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しばらくの間、解放の余韻にぼんやりと放心状態でいた駈だったが。
意識が戻ってきてすぐ、目の前の男の頭をぱしりと叩いた。
「いった!」
「いった、じゃない! お前、どこが『優しくする』だ!」
「……ごめん」
またシュン、としょげた英だったが、その姿はさっき見せたものとは天と地ほど違っていたので、駈はまったく取り合わないどころか、凍てつきそうな視線を向けてやった。
「ごめんって、駈~」
機嫌を取ろうと引っ付いてくる英を押しのけ、立ち上がろうと身体を起こしてぎくりとする。
水分を過剰に吸わされたパンツが、ぐちょりと嫌な音を立てた。
「……」
「なに、駈……もしかして立てないの?」
英は真っ赤になってむっつりと黙っている駈を見るなり、嬉々とした声を上げる。
駈はついカッとなって、隣でにやける英を睨み付けた。
「立てるっての! 立てる、けど……」
また余計な事を言いそうになり、駈は途中で言葉を切った。
……残念ながら、既に後の祭りだったが。
英はきらりと目を輝かせると。
「あ、そういうことね」
突然立ち上がったと思うと、すっと駈の傍へとしゃがみ込む。
そして、その膝裏と背中に手をやると、一気に立ち上がった。
「わっ!」
いきなり目線が高くなり、駈は慌ててその首へとしがみ付く。
「ちょっ、危ないって! 下ろせ!!」
だが、英は聞く耳も持たず、迷いなくある場所へと進んでいく。
そして……その目的地が分かった瞬間、駈はハッと真上を仰いだ。
「おい、英……」
すると、英はまた「ごめん」と駈へと眉を下げる。
そして、その琥珀色の目に火傷しそうな欲を揺らめかせた。
「俺も結構……限界なんだ」
リビングと一続きのベッドルームは、やはり余計なものはなく、あるのはタンスなど収納系のものとベッドだけだった。
いつも寝起きしているそこにゆっくりと下ろされる。
ついで、ぎしり、とベッドが軋む音がする。
手を付いて半身を起こした駈の太腿を跨ぐように、英がシングルサイズのそこに乗り上げてくる。
駈は急に、ここからどうしたら良いのか分からなくなってしまった。
一体自分はどうしてしまったんだろう。遊びまくってきたわけでは決してないが、もじもじと照れるほど経験がないわけでもない。
さっきまでのふざけたやり取りが懐かしくなってしまうほど、駈は緊張でどうにかなってしまいそうだった。
今更もったいぶってどうする、と笑う声がする。
きっと、英だってそう思っているに違いない――
「駈」
その声に、ゆっくりと顔を上げる。
頬に、英の熱い手が触れる。
その手は駈を落ち着かせるように――そして、同じだけの緊張を伝えるように、しばらくその柔らかい曲線へと添えられていた。
「英……」
消え入りそうな声が二人の間に落ちる。
英は同じく硬直していた顔を緩めると、にっと白い歯を見せた。
「大丈夫だって」
この場には眩しすぎるほどのその笑顔は、ともすると暗闇へと進んでしまいがちな駈を引き戻してくれる、太陽のようだった。
駈はようやく、胸につかえていた息を吐き出す。
「……その自信、どこからくるんだよ」
その口調には、いつもの駈らしさが戻ってきていた。
呆れたような表情の駈に、英は「根拠は無いです」と正直に告げる。
だが……その後が最悪だった。
「でもさ、考えてもみてよ……いくら初めてだとして、自信のまるでない医者に注射されるのって、嫌じゃない?」
「…………」
「えっ、何か変なこと言った!?」
駈は微妙な顔で固まった。
(こいつ、分かってて言っているのか……?)
