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第二章

勝敗の行方

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 それから俺たちは授業が終わった後に毎日教室に残って勉強をした。
 無事にテストを終え、すぐに返却の日が訪れる。

 「着席ー。 分かってると思うが今日はテスト返却だ。 ぱぱっと終わらせたいから、呼ばれたらすぐに来るように。 じゃあ、出席番号1番から」

 淡々とテストが返されていく。
 生徒たちは点数が記された回答用紙を眺め、喜怒哀楽を各々の顔に浮かべる。

 「楽、お前何点だった?」
 「96点」
 「高っ!! 逆にどこミスったんだよ」
 「よくある計算ミスをやらかした」
 「そもそも俺はその計算に辿り着けなかったんだけどな……」

 頭をかいて苦笑する智和の用紙を見ると、前回よりも点数が上がっているのが見える。
 勉強会の成果は少なからずあったみたいで、自分のことではないが嬉しく感じる。

 「詩月ことるは? 先週は数学やってることが多かったように見えたけど、うまくいったか?」

 俺の前に座る綾瀬がその声に反応して嬉しそうな顔と同時に『83』と大きく書かれた回答用紙を見せる。

 「うん、すごく点数伸びたよ。 七海と藤崎のおかげ~」
 「役に立てたなら良かった」
 「次回もよろしくね」
 「気が早いな……」
 「それより、次は英語だからね! 今回はすっごい自信あるから!」
 「いい勝負になりそうだな」

 俺と綾瀬が火花を散らす様子を見た智和は静かに去っていき、ついに英語のテスト返却の時間が来た。

 今回の入試問題演習はかなりレベルが高かった。
 超が付くほど有名な大学の過去問で、とある細胞の話を扱ったものだ。
 先生曰く、『好き嫌いなんてしてちゃ伸びない! 色んな文に触れないと!』とのことらしい。
 流石にやりすぎだと思うが、この部分を全て落としても他の部分がノーミスであれば80点にはギリギリ到達するから、英語が得意な人からしたら割と簡単な話ではある。

 「今回の過去問、難しくしちゃってごめんね! でも、身になったと思うから、しっかり復習しておくこと。 それじゃあ返していくよ~」

 本格的に返却が始まると、至るところから文句が聞こえてきた。
 点数を確認して顔をしかめる人もいる。
 入試問題は前半に入れられていたから、時間配分を間違えた人も少なからずいるだろう。

 「じゃあ、次。 綾瀬さん」
 「はーい」

 教室の雰囲気に合わない呑気な返事をしてすたすたと前方に向かう。
 ぺこぺこと先生に小さくお辞儀をして帰ってきた彼女はやけに上機嫌だ。

 「何点だった?」
 「まだ内緒。 先に教えたらつまらないでしょ?」
 「それもそうか」

 自分の名前を呼ばれて席を立つ。

 「よく最後の問題解けてるね。 ただ、少し詰めが甘いかな? もう少し深くまで見れると点数は上がると思うよ。 次も頑張ってね」
 「はい、ありがとうございます」

 丁寧なアドバイスをもらって席に戻る。

 「……何その顔」
 「いや、余裕そうだなぁって思って。 じゃあ、せーので点数言ってね」
 「言わなかったら許さないからな」
 「そんなことしないから……。 じゃあ、いくよ?」

 「「せーのっ」」
 「95点」「100点!」

 …………は?

 俺がほうけた顔をしているのを見たのか、嬉しそうに身体を小さく揺らして笑う。
 笑った彼女の手から回答用紙がするりと落ちて俺の机の上に乗る。

 先生の『カンペキ!』という癖の強い文字と、堂々と赤で書かれた『100』という文字が輝いていた。
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