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翌日。
魔獣が本来の力を発揮できない明るい
うちから、俺達は城へ潜入した。

グレイとリオンにキスをすると、俺も少しは力を制御出来るようになったのか、無事に力を増幅できた。
監獄と違って魔封じリングもないため、持続時間も格段に長かった。

城を守る魔獣達は、あっという間に2人が倒していく。
俺も銃で加勢すると、弾に魔力がこもるためか、なかなかの威力だった。

そしてついに、第二王子が姿を現した。
さすが王子という美しい容姿をしているが、禍々しいオーラに満ちている。

「これはこれは、グレイにリオン。我に加勢する気にでもなったのか?」

王子は長い足を組んで玉座に座り、俺達を見下ろしてきた。
やはり魔王が憑依している様で、目の色は赤く、この世のものとは思えない。

「お前達の魔力の源は、その男か。聖女の力を持つ者が、またもや我の前に現れるとは…。」

古の昔に封印された魔王は、積年の恨みをこめた眼差しを俺に向けてくる。
元の世界のパワハラ上司なんて目じゃないくらいの威圧感に、足が震えた。
魔王はまだ、くどくどと恨み言を言っているが…。

俺は渾身の祈りを込めて銃にキスしてから、素早く引き金を引いた。

「マナト! 無駄なことはよせっ!!」

グレイの声が聞こえたけど、もう遅かった。
反動で手首を痛めそうになりながらも、何発か連続で撃ち込む。

魔王の話なんて、聞く気はなかった。
2人を守りたい…!
ゲームなんかでは、よく敵の話を最後まで聞いてから戦闘に入るけど、これは現実だ。
先制攻撃に越したことはないはず…っ!

そう思ったのに、ほとんどダメージを与えられなかったのか、玉座の上の魔王は、長い足を組んで頬杖をついたままの姿勢でこちらを冷たく眺めている。

「…先制でもしたつもりか? 聖女の力を持つとはいえ、さすが男だ。勇ましいな。…まぁよい、気に入った。」

その台詞と同時に、体が強制的に浮き上がる。銃を床に落とし、しまったと思った時には、魔王に跨る様な姿勢で大きな玉座の上に座らされていた。

「おいっ、マナトを離せ!!!」
「マナト!!!」

グレイとリオンの声がして、何かの魔法が放たれた気配がしたけど、全て弾かれる。

「聖女の力、我にも見せてもらおうか…。」

そして魔王の冷たい唇が、無理矢理口付けてくる。
体がほとんど動かなくて、俺は拒絶することも出来ずに唇が重なった。

死んでも、力は渡さない……!!!

俺は目を閉じて、何度も練習した力の制御に集中した。

「選んだ者にしか、力を与えぬ気か…?」
「んぅ………っ!?」

ふいに首に片手をかけられ、驚いて開いた唇の隙間から深く口づけられた。
ぬるりとした長い舌が入ってきて、反射的に逃げた俺の舌が絡めとられる。

見せつける様にクチュクチュと湿った音をさせ、やたらゆっくりと丁寧に舌を動かされた。
まるで変な薬でも使われたみたいに、頭の芯が痺れてくる。

だめだ、絶対に屈しない…!

魔王を睨むと、真っ赤な瞳に冷たく見返された。
そして、俺の首にかかっていた魔王の指に、徐々に力がこめられてゆく。

「ふっ、う゛ぅ……っ!!!」

俺の口内を貪りながら、まるで力を搾り取ろうとするみたいに、魔王は俺の首を片手で絞めあげる。
指先が、どんどん食い込んでくる。

意識が遠のきそうになってきて、俺はもうがむしゃらに抵抗した。
首を絞めてくる手を剥がそうと、言うことを聞かない体を何とか動かし、魔王の手を引っ掻いて身を捩る。

「や゛、やめ…、くるし…っ。」
「…殺しはしない。」

そう言いながらも、魔王は首にかけた手の力を緩めない。
苦しくて、生理的な涙がこみあげてくる。

「しかし苦しいだけでは、屈しないようだな…。」

俺の涙を長い舌で舐め、魔王は低くそう呟くと、俺のズボンのジッパーを下ろし、下着の中にもう片方の手をいれてきた。
そして、俺自身を扱き出す。

「や゛っ、やめろ……っ!!!」

首を締め上げられながら冷たい手で扱かれると、こんなことをされて気持ちいいはずないのに、俺自身が反応を示し始める。

真っ赤な瞳が、魅了する様に俺を捕えた。

グチュグチュと先走りで濡れた音がして、また深く口付けられる。

キスされながら扱かれて、久しぶりの下半身への刺激にもう腰が溶けそうだ。
でも、絞められたままの息は苦しい…。

気持ちいいのか苦しいのか訳がわからなくなっていく。

でも、力だけは渡さない……!!!

