていった。
あれ?そういえば、あいつなんで俺に兄貴がいるって知ってたんだ?ていうか俺のリアルを知ってるみたいな感じだったな。こわっ。
少したつと、一回戦のもう一方の試合、つまりマリンとおっさんの試合も終わったらしく、二人がロビーに転送されてきた。
しかし、ロビーに現れたマリンのキャラ、アンデルセン東郷の様子がどこかおかしい。いや、もうこのゲームの初期設定になっている古代ギリシャ人みたいなアバターが既におかしいといえばおかしいんだけど、そういう話じゃなくて、何か怖いものをみたような、今すぐにでもログアウトしたがっているような、そんな表情を浮かべている。
「アンデルセン東郷、どうしたんだ?何かあったのか?」
「リム君……」
マリンは、俺に気づいてこちらを振り向いた。
「ごめんね……私……負けちゃって……約束、守れなくなっちゃった」
悲しそうに俯いているが、アンデルセン東郷というムキムキのマッスル男アバターでは何かのフリかと思ってしまう。そうじゃない。負けた?マリンが?
「負けたって……お前が?破壊神・紅に?」
思わず俺はそんな当たり前の質問をしてしまう。
「うん……気を付けて……あの人は……」
「そこまでだよ」
マリンの声を遮った主は、破壊神・紅こと俺の最寄のコンビニで店長とミリーの父親をやっているおっさんだった。今更だけどハゲで中年太りをしている。絶対にリアルアバターにしない方が良かったと思うけど、今はそれは置いておく。
「あまり僕の情報をリム君に教えるのはマナー違反じゃないのかな?」
俺にあの手この手を使ってフレンド登録を迫ってきたのもマナー違反だと思うんだけど。
「さあリム君、次は私との決勝戦だね。私が勝ったら君にはリアルフレンド登録をしてもらうから覚悟しておいてね」
何かもう普通に怖い。何でこのおっさんこんなに必死なの?
相変わらずリアルフレンド登録の意味はわからないものの、マリンがやられたからには俺は引き下がれない。
「いいですよ、その代わり俺が勝ったら……」
「勝ったら?」
そこで俺は意を決して願いを述べた。
「俺とのフレンド登録を解除してもらいます」
「な、何だって……」
店長は後ずさる。顔面は蒼白だ。
「な、何でそんなひどいことを言うんだよぉ!!わかった!そこの泥棒猫に何か言われたんだね!?そうさ!そうに決まってる!いや、泥棒猫っていうより泥棒古代ギリシャ人かな!ははっ!!」
あ、やっぱこの初期アバターって古代ギリシャ人だったんだ。
「とにかく……俺もあなたとのリアルフレンド登録というリスクを背負うのですから、それぐらいは当然でしょう。それとも、俺に勝てる自信がないんですか?」
俺はわざと挑発するように言った。
「そんなわけないだろう?クックック……私の必殺技の前では全てのプレイヤーは例外なく、コンビニのドレッシング付きのサラダを買うときに、それだけじゃ足りないかと思って一緒に買っておいた20円のドレッシングに過ぎない……」
コンビニのサラダには大きく分けて二種類ある。ドレッシングが付いているタイプと付いていないタイプだ。その内、ドレッシングが付いているタイプのサラダを買うときに、濃い味付けが好きな人なんかは足りないと思って更に20円の小分けにされたドレッシングを買ったりするわけなんだけど、いざ食べるときに「これドレッシングかけすぎたかな……」と思ってしまうことがたまにあるのだ。
恐らくおっさんは、この場合のドレッシングを買う必要のなかった不要なものだと言いたいのだろう。しかし、俺はそうは思わない。仮にそのときには必要がなかったものだとしても、買ったのは自分であり、問題があるのは自分自身なんだ。ドレッシング自体には罪などあるはずもなく、むしろ俺たちの充実したコンビニサラダライフの手助けをしてくれている。それを、不要なもの扱いというのは傲慢とも言えるのではないだろうか。
段々と何の話をしているのかわからなくなってきたけど、俺はこのおっさんに本当に大切なことは何かを教えてやらなければいけない気がしている。
「俺は付け足しで買った20円のドレッシングにはいつも助けられてるぜ。だからな……」
俺は、しっかり前を向いて胸を張り、おっさんの目を見ながら言った。
「俺が正しい20円ドレッシングの使い方を教えてやるよ」
その言葉とほぼ同時に、マリンの「何言ってんだこいつら」という視線を受けながら、俺とおっさんは対人戦用の宇宙空間へと転送されていく。
宇宙空間へと移動した俺を待ち受けていたのは、恐るべき光景だった。
この日のためにプレイ時間のほぼ全てを宇宙の育成に注ぎ込んできた俺の惑星の数は、一万を超えている。これは、現役プレイヤーの中でも上位に入るほどの数なはずだった。
しかし、今俺の目の前に展開されている破壊神・紅の惑星の数は、その一万ですらも少ないと思えるほどのものだ。一体これはどうなっているのか。
そのとき、遥か向こうで米粒ほどの大きさになっている破壊神・紅が俺に話しかけてきた。まだ戦闘が開始するぎりぎり前なので、試合前にいた空間の距離感が有効に働いているらしい。
「はっはっは!!リム君よ、驚いたかい?これが私の惑星群、『妻と娘と過ごしたはずの、今はもう届かない優しい日々の思い出たち』だ!!」
重い重い。何でそんな重い名前にしたんだよ。
「これだけの惑星を一体どうやって……」
そこまで言いかけて、俺はその可能性に思い当たった。そう、やつは確か……。
「気づいたかい?そうだよ!RMTさ!ゲーム内マネーを、そして仕事に行っている間にも育成代行を!私はありったけの小遣いをつぎ込んで惑星を育てあげた!もはや私を止められるものなどどこにもいないのだよ!!」
何てやつだ……。
「さあ!始めよう!私とリム君のカーニバルを!!!!」
試合開始を告げるアナウンスと共に文字が浮かび上がる。
「コスモファイト。レディ……」
「GO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ビックリマークの数がまた更に増えているが、もう慣れたもの。俺は何ら動揺することなく、惑星を順調におっさんの惑星群に仕掛けていく。
しかし、案の定というべきか、おっさんの惑星群は数で遥かに俺を上回っているにも関わらず一つ一つがしっかり育っていて、強い。まるで付け入る隙が無い。俺の惑星群は、目の前で次々に砕け散っていく。
とはいえ、ここまではまあ想定の範囲内だ。俺よりも宇宙を育成してるやつぐらいいるとは思っていたし、ガイアだって単純に宇宙だけを見れば俺よりも育ってはいた。やつらは俺よりもプレイ時間は多いはずだ。
俺にはアルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡がある。対人限定スキルも全てレベルマックスだし、むしろ負けることを前提として如何に逆転するかを考えてやってきた。そのためのシステム外スキル『惑星粉砕』だって身に付けている。
それから時間が経過していくと、想定より早かったものの、俺側の惑星の数はファイオメが使えるほどにまで削られていた。俺は、待ってましたとばかりにスキルを発動させる。
「アルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡!!!!」
しかし、逆転のスキルを発動され、すいすいと惑星を破壊し避ける俺の姿を見てもまだ、おっさんは動揺を見せることがない。俺はその様子を見て何か嫌なものを感じ取っていた。
そして、そのときはやってくる。おっさんは不敵な笑みを浮かべて、聞いたこともないスキル名を発声する。
「アルティメットファイナルオメガオーヴァードライブイン本八幡返し!!!!」
次の瞬間、未だに一万を超える数を誇る惑星群が、一斉に俺に襲い掛かった。
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