40 / 79
第二章
小悪魔の誕生
しおりを挟む
カフェの席に着くとすぐに明梨は机に突っ伏してしまった。
こんな明梨を見たのは初めてだから、僕も玲も驚いていた。
そんな僕らの様子を感じ取ったのか、彼女は腕にうずめていた顔を少し上げる。
「……ちょっとー、どうしたの2人ともそんなびっくりした顔してさぁー」
「いや、明梨がそんな疲れてるところ初めて見たからさ」
「明梨、なんだかすごく疲れたみたいだね。 私たち先に買ってくるよ?」
「うーん、そうだね。 先に買ってきて。 待ってるから」
そう言うなり彼女はまた顔をうずめてしまった。
それを見た僕らは席を立つ。
今回は彼女たちを見習って、僕も少しだけカスタマイズとやらをやってみることにした。
注文が終わって待っていると、同じく注文を終えた玲が駆け寄ってきて、僕の腕をつんつんとつついてきた。
何となく不安そうな顔をしている気がする。
「どうしたの?」
「いや、明梨のことなんだけど……。 なんかあった? もしかしてこの前のことが原因だったりする?」
なんだ、気にしていたのか。
玲は、普段は天然というか、陽気なキャラを見せているが、よく人のことを観察していて、細かいところまで気配りができる。
それゆえに、クラスでも人気で人と関わる場面が多いだろうが、その中でも普通にやっていけているあたりが凄いところだ。
「この前のことは先生も言っていた通り、何も起きてないよ。 ただ、今日って成績の発表があっただろ。 それで、ちょっとした騒ぎになっちゃってな……」
「あ、やっぱりあの噂本当だったんだ」
「あ、あはは、やっぱり噂されてたか」
どこまで知っているかはわからないが、明梨とのことを思い出して無意識に目を逸らしてしまう。
「まったく、明梨も大胆だよねー。 そういうことなら私にもそれとなく伝えてほしいよ」
「大胆……? って、ちょっと待った! 多分、あ、明梨は俺のことが好きってわけじゃ……」
「だーってさー。 抱きつかれたんでしょ? どうせ明梨の胸とか当たって、優はそれどころじゃなかったと思うけど」
「ちょ、ちょっと何言ってるかわかんないっす……」
「ふーん……。 ちょっと意地悪してみたら、色々教えてくれたね。 優しいなー」
「あ……」
どうやら、要らぬことまで玲に悟られてしまったみたいだ。
正直、図星だった。
明梨に抱きつかれたとき、あの場所で抱きつかれたことも確かに恥ずかしかったが、それよりも明梨の胸が当たっているのがわかって頭が真っ白になっていた。
というか、それを玲が言うのか……。
実際、買い物に行ったときにはかなりラフな服装だったから、嫌でも目に入ってしまった。
明梨も胸は大きい方だと思うが、玲の方がかなり大きかった。
明梨自身、玲よりは胸が小さいとわかって、少し気にしているみたいだ。
僕が話題に触れたら変な眼で見られる気がしたから、もちろん見て見ぬふりをしていたが。
玲はともかく、明梨はそれでも大きい方ではあるので、彼女たちの人気の理由の1つでもあるだろう。
男子生徒が好奇の視線を送るのも無理はない。
何があったら、こんなに胸が大きくなるんでしょうかね……。
「……今、一瞬私の胸見たでしょ」
「いや見てないです」
「……本当は?」
「…………ちょっと見ました……」
「……とか言って?」
「……結構見てました…………。」
「うーん……。 素直でよろしい。 優だから許してあげよう」
え、許された。
「まあ、それもあるかもね。 明梨があんなに疲れてる理由」
「人気者は辛いよな……」
そうやって話していると、注文した飲み物が出来たみたいだった。
「抹茶クリームフラチーノ、チョコレートチップとソース追加、ホイップクリーム多めでご注文されたお客様ー?」
「あぁ、はい。 僕です」
「ありがとうございましたー」
もらった横でストローをさして待っていると、僕の後に飲み物を受け取った玲が少し驚いた顔をしていた。
「なんか変?」
「いや、優もカスタマイズするようになったんだなーって思って。 ほら、優は前までここにきたら普通のコーヒーばっかり飲んでたからさ」
「まあ、確かに。 でも、沢山種類があると、色々と試したくなっちゃう人なんだよね」
