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しおりを挟むゲームの中でのロゼンとヒロインの出会いはこうだ。
人気の少ない図書館の裏庭のベンチで私を待っていたロゼンは、その時ついうたた寝をしてしまう。そこにたまたま通りかかったヒロインが自分の制服の上着をかけてあげる。
ロゼンは上着のポケットに入っていた名前入りハンカチでヒロインの名前を知り、探して上着を返す。
そこから始まる──ってやつ。
極力ロゼンを待たせないように気をつけていたが、物語修正なのか、ついにイベントが起こってしまった。
くそー、昼ごはんのあと欲張って期間限定のパンを食べたからだ。しかも三つ。
放課後少しだけトイレの住人になってしまった。ロゼンが止めたとき、素直に言うことを聞けばよかった。
まさかその隙を狙われるなんて。アフェイユ・クロスド、一生の不覚。
上着をかけられた瞬間目を覚ましたロゼンは、直ぐにそれを返していて、現場を見てしまった私は思わず手を拭いたハンカチをぐしゃぐしゃに握りしめる。きぃーっ!
ヒロインとの接点が出来てしまった。
しまった、どうしよう。
半歩後ろを歩くロゼンに変わった様子はない。いつも通り、だと思う。
いやこいつ、いつも表情変えない従者の鏡みたいなやつだから雰囲気から察せない。なんてこったい。
自然な流れで私の鞄を持ち、決して私の前や隣を歩かない。
従者と主人の正しい距離感に何も言えない。
ゲームとは違う私とロゼンの関係。人間の尊厳を踏みにじったり、何かを強要したことはない。
軽い命令や頼み事、ちょっとだけ無理な願いは頻繁にしちゃっているが。
今世において人に命令や指示を出しても、罪悪感や嫌悪感は感じない。自責の念は感じるが。
前世の記憶があると言っても、このアフェイユというキャラクターの性格も少しは引き継いでいる。前世と比べると全くの別人と言ってもいい。
多分前世の私とゲームのアフェイユが混ざりあっているのだろう。憑依とも違う。だってこの体、魂は間違いなく私だと分かるから。
前世の記憶のおかげで、ロゼンと私の過去はゲームと現実では180度変わった。だがもっと過去、ロゼンの家が没落して家族に捨てられた過去は変えようがない。
ロゼンは隠しているようだが、彼が今もそれを引きずっていることに気づかないわけがなくて、たまに眠れていない様子になにか思わずにはいられない。
素直に大丈夫かと聞けない自分が恨めしい。ひねくれた性格はゲームのアフェイユのせいだと思いたい。
いじめっ子気質があるのか、ついついロゼンで遊んでしまう。ロゼンが可愛くて可愛くて困らせたくて、まるで好きな女の子をいじめてしまう男子小学生の気分。
今のロゼンが逆ハーレムを築くビッチ女に惚れるとは思わないが、もしも、がある。
過去も現在も未来でさえも、全て私が受け止めるから。だから、──私だけを見ていないと許さない。
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