拝啓、終末の僕らへ

仁乃戀

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第一章

背伸び

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 「ありがとうございました~」

 そして僕ら3人はウニクロを出る。

 「いや~、良い買い物したんじゃない?」
 「そうだね。 良い感じだったと思うよ」

 僕らはアベクマートでスニーカーを買った後、H&Nやウニクロなどに寄って上下の服も買い揃えた。
 セールもしていて安くなっていたということもあり、予算よりも安く抑えることができた。
 買ったものは黒がベースのローカットのスニーカーに、黒のハーフパンツ、白に黒のストライプが入ったシャツと黒のコーチシャツという、モノトーンでまとめているシンプルな服装を意識したそうだ。
 僕はときどき『これは?』といった風に気になるものを聞いていたが、ほとんど却下されてしまった。
 どうやら僕は、ファッションというものはシンプルなものよりも派手めなものにした方がいいという先入観に囚われてしまっていたようだ。
 多分、彼女たちに言われなかったから気付けなかっただろうから助かった。



 昼ごはんは買い物の途中で食べたが、歩き回った後だからか、また何かを口にしたくなった。
 そして3人でどこかに店がないかと探していると、何回か行っているカフェがあった。

 「どこにでもあるんだな、これ」
 「そりゃー、有名チェーン店ですし? ここで少しお茶したら帰ろっかー」

 店内は意外と空いているようだ。
 席をとって、3人で一緒に買いに行くことにする。

 「え、新作やってんじゃん! 飲んじゃおっかな、でもカロリーがなぁー……」
 「玲は運動してるから大丈夫じゃない? 私なんて料理部で作ったものを食べたりしてるから、余計に大変だよ」
 「でも、気にしちゃうじゃーん! てか、優も結構細くない? 羨ましいよほんと!」
 「僕は少食だし、食べてもあんまり太らないらしいからね」
 「それ他の女子にさらっと言ったら痛い目見るよ、優……」
 「肝に銘じておきます……。 まってまって玲ごめんって無言で詰め寄らないで」

 それにしても、明梨や玲は色々な種類の飲み物を飲んだことがあるらしいが、僕は至って普通のコーヒーしかまだ飲んだことがない。
 これを機に色々試してみようか?

 「優、今回もコーヒー?」

 僕が悩んでいると明梨が聞いてきた。

 「それなんだけど、コーヒー以外のも試してみようかなって思っててさ。 でも、種類多すぎてどれを飲んだらいいかさっぱり分かんないんだよね」
 「それなら、私と一緒のやつにする? ちょうど昨日ドリンクチケットっていう、クーポンみたいなものを受け取ったから」
 「ええと、それってどういう……」

 まさかとは思うが、明梨が頼んだものをシェアしようとしているのだろうか……。
 え、もしかして間接……?

 「何考えてるのかわからないけど、多分違うよ。 私が頼んだものと、サイズも味も全部同じドリンクをもう一つ無料でもらえるってこと。 私が飲むのは期間限定のドリンクだけど、優が嫌じゃなければ美味しい感じにカスタムしてあげるよ?」
 「……ん? 期間限定? カスタム? とりあえずおいしければなんでもいいです」
 「今思考停止したでしょ」
 「せざるを得ないだろ……」

 要するに、一つドリンクを買う値段でもう一つ付いてくるというものらしい。
 ならば、お言葉に甘えて彼女に注文してもらうしよう。

 「じゃあ、明梨が好きなようにすればいいよ。 特に飲めないものとかないし。 あ、お金は僕が払うよ。 色々やってくれたし、少しでも恩返ししておきたいから」
 「え? ほんと? なら奢ってもらおっかなー」

 一つ分の値段だからそれほど値段も高くはないはずだし、僕の服選びをしてくれたお礼として彼女のために何かしてあげたかった。
 だからこの出費もあまり痛くはないように感じる。
 玲も奢って欲しそうにちらちらとこちらを見ていたが、見て見ぬふりをした。
 明梨が何やら呪文を唱えるかのように店員さんに注文を伝え、僕がお金を払う。
 そして僕は戦慄した。
 ドリンク1本分の値段のはずなのに…………なんでコーヒーの値段の2・3倍の値段がするんだ、と…………。
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