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第三章
言葉の真意
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「さて、ここで昼食をとる。 50分後にまたここで点呼を行うから、遅れないように。 食事を取る場所は自分たちで決めてもらって構わない。 他クラスの人と合流して一緒に食事を取るのもありだ。 特に質問はないね? じゃあ、一時解散!」
「いやっほぉぉぉぉぉ! ついに宿泊行事がやってきたぜぇぇぇ!」
「おい! 早くあいつら呼んでこいよ! すぐ飯食って鬼ごっこしようぜ!」
「ここまできて鬼ごっこするって……男子は本当に元気だね~。 うちらはどうする?」
「避暑地とはいえ、太陽の光にずっと晒されるのは嫌だし、木の下に行ってゆっくりご飯食べようか」
「賛成~」
宿泊行事。
おそらく多くの生徒が待ち望んでいた行事が始まった。
クラスの陽キャラ達はこの暑さの中で走り回っている。
そりゃあこんな様子を見たら女子は呆れるだろう。
僕だって正直呆れているところだ。
「優、私たちも食べよう?」
「ん、そうだな。 ……玲も呼ぶか?」
「なんでちょっとだけ言うか悩んだの。 勿論、私も玲と3人で食べるつもりだよ。 ただ、まだ玲のクラスは解散の指示が出てないから、先に場所取っとこう?」
「わかった。 あそこの木陰にしようか。 あそこなら涼しいし、人も少ない」
そうして、僕と明梨は木陰にレジャーシートを敷き、配布された弁当を開いた。
「それにしても、さっきは誰も明梨のこと誘わなかったな。 どうせ男子も女子も明梨のことを誘うだろうと思ってたのに」
「確かにね。 もう慣れてきたから誘われても何とも思わなくなってきたけど、こうなると逆に不自然な感じがする」
「まあ、後でどうせ明梨のところに人が殺到するだろうな。 僕はその間何をしてようか」
「私のところに誰か来たら優に話題振るね」
「いや、それは流石に困る。 僕は今のままで十分だよ」
「クラスのみんなが優に興味ないみたいな態度を取ってるのを見てると、ちょっと寂しく感じちゃって。 友達といる時間が楽しいってこと、優は知ってるでしょ?」
「それは重々承知ですけどね……」
ちまちま食事をしながら明梨と話していると、ようやく玲がこちらに向かってくるのが見えた。
「やっと見つけたよ~! 探すの苦労したんだから~!」
「ごめんごめん。 先に場所を取ってたんだ」
「そういうことなら許す。 ってゆーか2人とも久しぶりだね! 元気にしてた?」
「元気だよ。 玲と遊びに行けたら良かったんだけどね、玲は忙しそうだったし」
「私も2人と遊びたかったよぉ~。 先生ったら、この休みに練習試合を沢山組んじゃってぜんっぜん休みが無かったんだよね~」
そう言ってわざとらしくがっくりと肩を落とす彼女。
思わずかわいいと思ってしまった自分が悔しい。
明梨が心を読めていたら今頃ビンタか何かが飛んできていただろう。
「優~? それはどういう表情なんですか~?」
「……え? ……いや…………え?」
明梨が僕に微笑む。
…………微笑んではいるのだが、何処からか闇を感じるのは気のせいだろうか。
うん、きっと僕の気のせいだろう。
何かやましいことや隠していることがあると、人は細かいことにも過剰に反応してしまうものだ。
このことは水に流そう……。
お互いに硬直していると、その様子を見た玲が一言。
「2人とも、なんかあった? ……あ」
そして、何か思い付いたかのように聞く。
「もしかして…………2人でデートしに行った?」
「「っぇえ!?」」
「ふむふむ、それで付き合った、ということね」
「「いやいやいやいやいやいやいやいや!!」」
恐ろしい洞察力を駆使する玲に対して、図星の僕らは大袈裟に反応してしまった。
ほら、やましいことや隠していることがあると、過剰に反応するって言っただろ?
