拝啓、終末の僕らへ

仁乃戀

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第二章

解決策

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 月曜日っていうのは、ほとんどの人がネガティヴなイメージを持つ日だ。
 社会人ならばまた仕事が始まるだとか、そういうところだ。
 僕ら学生も、同じような負のイメージを抱いている人が多い。
 人によっては、友達に会えるから嬉しいというプラス思考が働くが、それもほんの一部。
 大抵、月曜日の朝は、空気が重い。
 だが、今日の雰囲気はいつもより少し違うようだった。



 「みんな、おはよう! って、今日は上坂さんがいないみたいだね。 珍しいな」

 澤谷先生が教室に来てようやく、クラスのみんなも違和感に気付いた。
 そう、明梨がいないのだ。
 もう少しでまた期末テストが始まるのだというこのタイミングで休むのは、かなり痛手になる。
 それを彼女もわかっているはずだから、よほどのことがない限り休むことはしないはずだが……。

 もしかしたら、昨日のあの事件がショックで体調を崩したのだろうか。
 メッセージだから顔を見ることはできなかったが、明梨はあのとき、一言も発していなかった。
 明梨は基本的に返信が早い。
 既読をつけて無視するようなことは絶対にしないような人間だろう。
 既読がついていないのなら見れていないだけだとわかるが、既読がついていることから彼女が読んでいることはわかった。
 そう考えると、かなりショックを受けていた、と考えるのが妥当だろう。

 「はぁ……」

 思わずため息を吐く。
 ただでさえこのクラスには気軽に話せる人もいないのに、明梨がいなかったら完全に孤立してしまう。
 それに、明梨と普段一緒にいることが多い僕は、下手をすればクラスの人から疑いの視線を向けられる可能性がある。
 今日は、自分の席でじっとしておこう。

 いつも通りホームルームが終わって、机に突っ伏してやり過ごそうと思っていたら、上から声がかけられた。

 「友潟君、ちょっとこっち来てくれ」

 ふと顔を上げると、澤谷先生が難しい顔をして僕のことを見ていた。



 「悪いな友潟君、朝から」
 「いえ、大丈夫です。 それで……明梨の話ですか」
 「やっぱりわかるか。 君は上坂さんと仲が良いからな。 ……どうだ、彼女と付き合えそうか?」
 「えっ?」

 思わず聞き返してしまった。
 突然の質問に驚きを隠せない。
 先生がどういう意図で質問したのか、全く読めない。
 明梨が休んでいることを聞きに来たと思っていたが……。

 「……わかりません」

 何か言おうと思って口から出た言葉は、否定も肯定もしないような曖昧な言葉だった。
 …………本当は、僕は彼女と付き合いたいとは思うが、確率が低すぎる。
 それに、こんな状況じゃ何もできない……。

 「……はは、優柔不断な男子は好かれないぞ?」
 「余計なお世話です。 ……先生、本当にこんなことが聞きたかったんですか?」
 「まあ、本題はこっちだ。 友潟君、上坂さんのことについて知っていることはあるか?」

 やはり聞いてきた。
 先生としては、1つでも情報を掴みたいのだろうか。

 「先生のところに、明梨から連絡は?」
 「彼女の母から連絡が来たが、頭痛、ということだ。 正直なところ、上坂さん自身が頭痛で休むというのは想像がつかない。 何かあったんじゃないかと思ってな。 それで、何かあったのか?」
 「それは……」

 どうするべきか。
 今、このクラスで本当に盗撮事件の話が回っているかいないかはわからない。
 ただ、ほとんどの人が明梨の欠席について驚いていたように見えたし、特に怪しい動きもない。
 ここで先生に話を出して、クラスに広まってしまえば逆に僕が疑われそうだが……。

 だが、澤谷先生は生徒のことをちゃんと考えて行動する先生だ。
 協力してもらえるのなら、伝えるべきだろう。

 「はい……実は」

 僕が先生に伝えようとしたとき、1時間目開始のチャイムが鳴ってしまった。

 「おっと、もう時間か。 1時間目は宿泊行事に関することを少しやった後、特に何もなければ自習にする。 時間を取ってしまって悪いが、自習の時間にもう一度話を聞かせてくれないか?」
 「わかりました」



 宿泊行事に関しては、軽い事務連絡くらいだったから、すぐ終わった。

 「今日は他にやることはないから、この後は自習だ。 ……友潟君」
 「……はい」

 そうして僕らは、一応会話が漏れないように階段の踊り場に向かった。

 「で、友潟君。 まず、君以外によく上坂さんと一緒にいる人はいるか?」

 かなり慎重に話を進めていくようだ。
 僕を疑っているのか、とも思ったが、表情からはそういった様子は感じられない。

 「はい、隣のクラスの与那嶺玲、という女子もよく一緒にいます」
 「そうか。 呼んできた方がいいか?」
 「任せます」
 「なら一応呼んでくるよ。 隣のクラスも自習みたいだったからな」



 ……少し待つと、先生が玲を連れて戻ってきた。
 普段は明るい玲も、何かを察したのか表情が固くなっているように感じた。

 「それで……知っていることを話してくれ」

 僕らは顔を見合わせ、玲が口を開く。
 簡潔に、しかし伝わりやすいように、慎重に言葉を選びながら彼女が説明する。
 ところどころ、僕が補足をして、先生に伝える。

 ひと通り話し終わると、少し間を置いて先生が口を開いた。

 「なるほど。 そういうことがあったのか。 それなら、君ら2人は普段通り過ごしてくれて問題ないよ。 後は僕が他クラスの教師と協力して対処するよ。 もちろん、迷惑はかけないから安心してくれ」

 今の話だけで誰がやったのかが分かったのか、かなり自信ありげに言い切った。

 「ほ、本当ですか?」
 「ああ、本当だ。 だから、君たちは普通の学校生活を送ってくれ」
 「……わかりました。 玲、大丈夫だ。 戻ろう」

 ここまで言われると僕らにはどうしようもないので、大人しく教室に帰り、それぞれの生活に戻ることにした。
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