もし、英が純粋に例えとしてそれを使ったのだとすれば、意識し過ぎなのは駈の方な訳で、下手に論おうものならとんでもないブーメランになる。
「変なこと、っていうか……その例え、どうにかならなかったのかよ」
だから、慎重にそう探りを入れてみたのだが。
「あっ、お注射ってやつ? いやぁ、だって……ねぇ?」
今更照れた表情でちらちらと同意を求めてくる英に、駈はやっぱりな……と白けきった目を向けた。
「ぴったりだと思ったんだけど……ダメだった?」
「ダメも何も……オヤジ臭すぎるだろ」
その言葉に英は「そんなことないって!」と慌てている。駈はいよいよげんなりとした。
「今時AVでも言わないっての、そんなセリフ」
「いやいや、ロマンでしょ!?」
「いや、どこがだよ」
駈に一刀両断され、英は「マジか……」と額に手をやり項垂れている。
そんな男のつむじに向かって、駈は心の中だけでありがとう、と呟いた。
英の完璧な外見を台無しにするそのセンスは本当にどうかと思うが、この珍妙なやりとりのお陰で、随分身体に入っていた力が抜けたのは確かだった。
「英」
「ん? ……わっ!」
顔を上げた英の後頭部をぐっと引き寄せる。
そのまま上体を倒すと、バランスを崩した英が完全に駈へと乗り上げる形になった。
「ちょ、駈……っ」
目を白黒させる英のその唇に、駈は伸びあがってキスをする。
そして、その耳元に唇を当てると。
「なぁ、あんまりふざけてるとさ、萎えちゃうんじゃないか……ここが」
そう言って英の股間に指を這わせた。
「……っ!」
息を詰めて声を噛み殺した彼のそこは、そんな様子は微塵もなく、スラックスを突き破らんばかりに押し上げていた。
「駈、ダメだって……っ」
顔を赤らめ、苦しそうに駈を見つめる英。
凶器のようなブツに反して、その姿はあまりにも可愛らしい。
……そして、英のこんな姿を見られるのは、今は自分だけなのだ。
そう思うとつい、ふふっと声が漏れた。
「何だよ、駈……楽しそうじゃん」
見上げると、悔しそうに駈を見る英と目が合う。
「いや、何でも……んッ」
くすくすと笑っていた駈だったが、その口を慌てて閉じる。
その手が、すっかり湿りきったパンツへと掛っていた。
「あ、うそ、待っ……!」
だが、英の手はその言葉を無視して、ずるり、と駈の下半身からそれを取り去った。
意識が戻ってきてすぐ、目の前の男の頭をぱしりと叩いた。
「いった!」
「いった、じゃない! お前、どこが『優しくする』だ!」
「……ごめん」
またシュン、としょげた英だったが、その姿はさっき見せたものとは天と地ほど違っていたので、駈はまったく取り合わないどころか、凍てつきそうな視線を向けてやった。
「ごめんって、駈~」
機嫌を取ろうと引っ付いてくる英を押しのけ、立ち上がろうと身体を起こしてぎくりとする。
水分を過剰に吸わされたパンツが、ぐちょりと嫌な音を立てた。
「……」
「なに、駈……もしかして立てないの?」
英は真っ赤になってむっつりと黙っている駈を見るなり、嬉々とした声を上げる。
駈はついカッとなって、隣でにやける英を睨み付けた。
「立てるっての! 立てる、けど……」
また余計な事を言いそうになり、駈は途中で言葉を切った。
……残念ながら、既に後の祭りだったが。
英はきらりと目を輝かせると。
「あ、そういうことね」
突然立ち上がったと思うと、すっと駈の傍へとしゃがみ込む。
そして、その膝裏と背中に手をやると、一気に立ち上がった。
「わっ!」
いきなり目線が高くなり、駈は慌ててその首へとしがみ付く。
「ちょっ、危ないって! 下ろせ!!」
だが、英は聞く耳も持たず、迷いなくある場所へと進んでいく。
そして……その目的地が分かった瞬間、駈はハッと真上を仰いだ。
「おい、英……」
すると、英はまた「ごめん」と駈へと眉を下げる。
そして、その琥珀色の目に火傷しそうな欲を揺らめかせた。
「俺も結構……限界なんだ」
リビングと一続きのベッドルームは、やはり余計なものはなく、あるのはタンスなど収納系のものとベッドだけだった。
いつも寝起きしているそこにゆっくりと下ろされる。