「明梨、そういうことだよ」
「いや、どういうことよ!」
うっかり心の声が漏れてしまったみたいだ。
だが、ここでその会話はまずいんじゃないか。
明梨が僕と同じ思考をしているのかは分からないが、僕からしたらあまり話を広めたくない。
玲を疑うつもりは微塵もないが、近くには少ないとはいえ他の生徒もいる。
情報源は絶っておくべきだろう。
「あの、玲。 それは……」
そう言って否定しようと声を出したが、
「流石に付き合ってないから、安心して?」
明梨がスパッと切り捨てた。
どうやら同じようなことを考えていたみたいだ。
とはいえ、こうやって聞くとやはりちょっと傷つく。
「ふーん。 安心していいんだぁ……」
納得したのかどうかはわからないが、ひとまずは大丈夫らしい。
「まっ、触れないでおくね。 私も弁当食べよっと!」
普段通りの彼女に戻ったみたいだが、呟いた言葉の真意は水に流されたようだ。
「いやっほぉぉぉぉぉ! ついに宿泊行事がやってきたぜぇぇぇ!」
「おい! 早くあいつら呼んでこいよ! すぐ飯食って鬼ごっこしようぜ!」
「ここまできて鬼ごっこするって……男子は本当に元気だね~。 うちらはどうする?」
「避暑地とはいえ、太陽の光にずっと晒されるのは嫌だし、木の下に行ってゆっくりご飯食べようか」
「賛成~」
宿泊行事。
おそらく多くの生徒が待ち望んでいた行事が始まった。
クラスの陽キャラ達はこの暑さの中で走り回っている。
そりゃあこんな様子を見たら女子は呆れるだろう。
僕だって正直呆れているところだ。
「優、私たちも食べよう?」
「ん、そうだな。 ……玲も呼ぶか?」
「なんでちょっとだけ言うか悩んだの。 勿論、私も玲と3人で食べるつもりだよ。 ただ、まだ玲のクラスは解散の指示が出てないから、先に場所取っとこう?」
「わかった。 あそこの木陰にしようか。 あそこなら涼しいし、人も少ない」
そうして、僕と明梨は木陰にレジャーシートを敷き、配布された弁当を開いた。
「それにしても、さっきは誰も明梨のこと誘わなかったな。 どうせ男子も女子も明梨のことを誘うだろうと思ってたのに」
「確かにね。 もう慣れてきたから誘われても何とも思わなくなってきたけど、こうなると逆に不自然な感じがする」
「まあ、後でどうせ明梨のところに人が殺到するだろうな。 僕はその間何をしてようか」
「私のところに誰か来たら優に話題振るね」
「いや、それは流石に困る。 僕は今のままで十分だよ」
「クラスのみんなが優に興味ないみたいな態度を取ってるのを見てると、ちょっと寂しく感じちゃって。 友達といる時間が楽しいってこと、優は知ってるでしょ?」
「それは重々承知ですけどね……」
ちまちま食事をしながら明梨と話していると、ようやく玲がこちらに向かってくるのが見えた。
「やっと見つけたよ~! 探すの苦労したんだから~!」
「ごめんごめん。 先に場所を取ってたんだ」
「そういうことなら許す。 ってゆーか2人とも久しぶりだね! 元気にしてた?」
「元気だよ。 玲と遊びに行けたら良かったんだけどね、玲は忙しそうだったし」
「私も2人と遊びたかったよぉ~。 先生ったら、この休みに練習試合を沢山組んじゃってぜんっぜん休みが無かったんだよね~」
そう言ってわざとらしくがっくりと肩を落とす彼女。
思わずかわいいと思ってしまった自分が悔しい。
明梨が心を読めていたら今頃ビンタか何かが飛んできていただろう。
「優~? それはどういう表情なんですか~?」
「……え? ……いや…………え?」
明梨が僕に微笑む。
…………微笑んではいるのだが、何処からか闇を感じるのは気のせいだろうか。
うん、きっと僕の気のせいだろう。
何かやましいことや隠していることがあると、人は細かいことにも過剰に反応してしまうものだ。
このことは水に流そう……。
お互いに硬直していると、その様子を見た玲が一言。
「2人とも、なんかあった? ……あ」
そして、何か思い付いたかのように聞く。
「もしかして…………2人でデートしに行った?」
「「っぇえ!?」」
「ふむふむ、それで付き合った、ということね」
「「いやいやいやいやいやいやいやいや!!」」
恐ろしい洞察力を駆使する玲に対して、図星の僕らは大袈裟に反応してしまった。
ほら、やましいことや隠していることがあると、過剰に反応するって言っただろ?
「明梨、そういうことだよ」
「いや、どういうことよ!」
うっかり心の声が漏れてしまったみたいだ。
だが、ここでその会話はまずいんじゃないか。
明梨が僕と同じ思考をしているのかは分からないが、僕からしたらあまり話を広めたくない。
玲を疑うつもりは微塵もないが、近くには少ないとはいえ他の生徒もいる。
情報源は絶っておくべきだろう。
「あの、玲。 それは……」
そう言って否定しようと声を出したが、
「流石に付き合ってないから、安心して?」
明梨がスパッと切り捨てた。
どうやら同じようなことを考えていたみたいだ。
とはいえ、こうやって聞くとやはりちょっと傷つく。
「ふーん。 安心していいんだぁ……」
納得したのかどうかはわからないが、ひとまずは大丈夫らしい。
「まっ、触れないでおくね。 私も弁当食べよっと!」
普段通りの彼女に戻ったみたいだが、呟いた言葉の真意は水に流されたようだ。
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