20 / 23
第一章
19話 「排除するための・・・・・・能力・・・?」
しおりを挟む
「あら?もう終わり?」
地面に横たわるクロカタゾウムシを見下すように見つめながら、冷たい口調でヒガンバナは問いかける。
「クッ・・・ソ・・・・・・がぁ!・・・はぁ、はぁ・・・!」
息も絶え絶えながら、両手を地面につき、何とか立ちあがろうとする。
しかし、ヒガンバナに投げられ続けた結果、脳が揺れ、平衡感覚を保つことが出来なくなり、上手く立ち上がれなかった。
それでも立ち上がろうと、ゆっくり体を動かし、右膝を立たせ、その上に両手をのせ力いっぱい押すことでフラつきながらも立ち上がる。
「はぁ・・・!おかしいだろ!一体オレに何をした⁉︎」
「何って、アナタが向かって来るから投げただけじゃない?」
「違う‼︎・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・!オレの頭に何をしたかって聞いてんだ!これだけ好き放題やられてるってのに、オレの頭が嬢ちゃんの目を潰せって命令してくんだ!・・・はぁ・・・!今も気を抜くとまた無策で突っ込もうとしちまう‼︎」
両手で自身の頭を掴み、何か見えないものを必死に振り払うように抵抗するクロカタゾウムシ。
その姿をじっと見つめ、ゆっくりとクロカタゾウムシに歩み寄るヒガンバナ。
「さっきも言ったでしょ?思考が紅に染まるって。此処がただの華園だと思ってるのなら、とんだ勘違いね。・・・これから彼岸へ旅立つアナタに手向けとして教えてあげる」
あと一歩でクロカタゾウムシの拳が届きそうな位置まで近づいたヒガンバナは、その場で立ち止まると、辺りに広がる彼岸花を見渡しながら話し始めた。
「千紫万紅・・・・・・己の華園を創り出す能力よ。全ての華乙女達が使えるはずなんだけど、・・・今はまだ、その力に目覚めてないヒトが多いから、知らないのも無理はないわ」
「そういえば・・・・・・はぁ、此処に連れて来られる前、嬢ちゃんが同じ言葉を呟いていたな・・・はぁ・・・」
先ほどまで喋るのも辛そうだったクロカタゾウムシだったが、少し回復したのか、両手を頭から離し下に下げると、呼吸を正しながらヒガンバナの話に相槌を打つ。
「少しは体力が戻ったみたいね。・・・・本来この力は、枯れた土地に己の華を咲かせ、自然を豊かにするために使うものだけど、自身が敵と判断した者を一緒に連れて来た場合、その者を排除するための能力が与えられるの」
「排除するための・・・・・・能力・・・?」
「そう。その能力は個々によって様々だけど、私の場合は、相手の思考を少しだけ変えることが出来るのよ」
そう言うとヒガンバナは、自身の目を強調するように指差し、説明を続ける。
「この目に嫌悪感を抱かせ、ここしか攻撃できないようにさせる。いくら躱されて反撃されようが、構わず私に向かってくるようにさせる。相手の身体が動かなくなるまでね」
「どおりで、はぁ・・・・・・さっきから、嬢ちゃんの目が気に入らねぇと思ってたんだ。で、そんな大事な事教えちまってよかったのか?おかげで少し冷静になれたから、オレとしては助かったが・・・」
完全にとまではいかないものの、これまでの会話で、ある程度呼吸を正すことが出来たクロカタゾウムシは、ニヤリと笑うと下げていた両手を上げ、いつでも殴りかかれるよう構える。
「問題ないわ。いずれその事に違和感を覚えることも出来なくなるから。アナタが今、私を殴ろうと構えてるのが何よりの証拠ね」
「は?・・・いったいどういう・・・・・・っ‼︎」
何気なくとった自身の行動に気づき、ヒガンバナの放った言葉の意味を理解したクロカタゾウムシは、この華園にきて初めて恐怖した。
地面に横たわるクロカタゾウムシを見下すように見つめながら、冷たい口調でヒガンバナは問いかける。
「クッ・・・ソ・・・・・・がぁ!・・・はぁ、はぁ・・・!」
息も絶え絶えながら、両手を地面につき、何とか立ちあがろうとする。
しかし、ヒガンバナに投げられ続けた結果、脳が揺れ、平衡感覚を保つことが出来なくなり、上手く立ち上がれなかった。
それでも立ち上がろうと、ゆっくり体を動かし、右膝を立たせ、その上に両手をのせ力いっぱい押すことでフラつきながらも立ち上がる。
「はぁ・・・!おかしいだろ!一体オレに何をした⁉︎」
「何って、アナタが向かって来るから投げただけじゃない?」
「違う‼︎・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・!オレの頭に何をしたかって聞いてんだ!これだけ好き放題やられてるってのに、オレの頭が嬢ちゃんの目を潰せって命令してくんだ!・・・はぁ・・・!今も気を抜くとまた無策で突っ込もうとしちまう‼︎」
両手で自身の頭を掴み、何か見えないものを必死に振り払うように抵抗するクロカタゾウムシ。
その姿をじっと見つめ、ゆっくりとクロカタゾウムシに歩み寄るヒガンバナ。
「さっきも言ったでしょ?思考が紅に染まるって。此処がただの華園だと思ってるのなら、とんだ勘違いね。・・・これから彼岸へ旅立つアナタに手向けとして教えてあげる」
あと一歩でクロカタゾウムシの拳が届きそうな位置まで近づいたヒガンバナは、その場で立ち止まると、辺りに広がる彼岸花を見渡しながら話し始めた。
「千紫万紅・・・・・・己の華園を創り出す能力よ。全ての華乙女達が使えるはずなんだけど、・・・今はまだ、その力に目覚めてないヒトが多いから、知らないのも無理はないわ」
「そういえば・・・・・・はぁ、此処に連れて来られる前、嬢ちゃんが同じ言葉を呟いていたな・・・はぁ・・・」
先ほどまで喋るのも辛そうだったクロカタゾウムシだったが、少し回復したのか、両手を頭から離し下に下げると、呼吸を正しながらヒガンバナの話に相槌を打つ。
「少しは体力が戻ったみたいね。・・・・本来この力は、枯れた土地に己の華を咲かせ、自然を豊かにするために使うものだけど、自身が敵と判断した者を一緒に連れて来た場合、その者を排除するための能力が与えられるの」
「排除するための・・・・・・能力・・・?」
「そう。その能力は個々によって様々だけど、私の場合は、相手の思考を少しだけ変えることが出来るのよ」
そう言うとヒガンバナは、自身の目を強調するように指差し、説明を続ける。
「この目に嫌悪感を抱かせ、ここしか攻撃できないようにさせる。いくら躱されて反撃されようが、構わず私に向かってくるようにさせる。相手の身体が動かなくなるまでね」
「どおりで、はぁ・・・・・・さっきから、嬢ちゃんの目が気に入らねぇと思ってたんだ。で、そんな大事な事教えちまってよかったのか?おかげで少し冷静になれたから、オレとしては助かったが・・・」
完全にとまではいかないものの、これまでの会話で、ある程度呼吸を正すことが出来たクロカタゾウムシは、ニヤリと笑うと下げていた両手を上げ、いつでも殴りかかれるよう構える。
「問題ないわ。いずれその事に違和感を覚えることも出来なくなるから。アナタが今、私を殴ろうと構えてるのが何よりの証拠ね」
「は?・・・いったいどういう・・・・・・っ‼︎」
何気なくとった自身の行動に気づき、ヒガンバナの放った言葉の意味を理解したクロカタゾウムシは、この華園にきて初めて恐怖した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる