拝啓、終末の僕らへ

仁乃戀

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第一章

勉強会

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 勉強会をすると決めてからは時間が経つのが早かった。
 授業を受け、彼女たちと昼食をとり、時々部活に顔を出す。
 そして空いている時間を見つけては勉強をする。

 やっていることは普段と変わらないはずなのに、やけに充実感があった。
 それだけ、毎日が楽しいということなのか。
 初めての感覚だ。
 やはり、僕は彼女たちに現在進行形で変えられているのだと感じる。

 そして、土曜日。
 勉強会の日だ。



 帰りのホームルームが終わると、また騒がしくなる。
 テスト前だから勉強するという人もいれば、テスト前で部活が休みだからと遊びに行く人もいるようだ。

 「優ー?」

 僕の名前を呼んだのは隣のクラスから来た玲だ。

 「今終わったところ。 明梨、行こう」
 「うん。 席、空いてるといいね」

 僕ら3人は学校を出て、最寄駅のカフェに向かう。
 週末だからか、少し混んでいるようだった。

 「隣に座るのは厳しいみたいね。 みんな離れて座ることになるけど、いいよね?」

 明梨の言葉に従って、僕らは別々に席につく。
 それぞれ飲みたいものを買って、2時間ほど勉強していると、だんだん席が空いてきた。

 「明梨、玲、席空いたよ」

 僕は休憩がてら席を立ち、2人を呼びに行く。

 「ちょうど良かった! 私、奨学生の2人に勉強教えてもらいたかったんだよねー」
 「私も、ちょっとわからないところがあって……優、教えてくれないかな」
 「ああ、僕で良ければ……」

 聞けば、玲は勉強が苦手な方らしい。
 それでも、この学校に入れている時点で十分勉強できるとは思うが……。
 そうして、僕が2人に勉強を教えていると、どこからか視線を感じた。
 2人が問題を解いている間、気になって周りを見てみるが、特に見知った顔もいない。
 まあ、ほとんど話さないからか、クラスの人の顔もよく覚えていないくらいだ。
 最寄駅だし、同じ高校の人が数人いたから気になったとかだろう。
 気にすることはないか。



 それから、2人に勉強を教えつつ自分もワークなどを解いていると、気付けば20時になっていた。
 大体14時くらいに来たと思うから、かなり集中して勉強できたみたいだ。
 2人の様子を見ても、勉強で少し疲れているみたいだったから、そろそろ帰ってもいい頃だろうと思って、話を切り出す。

 「もう疲れたし、帰る?」
 「そうだね。 玲も眠そうだし」
 「眠くなんかないですー」

 睡魔と必死に戦っていた玲に声をかけて、僕らは席を立つ。

 かしゅっ、ぱしゃ。

 荷物をまとめる玲を待つときに僕と明梨が話していると、どこからかシャッター音が聞こえた。
 それも何回も。

 不思議に思って音のした方を見るが、特にこれといった違和感はなかった。
 ここの飲み物は見た目もオシャレでSNSにあげられることが多いから、きっとそのために撮ったのだろう。
 髪を切って視野が広くなったから、きっと色々なことに敏感になっているのだろう。
 さっき視線を感じたこともその一つだ。
 慣れれば問題ない。

 「玲、先に外に出て待ってるよ」
 「うん、すぐ行く」

 そして僕と明梨だけ先にカフェを出る。
 またカメラのシャッターの音が聞こえたが、気にしないことにした。



 この勉強会が、この後に起こる出来事の引き金になるということは、まだ誰も知らない。
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