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槇島城の戦い~高屋城の戦い
長篠の戦いへ
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武田が三河に侵攻して来た。という報せを受けた織田軍は、急遽軍を引き返して家康の救援へと向かうことになった。といっても、正確にはまだ家康も長篠城にはいない。救援に向かう家康と合流する。
そして俺たちは、合流地点である三河の岡崎城へと到着した。
真っ先に織田軍を出迎えてくれたのは、いつもの爽やかな笑顔だった。
「ようこそおいでくださいました」
「家康殿、お変わりありませんか」
「六助殿こそ」
お決まりの挨拶もそこそこに俺、六助、家康、半蔵という少数での軍議的な世間話が開催される。
「結局、武田信玄は生きていたということなのでしょうか?」
想定よりも武田の再侵攻が早かったからだろう、開口一番に六助が尋ねたのはそんなことだった。家康はすぐに首を横に振った。
「わかりません」
「半蔵殿の忍び部隊でも掴めぬとは」
「武田の家臣たちによって情報が隠ぺいされているようです。ですが先日も申し上げた通り、そのことから考えても信玄に何かあったのは間違いないでしょう」
「問題はそれが何か、ですか」
六助はしばし顎に手を当てながら唸り声をあげていたけど、突然に目を見開きながら勢いよく顔をあげた。
「もしや、彼女が出来た……!?」
「別に隠すほどのことではないでしょう。それで三河から突如撤退したというのも訳がわかりませんし」
さすがの家康も苦笑気味だ。
「いや、戦から離れて春を謳歌しているのやも」
「春の為に戦から離れるような武士には、女性もなびいてはくれませんよ」
「それもそうですか」
「とにかく武田軍は再び動き出し、長篠城を攻めている。それが事実です」
そこで家康が表情を引き締める。
「そうですね、こちらも三万という兵を集めて参りました」
「かたじけない。我々は八千しか集めることが出来なかったというのに」
家康と半蔵は、本当に申し訳なさそうな表情をしている。
「仕方のないことです。こういう時の為の友人、そして同盟なのですから気になさらないでください」
「ありがとうございます」
「ニンニン……」
「万が一信玄が健在のまま戦場に立つというのなら、万全の態勢で戦に臨む必要がありますからね。欲を言えばもっと数を増やしたかったところです」
「そしてもし信玄が不在だとしたら……」
「あの武田を滅ぼす絶好の機会、ということになりますな」
六助と家康、両者が口の端を吊り上げ意地の悪そうな笑みを浮かべた。しかしすぐに家康は自らを戒めるかのように咳ばらいをする。
「まあ、信玄不在だから勝てる、というものでもございませんが」
「武田家の強さは信玄の采配による部分が大きいのでは」
「いえいえ、武田の騎馬隊は日の本一の強さと言われておりますし、何より家臣団の中でも特に馬場信房、内藤昌豊、山県昌景、高坂昌信の四名は名将と謳われております」
「その辺りは私も存じております」
「さらに私は三方ヶ原での大敗がありますので……織田家の力をお借りしてでも雪辱を晴らしたい所存にございます」
「必ずや共に武田を討ち取りましょう」
握手を交わす織田と徳川の代表者たち。まあ、数次第なら向こうが撤退することもありえるし、本格的な戦闘になるって決まったわけじゃないけどな。
そこで半蔵が突然「ニンニン……」と言いながら刀の柄に手をかけ、襖の方を振り向いた。すると少し間を空けて襖の向こうから声が響く。
「司寿様、徳川様、失礼致します」
「うちの隊の者ですね」
そう家康に言ってから、六助は襖に向けて声をかける。
「どうした」
するとすすっと、襖が静かに開かれた。
「奥平貞昌の家臣、鳥居強右衛門と名乗る者が来ております。いわく長篠城から援軍の要請をしに参ったと。どうなされますか?」
「とりいすねえもん……ご存知ですか?」
話を振られた家康は腕を組み、口を開いた。
「奥平の家臣……確かにその様な者がいた気はしますが。半蔵、どうだ?」
「ニンニン……」
「顔は覚えているか?」
「ニンニン……」
半蔵がこくりとうなずく。どうやら顔も名前も知っているらしい。それを見た家康が六助と目を合わせて首肯すると、六助が家臣に言いつけた。
「では、その者をここへ」
家臣が襖を閉めて立ち去りしばらくすると、またも襖の向こうから声が聞こえてきた。
「失礼します。奥平貞昌の家臣、鳥居強右衛門にございます」
「入れ」
家康が指示を出すと同時に、襖が静かながらもやや力強く開けられた。そこからは丁寧に一礼をする一人のちょんまげ。半蔵が家康に向けて「ニンニン……」と首肯する。本人で間違いないということだろう。
