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第二章
テスト返却
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僕は中学の頃からテストの返却は楽しみの一つだった。
仲が良い人とテストの結果を見せ合い、勝ち負けに一喜一憂する。
僕は、そうして笑い合っている時が楽しかった。
だが……。
「えーと、世界史の最高点は95点。 ……田中君だ。 おめでとう」
「よっし……!」
「国語の平均点は64点でした。 みんな、思ってたより簡単だったって感じだね。 最高点は……100点! 上坂さん! はい、みんな拍手ー!」
「やった……!」
「では、数学1のテストのトップ2を発表しまーす。 2位は友潟君。 96点。 で、1位は上坂さん。 98点でーす。」
「えっ……ほんとに?」
何故だろう……。
手応えは悪くなかったはずだが、どの科目を見てもクラス1位がない。
得意の英語だけは、と思っていたが、1位の座は他の人に持っていかれたようだ。
それに……明梨に関してはクラス1位をバンバン出してきている。
数学は1・A共に1位。
化学・地学においても1位と、かなりの好成績を収めている。
また、高得点者発表のときによく出てきた名前は、田中君だ。
世界史、地理ともに1位と、こちらも良い成績だ。
それに比べて僕の方は、少々納得がいかない結果になってしまった。
どの教科においても凡ミスが多く、普通なら絶対にしないようなミスが多発している状況だった。
他の人からしたらそれでも出来ている方だとは思うが、この進学校、それも成績優秀者が何人かいるこのクラスでは上位争いが非常に激しい。
1つのミスが命取りとなる、まるで本番の入試のような状況だった。
それに、今年度の最終成績で奨学生以外の学年順位上位5人には、来年度の分の奨学金が出るという制度もあるため、入学した段階で奨学生に選ばれなかった生徒は何がなんでもこの5枠を狙いにくる。
……そりゃあ、今まで通りワークをこなしてるだけだったら学年1位は取れないよな。
少し舐めていたようだ。
次からは、計画的にやっていく必要がありそうだ。
そして、今度はテストの打ち上げといった形でカフェに集まっていた。
「2人とも! テストお疲れ! 2人に教えてもらったおかげで英語と数学はかなり良かったよ!」
「あれ、僕が教えた化学は……?」
「あ、えーと…………。 こ、今回の範囲、暗記が多くて、ちょっと……ちょっとね? 事故っちゃったかなぁーー?」
「あーうん、それ以上は聞かないことにするね」
「そのちょっと哀れむような目は何よ!」
「まあまあ……。 とにかく、私も役に立てたみたいで良かった」
「とか言ってる明梨は、4科目でクラス1位……」
「嘘でしょ!?」
「いや、これも優のおかげだよ。 私がちょうど分からなかったところが出てきたから、優にテスト前に聞いて正解だった。 優がいなかったら、私あの問題解けてなかったし」
「アレーナンデボクハクラスイチイヲヒトツモトレテイナインダロウナーハハハ」
「ま、まだテストは4回もあるんだし、これから取り戻していけるよ!」
「ソウデスネ」
正直かなり心にきていたが、こうやっていじられても何故かこの2人は許せるから不思議だ。
明梨のフォローもどこか傷んだ心に優しい……。
「あのさ……やさぐれてるところ悪いんだけど、優は平均点何点だったの」
「え、それ聞いちゃう?」
「あ、それ私も気になる。 同じクラスなのに、優ってばテスト返却のとき全然点数教えてくれないんだもん」
「まあ別に見せてもいいか。 たしか何かの紙に計算したんだよな……あ、あった。 はいこれ」
そう言って僕は数学のテストで配られた計算用紙を手渡す。
2人はそれを覗き込むようにして見て…………目を丸くして言った。
「「優……全然悪くないじゃん……」」
「ほぇ?」
予想しない2人の答えに間の抜けた声が出る。
僕のテストの平均点は…………88点だった。
仲が良い人とテストの結果を見せ合い、勝ち負けに一喜一憂する。
僕は、そうして笑い合っている時が楽しかった。
だが……。
「えーと、世界史の最高点は95点。 ……田中君だ。 おめでとう」
「よっし……!」
「国語の平均点は64点でした。 みんな、思ってたより簡単だったって感じだね。 最高点は……100点! 上坂さん! はい、みんな拍手ー!」
「やった……!」
「では、数学1のテストのトップ2を発表しまーす。 2位は友潟君。 96点。 で、1位は上坂さん。 98点でーす。」
「えっ……ほんとに?」
何故だろう……。
手応えは悪くなかったはずだが、どの科目を見てもクラス1位がない。
得意の英語だけは、と思っていたが、1位の座は他の人に持っていかれたようだ。
それに……明梨に関してはクラス1位をバンバン出してきている。
数学は1・A共に1位。
化学・地学においても1位と、かなりの好成績を収めている。
また、高得点者発表のときによく出てきた名前は、田中君だ。
世界史、地理ともに1位と、こちらも良い成績だ。
それに比べて僕の方は、少々納得がいかない結果になってしまった。
どの教科においても凡ミスが多く、普通なら絶対にしないようなミスが多発している状況だった。
他の人からしたらそれでも出来ている方だとは思うが、この進学校、それも成績優秀者が何人かいるこのクラスでは上位争いが非常に激しい。
1つのミスが命取りとなる、まるで本番の入試のような状況だった。
それに、今年度の最終成績で奨学生以外の学年順位上位5人には、来年度の分の奨学金が出るという制度もあるため、入学した段階で奨学生に選ばれなかった生徒は何がなんでもこの5枠を狙いにくる。
……そりゃあ、今まで通りワークをこなしてるだけだったら学年1位は取れないよな。
少し舐めていたようだ。
次からは、計画的にやっていく必要がありそうだ。
そして、今度はテストの打ち上げといった形でカフェに集まっていた。
「2人とも! テストお疲れ! 2人に教えてもらったおかげで英語と数学はかなり良かったよ!」
「あれ、僕が教えた化学は……?」
「あ、えーと…………。 こ、今回の範囲、暗記が多くて、ちょっと……ちょっとね? 事故っちゃったかなぁーー?」
「あーうん、それ以上は聞かないことにするね」
「そのちょっと哀れむような目は何よ!」
「まあまあ……。 とにかく、私も役に立てたみたいで良かった」
「とか言ってる明梨は、4科目でクラス1位……」
「嘘でしょ!?」
「いや、これも優のおかげだよ。 私がちょうど分からなかったところが出てきたから、優にテスト前に聞いて正解だった。 優がいなかったら、私あの問題解けてなかったし」
「アレーナンデボクハクラスイチイヲヒトツモトレテイナインダロウナーハハハ」
「ま、まだテストは4回もあるんだし、これから取り戻していけるよ!」
「ソウデスネ」
正直かなり心にきていたが、こうやっていじられても何故かこの2人は許せるから不思議だ。
明梨のフォローもどこか傷んだ心に優しい……。
「あのさ……やさぐれてるところ悪いんだけど、優は平均点何点だったの」
「え、それ聞いちゃう?」
「あ、それ私も気になる。 同じクラスなのに、優ってばテスト返却のとき全然点数教えてくれないんだもん」
「まあ別に見せてもいいか。 たしか何かの紙に計算したんだよな……あ、あった。 はいこれ」
そう言って僕は数学のテストで配られた計算用紙を手渡す。
2人はそれを覗き込むようにして見て…………目を丸くして言った。
「「優……全然悪くないじゃん……」」
「ほぇ?」
予想しない2人の答えに間の抜けた声が出る。
僕のテストの平均点は…………88点だった。
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