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夜泣き
しおりを挟むあの後、お昼を食べ終わってゆっくりしている時、じいやが謝りに来た。大丈夫だよと、笑って見送った。
パパが戻ってきてからあっという間に2ヶ月経った。
パパが城を開ける前の日常が戻ってきている。パパやマドにーにの突撃訪問とか、ディリア達侍女による歩行練習とか。
パパは相変わらず忙しそうで、マドにーにも学校のお勉強や訓練で大変そう。合間を縫って会いに来てくれるのが本当に嬉しい。
そういえば、マドにーに以外の兄弟に会ったことがない。てか会いに来てくれない。兄弟について私が聞かないから、ディリア達も話さない。
マドにーにの部屋へ行ったことは無いが、ディリアによると結構歩くらしい。たまたまとかではなく、他の兄弟の部屋も同じくらいの距離。そういえばパパの部屋も遠かった。
皇族一人一人に広い部屋が与えられていて、それぞれ部屋が遠いので偶然出会える確率は低い。
そもそも私は基本的に部屋から出ないし、運動は部屋の中か小さなお庭で事足りる。私が住む部屋も、普通に考えて大きすぎるから運動不足の心配なし。逆に過多だと思う。歩く時間を減らして欲しい。
つまり、兄弟達には会おうと思わないといつまで経っても会えないわけだ。少なくとも私が5歳になるまでは。
マドにーにとの出会いは奇跡と言えよう。
そういえば一度マドにーにに連れられて温室へ行ったが、あの時が初めての外だった。
使用人や騎士、魔法使い、その他色々な人達がそれぞれの建物で働き、暮らしている。
温室と言えば、偶然の出会いを引き起こしマドママに会った。温室って、皇族がよく来るのかな。
子供は5歳になると、神殿に行って魔力量と属性の確認を行う。これを祝福を授かるって言うんだけど、その祝福を授かったあとは、正式な皇族として社交界デビューをしなければならない。
私のお披露目パーティーみたいなものだから、多分皇族全員参加すると思う。
ちなみにこういう知識は、理解できないふりをしながら、なんでなんで? と可愛く聞き出すのがポイント。
顔を作ってふむふむしていると、侍女達はペラペラ喋ってくれるし、頑張って理解しようとしている私が可愛いのかチヤホヤしてくれる。一石二鳥。
「ふえっ、えええええん、」
困ったことが一つ。夜泣きが治らない。パパが帰ってきたら治まるだろうと私も、皆だって思っていたはず。
頻度は少なくなったが、3日に1回は自分の泣き声で目を覚ます。
赤ちゃん特有の夜泣きは1歳になる前に治まったのに、それとはまた違う夜泣きが再発。
原因はパパ不在の時、温室での出来事。
ママが私のせいで死んだ。そんな訳ないって自分に言い聞かせて、不安で、心細かった日々。パパって夢でも目が覚めても呼んだのに傍にはいなくて、凄く辛かった。
夜泣きが1番酷かった時、お城お抱えの医者が診察してくれた。ストレスに気をつけるように言われ、常に傍に人を置き、夜泣きで目覚めた時はココアやハーブティーを飲み、気持ちを落ち着かせること。
体ではなく心の問題なので、ゆっくり治しましょうと励ましてくれた。定期的に様子を見に来てくれている。
パパとマドにーには、夜泣きのせいでお昼寝が長くなったことを知っているのか、お昼寝の時に起こされたことは一度も無い。起こしてくれてもいいのに、私の顔だけ見たら、すぐに部屋を出ていくらしい。
「リフレシア様、大丈夫ですよ。傍におりますからね」
夜の付き添いは当番制になっている。本日の担当侍女が、心配そうに布団の上から胸をとんとんしてくれた。もう片方の手にはタオルが握られており、優しく涙を拭ってくれる。
落ち着いていくと、ほっとしたように笑ってくれた。
保温ができる急須のような魔道具から、ココアをコップに注ぎ、温度を確認したあと私の元に戻ってくる。
支えられながら起き上がると、コップを受け取り、こくこくと数口飲む。ほんわかと体が温まった。
コップを返すと、歯磨きカプセルを噛んでもう一度布団の中へ。
「あのね、あちたプリン食べたいの」
「ふふ、かしこまりました。料理長に美味しいプリンを頼んでおきますね」
「うんっ」
明日というか、日付変わって今日だけど、楽しみがあるってわくわくする。
侍女は私が眠るまで胸をポンポンと叩いてくれた。
その日、久しぶりに前世の夢を見た。
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