強右衛門は部屋に入るなり、前置きもなく早速話を切り出した。
「私は貞昌様の命により、夜の闇に紛れ川に潜り、どうにか武田の警戒線を突破して参りました」
「何と。文字通りの決死行ではないか」
「はい。死を覚悟の上で、何としても援軍が必要であることを家康様にお伝えしようと」
六助と家康が目を合わせてうなずく。
「それなら心配は無用。私の援軍に加えて、こちらの織田家の方々も三万という大軍を引き連れて来て下さったからな」
「な、何と。かたじけのうございます」
強右衛門は泣きそうな顔で土下座みたいな礼をした。まあ俺と六助がいる時点で感づいてはいただろうけど、直に聞くまでは確信が持てないのと、自分から「援軍に来てくださるのですね!?」とは言えなかったのだろう。
ようやく安堵し、袖で涙を拭った強右衛門に、家康は尋ねる。
「軽く状況を把握しておきたいのだが、戦況はそんなに悪いのか?」
「はい。兵糧蔵も消失し、数日の内に落城は必至かと」
「元々あそこの守備には五百ほどしか兵がいなかったからな。是非もなし」
「明日にはここを発つ予定だったのだが、持ちそうか?」
六助に確認をされた強右衛門は笑顔で、
「はい、必ずや持ちこたえて……」
と言ったかと思えばすぐに表情を引き締め、
「いえ、持ちこたえさせてご覧にいれます」
そんな風につぶやいた。その瞳からは揺るがない決意と悲愴な覚悟が垣間見えて何だか危なっかしい気がしたけど、どう声をかけていいものかわからなかった。こいつと話したことがないし、ちょっと臭かったからだ。
家康もそれを読み取ったのか、笑顔で強衛門に話しかける。
「せっかく生きてここまで来られたのだ。お主はそれ以上無理をせぬようにな」
「もったいなきお言葉、恐悦至極にございます」
「これから長篠城に戻るのか?」
「はい。この朗報を一刻も早く伝える所存に」
「ぬう。非常に危険なことだが……長篠城の士気と、お主の覚悟を想えば止めるわけにもいくまい。頼んだぞ」
「ありがとうございます」
そう言って強右衛門が腰を浮かした瞬間、家康は再度彼を引き留める。
「そうだ。行く前にプニモフを賜っていきなさい」
「私如きが、よろしいのですか?」
「命がけでここまで来て、また戻ろうというのだ。賜る資格は存分に持ち合わせているだろう」
「もったいなきお言葉。それでは……」
強右衛門は再度膝をついてこちらに寄り、俺の右前足を取った。
「ふおおぉぉ……これが噂に聞くプニプニ……」
そうして本当に少しだけプニプニを堪能したのち、強右衛門は死地へと舞い戻っていく。その大きな背中は一介の武士のそれとはまた違った何かのように見えた。
そして俺たちは、合流地点である三河の岡崎城へと到着した。
真っ先に織田軍を出迎えてくれたのは、いつもの爽やかな笑顔だった。
「ようこそおいでくださいました」
「家康殿、お変わりありませんか」
「六助殿こそ」
お決まりの挨拶もそこそこに俺、六助、家康、半蔵という少数での軍議的な世間話が開催される。
「結局、武田信玄は生きていたということなのでしょうか?」
想定よりも武田の再侵攻が早かったからだろう、開口一番に六助が尋ねたのはそんなことだった。家康はすぐに首を横に振った。
「わかりません」
「半蔵殿の忍び部隊でも掴めぬとは」
「武田の家臣たちによって情報が隠ぺいされているようです。ですが先日も申し上げた通り、そのことから考えても信玄に何かあったのは間違いないでしょう」
「問題はそれが何か、ですか」
六助はしばし顎に手を当てながら唸り声をあげていたけど、突然に目を見開きながら勢いよく顔をあげた。
「もしや、彼女が出来た……!?」
「別に隠すほどのことではないでしょう。それで三河から突如撤退したというのも訳がわかりませんし」
さすがの家康も苦笑気味だ。
「いや、戦から離れて春を謳歌しているのやも」
「春の為に戦から離れるような武士には、女性もなびいてはくれませんよ」
「それもそうですか」
「とにかく武田軍は再び動き出し、長篠城を攻めている。それが事実です」
そこで家康が表情を引き締める。
「そうですね、こちらも三万という兵を集めて参りました」
「かたじけない。我々は八千しか集めることが出来なかったというのに」
家康と半蔵は、本当に申し訳なさそうな表情をしている。
「仕方のないことです。こういう時の為の友人、そして同盟なのですから気になさらないでください」
「ありがとうございます」
「ニンニン……」
「万が一信玄が健在のまま戦場に立つというのなら、万全の態勢で戦に臨む必要がありますからね。欲を言えばもっと数を増やしたかったところです」
「そしてもし信玄が不在だとしたら……」
「あの武田を滅ぼす絶好の機会、ということになりますな」