ついで、ぎしり、とベッドが軋む音がする。
手を付いて半身を起こした駈の太腿を跨ぐように、英がシングルサイズのそこに乗り上げてくる。
駈は急に、ここからどうしたら良いのか分からなくなってしまった。
一体自分はどうしてしまったんだろう。遊びまくってきたわけでは決してないが、もじもじと照れるほど経験がないわけでもない。
さっきまでのふざけたやり取りが懐かしくなってしまうほど、駈は緊張でどうにかなってしまいそうだった。
今更もったいぶってどうする、と笑う声がする。
きっと、英だってそう思っているに違いない――
「駈」
その声に、ゆっくりと顔を上げる。
頬に、英の熱い手が触れる。
その手は駈を落ち着かせるように――そして、同じだけの緊張を伝えるように、しばらくその柔らかい曲線へと添えられていた。
「英……」
消え入りそうな声が二人の間に落ちる。
英は同じく硬直していた顔を緩めると、にっと白い歯を見せた。
「大丈夫だって」
この場には眩しすぎるほどのその笑顔は、ともすると暗闇へと進んでしまいがちな駈を引き戻してくれる、太陽のようだった。
駈はようやく、胸につかえていた息を吐き出す。
「……その自信、どこからくるんだよ」
その口調には、いつもの駈らしさが戻ってきていた。
呆れたような表情の駈に、英は「根拠は無いです」と正直に告げる。
だが……その後が最悪だった。
「でもさ、考えてもみてよ……いくら初めてだとして、自信のまるでない医者に注射されるのって、嫌じゃない?」
「…………」
「えっ、何か変なこと言った!?」
駈は微妙な顔で固まった。
(こいつ、分かってて言っているのか……?)
もし、英が純粋に例えとしてそれを使ったのだとすれば、意識し過ぎなのは駈の方な訳で、下手に論おうものならとんでもないブーメランになる。
「変なこと、っていうか……その例え、どうにかならなかったのかよ」
だから、慎重にそう探りを入れてみたのだが。
「あっ、お注射ってやつ? いやぁ、だって……ねぇ?」
今更照れた表情でちらちらと同意を求めてくる英に、駈はやっぱりな……と白けきった目を向けた。
「ぴったりだと思ったんだけど……ダメだった?」
「ダメも何も……オヤジ臭すぎるだろ」
その言葉に英は「そんなことないって!」と慌てている。駈はいよいよげんなりとした。
「今時AVでも言わないっての、そんなセリフ」
「いやいや、ロマンでしょ!?」
「いや、どこがだよ」
駈に一刀両断され、英は「マジか……」と額に手をやり項垂れている。
そんな男のつむじに向かって、駈は心の中だけでありがとう、と呟いた。
英の完璧な外見を台無しにするそのセンスは本当にどうかと思うが、この珍妙なやりとりのお陰で、随分身体に入っていた力が抜けたのは確かだった。
「英」
「ん? ……わっ!」
顔を上げた英の後頭部をぐっと引き寄せる。
そのまま上体を倒すと、バランスを崩した英が完全に駈へと乗り上げる形になった。
「ちょ、駈……っ」
目を白黒させる英のその唇に、駈は伸びあがってキスをする。
そして、その耳元に唇を当てると。
「なぁ、あんまりふざけてるとさ、萎えちゃうんじゃないか……ここが」
そう言って英の股間に指を這わせた。
「……っ!」
息を詰めて声を噛み殺した彼のそこは、そんな様子は微塵もなく、スラックスを突き破らんばかりに押し上げていた。
「駈、ダメだって……っ」
顔を赤らめ、苦しそうに駈を見つめる英。
凶器のようなブツに反して、その姿はあまりにも可愛らしい。
……そして、英のこんな姿を見られるのは、今は自分だけなのだ。
そう思うとつい、ふふっと声が漏れた。
「何だよ、駈……楽しそうじゃん」
見上げると、悔しそうに駈を見る英と目が合う。
「いや、何でも……んッ」
くすくすと笑っていた駈だったが、その口を慌てて閉じる。
その手が、すっかり湿りきったパンツへと掛っていた。
「あ、うそ、待っ……!」
だが、英の手はその言葉を無視して、ずるり、と駈の下半身からそれを取り去った。
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