「その気持ち、すっごくわかる~! カスタマイズの種類も沢山あるし、飽きないんだよね!」
初めて自分でカスタマイズしたという謎の達成感を味わいつつ、口をつける。
抹茶のほのかな苦みのなかにチョコレートの甘さがブレンドされている。
増量したホイップのおかげでやわらかい口当たりになってすごく飲みやすい。
どうやら、初カスタマイズは成功したみたいだ。
満足している僕を見て、隣の玲は
「私、そのカスタム飲んだことないんだよねー。 …………明梨がそうするなら、私も……いい…………よね?」
なんか後半部分がよく聞こえなかったが、いったい何をーー
「えいっ!」
ぱくっ、ちるちる。
僕の隙をついて、玲は僕の飲み物に口をつけた。
「れ、玲? それって……」
「ん? 間接キスの話? 優くんが無防備だから、ちょっと飲んじゃった。 ごめんねっ!」
そういって、隣の小悪魔はとてとてと席に戻っていった。
こんな明梨を見たのは初めてだから、僕も玲も驚いていた。
そんな僕らの様子を感じ取ったのか、彼女は腕にうずめていた顔を少し上げる。
「……ちょっとー、どうしたの2人ともそんなびっくりした顔してさぁー」
「いや、明梨がそんな疲れてるところ初めて見たからさ」
「明梨、なんだかすごく疲れたみたいだね。 私たち先に買ってくるよ?」
「うーん、そうだね。 先に買ってきて。 待ってるから」
そう言うなり彼女はまた顔をうずめてしまった。
それを見た僕らは席を立つ。
今回は彼女たちを見習って、僕も少しだけカスタマイズとやらをやってみることにした。
注文が終わって待っていると、同じく注文を終えた玲が駆け寄ってきて、僕の腕をつんつんとつついてきた。
何となく不安そうな顔をしている気がする。
「どうしたの?」
「いや、明梨のことなんだけど……。 なんかあった? もしかしてこの前のことが原因だったりする?」
なんだ、気にしていたのか。
玲は、普段は天然というか、陽気なキャラを見せているが、よく人のことを観察していて、細かいところまで気配りができる。
それゆえに、クラスでも人気で人と関わる場面が多いだろうが、その中でも普通にやっていけているあたりが凄いところだ。
「この前のことは先生も言っていた通り、何も起きてないよ。 ただ、今日って成績の発表があっただろ。 それで、ちょっとした騒ぎになっちゃってな……」
「あ、やっぱりあの噂本当だったんだ」
「あ、あはは、やっぱり噂されてたか」
どこまで知っているかはわからないが、明梨とのことを思い出して無意識に目を逸らしてしまう。
「まったく、明梨も大胆だよねー。 そういうことなら私にもそれとなく伝えてほしいよ」
「大胆……? って、ちょっと待った! 多分、あ、明梨は俺のことが好きってわけじゃ……」
「だーってさー。 抱きつかれたんでしょ? どうせ明梨の胸とか当たって、優はそれどころじゃなかったと思うけど」
「ちょ、ちょっと何言ってるかわかんないっす……」
「ふーん……。 ちょっと意地悪してみたら、色々教えてくれたね。 優しいなー」
「あ……」
どうやら、要らぬことまで玲に悟られてしまったみたいだ。
正直、図星だった。
明梨に抱きつかれたとき、あの場所で抱きつかれたことも確かに恥ずかしかったが、それよりも明梨の胸が当たっているのがわかって頭が真っ白になっていた。
というか、それを玲が言うのか……。
実際、買い物に行ったときにはかなりラフな服装だったから、嫌でも目に入ってしまった。
明梨も胸は大きい方だと思うが、玲の方がかなり大きかった。
明梨自身、玲よりは胸が小さいとわかって、少し気にしているみたいだ。
僕が話題に触れたら変な眼で見られる気がしたから、もちろん見て見ぬふりをしていたが。
玲はともかく、明梨はそれでも大きい方ではあるので、彼女たちの人気の理由の1つでもあるだろう。
男子生徒が好奇の視線を送るのも無理はない。
何があったら、こんなに胸が大きくなるんでしょうかね……。
「……今、一瞬私の胸見たでしょ」
「いや見てないです」
「……本当は?」
「…………ちょっと見ました……」
「……とか言って?」
「……結構見てました…………。」
