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第二章
本格的な変化
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「……さて、行くか」
「ちょ、切り替えはっや」
食べさせ合いっこを終えた僕らは中華街を抜けて港の方にある大きい公園に向かう。
周りの視線は相変わらず少し痛いが、気にしていてはどうしようもない。
「あ、優? あれ」
そう言って足を止めた明梨の視線の先には、全国的に有名なタピオカドリンクの店があった。
今時の高校生は男子も女子もみんなタピオカドリンクを手に持ってやれタピタピだの何だの言ってるイメージがあるが、正直言ってどこが良いのだろうかと疑問に思う。
あれってデンプンの塊なんじゃないのか。
カロリーがどうのこうの言って気にしている女子も、タピオカの前ではなす術がないのだろうか。
まあ、飲んだこともないのに先入観と偏見で物事を考えるのは良くない。
彼女も飲みたがっているし、僕も試しに飲んでみよう。
「あれ買って、飲みながら行くか」
「うん!」
かなり並んでいたように思えたが、回転率が高く思ったより時間はかからなかった。
僕はとりあえず1番人気だと言われる黒糖タピオカミルクティーを買った。
明梨も同じだ。
折角だから、と明梨と写真を撮った後、再び歩き出す。
「ねえねえ、この後どうする?」
「特に明梨が行きたいところが無ければ、公園とかを通った後に服を買いに行こうと思うんだけど、どう?」
「うん、わかった。 ところで、人生初タピオカドリンクの味はどうですか?」
「どうって聞かれても……。 甘いミルクティーにタピオカが入っただけにしか思えないな……」
「はぁ~~、優ってばわかってないねぇ~」
大袈裟にため息をつき、呆れたように首を振る。
事実、本当にそうとしか感じなかったのだから仕方がない。
そんな会話をしていると、中華街独特の雰囲気はもう消えていて、太陽の光を浴びて煌めいている海が見えていた。
「はぁ~……! やっぱこういうの見ると、横浜って感じするなぁ~」
目を輝かせて海に魅入る明梨を見ると、なんだか自分まで心が晴れたような、そんな気になる。
「今日は本当にいい天気だな」
「そうだね。 雨とかじゃなくて本当に良かったよ」
「ちょっと、暑すぎるけどな」
「まあ、夏なんてそんなもんだよぉ」
そう言った明梨は、さっきからずっと海を眺めている。
笑顔を絶やさない彼女は、今このときどのようなことを考えているのかが気になった。
僕はといえば、明梨のことで頭がいっぱいだ。
気味が悪いと捉えられても仕方ないだろうが、それほど僕は彼女のことが好きになってしまっていた。
僕はふわふわと、地に足がついていないような感覚に陥っていた。
この時間がずっと続けばいいのに……。
僕もつい海に魅入ってしまった。
そろそろ移動しようと思い、彼女に声をかけようとして視線を向けたが、すぐにそれを行動に移すことはできなかった。
理由は単純。
彼女が、泣いていたからだ。
ただただ無言で、海を見つめたその瞳を動かすことなく、涙を流していた。
僕は驚きのあまり声が出せなかった。
なぜ彼女が泣いているのかという理由を模索するも何一つ思いつかない。
僕はその静かに涙を流す彼女の姿を見て、入学式のときに彼女の姿を見たときと同じことを思った。
儚い。
そう思ったとき、急に現実に引き戻されたような感覚に陥った。
さっきまでのふわふわした感覚が嘘のようだ。
「あ、明梨? どうしたの急に」
僕に呼びかけられてこちらを向く。
泣いているのに、何故か彼女は微笑んでいた。
「ううん。 ちょっとぐっときちゃったというか……。 なんか、自分でもよくわかんない気持ちになってね。 でも、何も悲しいことなんてないし、気にすることないよ」
そう言って、眼の端に溜まった涙を拭って、再び僕に笑いかける。
「じゃあ、行こっか! ファッションにはからっきしだめな優君に、個別指導をして差し上げましょう」
「まあ、否定はできないんだよな……。 じゃあ、今日もよろしくお願いします、先生」
「うん、私に任せなさいっ!」
どうやらいつもの調子を取り戻したようだ。
今日はなんだか、いつもを通り越してずっとテンションが高い気がするが、僕の思い違いか何かだろう。