そう思いながらも頭が真っ白になりかけた所で、ズドンという銃弾の音がした。

「俺のマナトに触るなっ!!!」
「グレイ様が撃つと、すごい威力ですね…!」

次に2人の声がして、首を絞めていた魔王の手が離れる。
そしてふわりと体が浮いて、今度はグレイの腕の中に抱き抱えられた。

「マナトの銃のお陰で、魔王の防御が解けた。…よく、力を守ったな。」

俺が勝手なことをしたからこんなことに…そう思っていたのに、魔力を増幅した銃とグレイの力の相乗効果で魔王の防御魔法が解けた様だった。
言葉にならなくて、言葉の代わりに俺は自分から、グレイの肩にしがみついてキスをした。

そして、渾身の祈りをこめる。

すると、グレイの神秘的なオッドアイが見開かれ、まるで天上の光を纏ったような神々しいオーラが彼を取り巻く。

そして、国全体を浄化するかの様な、聖なる魔法が発動した…。



***



グレイ自身も、どうやって使ったのか分からないくらいの偉大な聖なる魔法で、魔王は再び封印された。

その後、第一王子が無事に王位継承を果たした国には平和が戻り…。

魔王を封印した魔術師として、何でも望むものを与えるという国からの厚意に、グレイは俺と2人で暮らせる領地と屋敷を望んだ。
リオンは、初めは俺達について行くと騒いでいたけど、どうやら第一王子に大層気に入られ、側近になることに決めた様だ。
もともと、国の教会の施設で育ったリオンは、何だかんだ国にはお世話になった恩があるからと話していた。

そして聖なる力に国が満たされたせいか、国には新たな命として魔術の才を持った子ども達が多く生まれ、今回の件で激減してしまった魔術師を補填する形となった。

そして俺とグレイは、海が見える小高い丘の上の屋敷で、最近になってやっとゆっくり過ごせるようになり…。

「聖女の力のことがバレなくて良かった。マナトの力は、必ず利用される。」

グレイ自身が才能のある魔術師で、家や国からその力を請われ続けてきたからか、グレイは頑なに俺の力を隠し通した。

『聖女が異世界から来る』という時点で迷信だと思っている人が多く、その場に他の魔術師がいなかったのも幸いして、何とか隠せた様だ。
第一、俺は男だし…。
もちろんリオンも、第一王子の側近になっても黙っておいてくれるそうだ。

「色々ありがとう、グレイ…。」

海が見渡せる広いバルコニーで、一緒に沈む夕日を眺める。
そして、夜は満天の星を。
俺とグレイの生活は、そんなゆったりとした毎日だ。

「マナトの言ってた『すろーらいふ』、これで叶った?」
「十分過ぎるくらい、叶ったよ…!」

潮風に、グレイの金色の髪がなびく。
神秘的なオッドアイに見つめられ、そっと顎を指で掬われた。
そして、俺達の唇が…。

「だ、駄目だグレイ…!」
「最近、そればっかだな…。」

俺はグレイから逃れるように顔を背けた。
これにはちゃんと訳がある。
魔王を封印して、初めてグレイと体を重ねた日。
気持ち良くなると力の制御が効かなくなってしまうらしい俺は、興奮しまくったグレイに散々に抱き潰された。
あんなことをしょっちゅうしていたら、壊れてしまう…。
というわけで、キスには慎重にならざるを得ない。

「…今夜は、マナトがキスしてくれるまで、イかさないことにする。」
「えぇ!?」

グレイが俺の体をひょいと肩に担ぎ、俺はベッドルームへ連れて行かれる。

グレイには言えないけど、夜の生活だけはスローライフじゃないんだよなぁ…。



                おわり











































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