六助と家康、両者が口の端を吊り上げ意地の悪そうな笑みを浮かべた。しかしすぐに家康は自らを戒めるかのように咳ばらいをする。
「まあ、信玄不在だから勝てる、というものでもございませんが」
「武田家の強さは信玄の采配による部分が大きいのでは」
「いえいえ、武田の騎馬隊は日の本一の強さと言われておりますし、何より家臣団の中でも特に馬場信房、内藤昌豊、山県昌景、高坂昌信の四名は名将と謳われております」
「その辺りは私も存じております」
「さらに私は三方ヶ原での大敗がありますので……織田家の力をお借りしてでも雪辱を晴らしたい所存にございます」
「必ずや共に武田を討ち取りましょう」
握手を交わす織田と徳川の代表者たち。まあ、数次第なら向こうが撤退することもありえるし、本格的な戦闘になるって決まったわけじゃないけどな。
そこで半蔵が突然「ニンニン……」と言いながら刀の柄に手をかけ、襖の方を振り向いた。すると少し間を空けて襖の向こうから声が響く。
「司寿様、徳川様、失礼致します」
「うちの隊の者ですね」
そう家康に言ってから、六助は襖に向けて声をかける。
「どうした」
するとすすっと、襖が静かに開かれた。
「奥平貞昌の家臣、鳥居強右衛門と名乗る者が来ております。いわく長篠城から援軍の要請をしに参ったと。どうなされますか?」
「とりいすねえもん……ご存知ですか?」
話を振られた家康は腕を組み、口を開いた。
「奥平の家臣……確かにその様な者がいた気はしますが。半蔵、どうだ?」
「ニンニン……」
「顔は覚えているか?」
「ニンニン……」
半蔵がこくりとうなずく。どうやら顔も名前も知っているらしい。それを見た家康が六助と目を合わせて首肯すると、六助が家臣に言いつけた。
「では、その者をここへ」
家臣が襖を閉めて立ち去りしばらくすると、またも襖の向こうから声が聞こえてきた。
「失礼します。奥平貞昌の家臣、鳥居強右衛門にございます」
「入れ」
家康が指示を出すと同時に、襖が静かながらもやや力強く開けられた。そこからは丁寧に一礼をする一人のちょんまげ。半蔵が家康に向けて「ニンニン……」と首肯する。本人で間違いないということだろう。
強右衛門は部屋に入るなり、前置きもなく早速話を切り出した。
「私は貞昌様の命により、夜の闇に紛れ川に潜り、どうにか武田の警戒線を突破して参りました」
「何と。文字通りの決死行ではないか」
「はい。死を覚悟の上で、何としても援軍が必要であることを家康様にお伝えしようと」
六助と家康が目を合わせてうなずく。
「それなら心配は無用。私の援軍に加えて、こちらの織田家の方々も三万という大軍を引き連れて来て下さったからな」
「な、何と。かたじけのうございます」
強右衛門は泣きそうな顔で土下座みたいな礼をした。まあ俺と六助がいる時点で感づいてはいただろうけど、直に聞くまでは確信が持てないのと、自分から「援軍に来てくださるのですね!?」とは言えなかったのだろう。
ようやく安堵し、袖で涙を拭った強右衛門に、家康は尋ねる。
「軽く状況を把握しておきたいのだが、戦況はそんなに悪いのか?」
「はい。兵糧蔵も消失し、数日の内に落城は必至かと」
「元々あそこの守備には五百ほどしか兵がいなかったからな。是非もなし」
「明日にはここを発つ予定だったのだが、持ちそうか?」
六助に確認をされた強右衛門は笑顔で、
「はい、必ずや持ちこたえて……」
と言ったかと思えばすぐに表情を引き締め、
「いえ、持ちこたえさせてご覧にいれます」
そんな風につぶやいた。その瞳からは揺るがない決意と悲愴な覚悟が垣間見えて何だか危なっかしい気がしたけど、どう声をかけていいものかわからなかった。こいつと話したことがないし、ちょっと臭かったからだ。
家康もそれを読み取ったのか、笑顔で強衛門に話しかける。
「せっかく生きてここまで来られたのだ。お主はそれ以上無理をせぬようにな」
「もったいなきお言葉、恐悦至極にございます」
「これから長篠城に戻るのか?」
「はい。この朗報を一刻も早く伝える所存に」
「ぬう。非常に危険なことだが……長篠城の士気と、お主の覚悟を想えば止めるわけにもいくまい。頼んだぞ」
「ありがとうございます」
そう言って強右衛門が腰を浮かした瞬間、家康は再度彼を引き留める。
「そうだ。行く前にプニモフを賜っていきなさい」
「私如きが、よろしいのですか?」
「命がけでここまで来て、また戻ろうというのだ。賜る資格は存分に持ち合わせているだろう」
「もったいなきお言葉。それでは……」
強右衛門は再度膝をついてこちらに寄り、俺の右前足を取った。
「ふおおぉぉ……これが噂に聞くプニプニ……」
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