この幸せな時間をより長くするためには、僕も本格的に変わらなければいけないみたいだ。
「ちょ、切り替えはっや」
食べさせ合いっこを終えた僕らは中華街を抜けて港の方にある大きい公園に向かう。
周りの視線は相変わらず少し痛いが、気にしていてはどうしようもない。
「あ、優? あれ」
そう言って足を止めた明梨の視線の先には、全国的に有名なタピオカドリンクの店があった。
今時の高校生は男子も女子もみんなタピオカドリンクを手に持ってやれタピタピだの何だの言ってるイメージがあるが、正直言ってどこが良いのだろうかと疑問に思う。
あれってデンプンの塊なんじゃないのか。
カロリーがどうのこうの言って気にしている女子も、タピオカの前ではなす術がないのだろうか。
まあ、飲んだこともないのに先入観と偏見で物事を考えるのは良くない。
彼女も飲みたがっているし、僕も試しに飲んでみよう。
「あれ買って、飲みながら行くか」
「うん!」
かなり並んでいたように思えたが、回転率が高く思ったより時間はかからなかった。
僕はとりあえず1番人気だと言われる黒糖タピオカミルクティーを買った。
明梨も同じだ。
折角だから、と明梨と写真を撮った後、再び歩き出す。
「ねえねえ、この後どうする?」
「特に明梨が行きたいところが無ければ、公園とかを通った後に服を買いに行こうと思うんだけど、どう?」
「うん、わかった。 ところで、人生初タピオカドリンクの味はどうですか?」
「どうって聞かれても……。 甘いミルクティーにタピオカが入っただけにしか思えないな……」
「はぁ~~、優ってばわかってないねぇ~」
大袈裟にため息をつき、呆れたように首を振る。
事実、本当にそうとしか感じなかったのだから仕方がない。
そんな会話をしていると、中華街独特の雰囲気はもう消えていて、太陽の光を浴びて煌めいている海が見えていた。
「はぁ~……! やっぱこういうの見ると、横浜って感じするなぁ~」
目を輝かせて海に魅入る明梨を見ると、なんだか自分まで心が晴れたような、そんな気になる。
「今日は本当にいい天気だな」
「そうだね。 雨とかじゃなくて本当に良かったよ」
「ちょっと、暑すぎるけどな」
「まあ、夏なんてそんなもんだよぉ」
そう言った明梨は、さっきからずっと海を眺めている。
笑顔を絶やさない彼女は、今このときどのようなことを考えているのかが気になった。
僕はといえば、明梨のことで頭がいっぱいだ。
気味が悪いと捉えられても仕方ないだろうが、それほど僕は彼女のことが好きになってしまっていた。
僕はふわふわと、地に足がついていないような感覚に陥っていた。
この時間がずっと続けばいいのに……。
僕もつい海に魅入ってしまった。
そろそろ移動しようと思い、彼女に声をかけようとして視線を向けたが、すぐにそれを行動に移すことはできなかった。
理由は単純。
彼女が、泣いていたからだ。
ただただ無言で、海を見つめたその瞳を動かすことなく、涙を流していた。
僕は驚きのあまり声が出せなかった。
なぜ彼女が泣いているのかという理由を模索するも何一つ思いつかない。
僕はその静かに涙を流す彼女の姿を見て、入学式のときに彼女の姿を見たときと同じことを思った。
儚い。
そう思ったとき、急に現実に引き戻されたような感覚に陥った。
さっきまでのふわふわした感覚が嘘のようだ。
「あ、明梨? どうしたの急に」
僕に呼びかけられてこちらを向く。
泣いているのに、何故か彼女は微笑んでいた。
「ううん。 ちょっとぐっときちゃったというか……。 なんか、自分でもよくわかんない気持ちになってね。 でも、何も悲しいことなんてないし、気にすることないよ」
そう言って、眼の端に溜まった涙を拭って、再び僕に笑いかける。
「じゃあ、行こっか! ファッションにはからっきしだめな優君に、個別指導をして差し上げましょう」
「まあ、否定はできないんだよな……。 じゃあ、今日もよろしくお願いします、先生」
「うん、私に任せなさいっ!」
どうやらいつもの調子を取り戻したようだ。
今日はなんだか、いつもを通り越してずっとテンションが高い気がするが、僕の思い違いか何かだろう。
この幸せな時間をより長くするためには、僕も本格的に変わらなければいけないみたいだ。
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