拝啓、終末の僕らへ

第二章

天使様の本気

　〈もう着いたから、駅の改札を出て左のところで待ってるよ〉

　そう明梨にメッセージを打ち、僕は再びスマートフォンに眼を落とす。
　画面には『横浜デートには外せない！　おすすめスポット１０選』という文字が並んでいる。

　そう、僕が今いる場所は横浜。
　中華街の駅だ。
　自宅から電車で約５０分ほど。
　かなり気軽に行ける場所だ。

　昨日の夜、明梨から誘いが来てこの状況だ。
　名目はあくまで僕の服を買う、ということだったが、彼女はなんだか僕よりも楽しみにしているようだった。
　服を買うだけなら中華街に来る必要はないが、この前明梨が行きたいと言っていたのを覚えていた僕が提案すると、彼女も喜んで承諾してくれたみたいだ。
　一応、玲も誘ってみたが、彼女は部活の試合があるのだという。
　嬉しいようで、申し訳ないような、正直そんな感情を抱いている。

　それで、折角明梨と…………デート……に行くというのだから、出来る限り僕がプランを考えたい。
　頼るのは簡単だが、頼られる存在になるのは勿論簡単なことじゃない。
　ただ、いつも明梨に頼ってばかりの僕だ。
　こういうときくらいは、良い格好を見せたいじゃないか。

　あくまでも、本題は服を買うこと。
　だから、あまり中華街で長居はしていられない。
　それに、明梨は多少なりとも家が遠いから、少し早めの解散にするべきだろうか。
　それを踏まえて今日の大まかなプランを決めておくべきだろう。

　……明梨はきっとそう思っちゃいないが、僕は今日をデートとして捉えている。
　勝手にそう思っているだけだが、今日はこのデートを絶対に成功させよう。



　そう決意して色々とウェブサイトを眺めていると、集合時間になっていた。
　だが、電車が来る様子はない。
　この駅は終点だから、電車の発着である程度の予想がつくが、着いたとの連絡もないし、明梨はまだ電車の中なのだろうか。

　とんとん。
　改札の方を眺めていると、突然肩を叩かれる。

　「私はここだよ？」

　振り返ると、天使様が僕の側に立っていた。



　「……ほんっとにびっくりした」

　そう言うと、明梨は申し訳なさそうに笑う。

　「あはは、ごめんごめん。　なんか気付いてないみたいだったから、ちょっと意地悪したくなっちゃった」
　「……まあ許す」

　なんだろう、今日の明梨はとにかくやばい。
　一緒にいるだけで昇天してしまいそうだ。

　この前僕の服を買ったときの服装はかなりラフなものだったが、今日はお洒落を意識したのだろうか。
　地上を焼くような勢いで照らす太陽。
　その光が、彼女の露出した肩を白く光らせていた。
　すれ違う人が思わず彼女に見惚れてしまうくらいの魅力を、彼女は今持っている。

　「今日も暑いねー。　体が溶けちゃいそうだよぅ」

　そう言ってひらひらと手で扇ぐ彼女。
　一つ一つの所作が目についてしまう。

　「そ、そうだな……」

　彼女の魅力に僕の脳が溶けてしまいそうだった。