「うーん……。 素直でよろしい。 優だから許してあげよう」
え、許された。
「まあ、それもあるかもね。 明梨があんなに疲れてる理由」
「人気者は辛いよな……」
そうやって話していると、注文した飲み物が出来たみたいだった。
「抹茶クリームフラチーノ、チョコレートチップとソース追加、ホイップクリーム多めでご注文されたお客様ー?」
「あぁ、はい。 僕です」
「ありがとうございましたー」
もらった横でストローをさして待っていると、僕の後に飲み物を受け取った玲が少し驚いた顔をしていた。
「なんか変?」
「いや、優もカスタマイズするようになったんだなーって思って。 ほら、優は前までここにきたら普通のコーヒーばっかり飲んでたからさ」
「まあ、確かに。 でも、沢山種類があると、色々と試したくなっちゃう人なんだよね」
「その気持ち、すっごくわかる~! カスタマイズの種類も沢山あるし、飽きないんだよね!」
初めて自分でカスタマイズしたという謎の達成感を味わいつつ、口をつける。
抹茶のほのかな苦みのなかにチョコレートの甘さがブレンドされている。
増量したホイップのおかげでやわらかい口当たりになってすごく飲みやすい。
どうやら、初カスタマイズは成功したみたいだ。
満足している僕を見て、隣の玲は
「私、そのカスタム飲んだことないんだよねー。 …………明梨がそうするなら、私も……いい…………よね?」
なんか後半部分がよく聞こえなかったが、いったい何をーー
「えいっ!」
ぱくっ、ちるちる。
僕の隙をついて、玲は僕の飲み物に口をつけた。
「れ、玲? それって……」
「ん? 間接キスの話? 優くんが無防備だから、ちょっと飲んじゃった。 ごめんねっ!」
そういって、隣の小悪魔はとてとてと席に戻っていった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あなたのためなのだから
涼紀龍太朗
ライト文芸
高校の裏にある湖で、太一が正体不明の巨大な魚影を見たその日、幼馴染は謎の失踪を遂げる。
それから一年。失意の太一は、周りから距離を置くようになり、文化祭の準備にも気が乗らない無気力な生徒になっていた。
ある日の放課後、通学用の船が突如沈没する。怪我人はなかったものの、その日は教員も生徒も帰ることはできなくなってしまった。孤島となった学校に、様々な怪現象が襲い来る。
全体的にどうしようもない高校生日記
天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。
ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ベスティエンⅢ【改訂版】
花閂
ライト文芸
美少女と強面との美女と野獣っぽい青春恋愛物語。
恋するオトメと武人のプライドの狭間で葛藤するちょっと天然の少女と、モンスターと恐れられるほどの力を持つ強面との、たまにシリアスたまにコメディな学園生活。
名門お嬢様学校に通う少女が、彼氏を追いかけて地元で恐れられる最悪の不良校に入学。
女子生徒数はわずか1%という環境でかなり注目を集めるなか、入学早々に不良をのしてしまったり暴走族にさらわれてしまったり、彼氏の心配をよそに前途多難な学園生活。
不良たちに暴君と恐れられる彼氏に溺愛されながらも、さらに事件に巻き込まれていく。
人間の女に恋をしたモンスターのお話がハッピーエンドだったことはない。
鐵のような両腕を持ち、鋼のような無慈悲さで、鬼と怖れられ獣と罵られ、己のサガを自覚しながらも
恋して焦がれて、愛さずにはいられない。
CRoSs☤MiND ~ 過ぎ去りし時間(とき)の中で ~ 第 二 部 八神 慎治 編 ◎ 二情の狭間 ◎
Digital&AnalogNoveL
ライト文芸
Cross Mind 第二部 とある事故により未覚醒となってしまった少女によって変化してゆく友人らの中で心に思いを秘めたままただ唯一中立的な立場をとる男性主人公の一人である八神慎治の物語。果たして、彼の秘めた思いとは・・・。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる