拝啓、終末の僕らへ

仁乃戀

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第一章

週末の過ごし方

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 「はい。 今日はここまで。 今日出した課題、来週の月曜日までには解いてこいよ」

 今週最後の授業が終わる。
 土曜日は基本的に午前授業なので、4時間目が終わるとクラスのあちこちから楽しそうな声が聞こえてくる。

 「ねね、駅前に新しいカフェ出来たらしいよ!」
 「嘘!? 行こ行こ!」

 「今日カラオケ行かね?」
 「え、行っちゃう? お前ら課題やらなくていいの?」
 「大丈夫だろ、あんなの10分ありゃ終わるさ」
 「じゃあ行くかー」

 クラス内のコミュニケーションもかなり活発になってきた。
 仮入部期間は部活動の参加が(絶対に1回は参加する必要があるが)強制ではないため、この時期の週末はほとんどの人が部活には出ず、遊びに出かける。
 僕は気付けばまた1人になろうとしていた。
 ああ、またか。
 機会があっても結局人は変わらないんだ。
 人にもよるが、僕はそっちの部類には属することができなかったみたいだ。

 こうなってしまったらもう仕方がない。
 不幸中の幸いと言うべきか、こういう状況は嫌というほど見てきたので、もう慣れてしまった。
 駅前を少し散歩してから帰ろうか。
 そう思っていた僕に声がかかった。
 明梨だ。

 「優、おつかれ」
 「うん、おつかれ。 明梨はこの後誰かと遊びに行くの?」

 心なしか彼女の表情がいつもよりも明るく見えたからそう聞いてみたが、これじゃ僕が『予定空いているんだったら遊びに行かないか?』と誘っているようなものだ。
 使う言葉を間違えたか?
 自分の発した言葉を深読みしていると、彼女が口を開く。

 「私が声をかけた理由、わかる?」

 僕の質問に対し、曖昧な返事が返ってきた。
 彼女が僕に声をかけた理由で考えられることは主に2つ。
 1つは1人でいたから。
 優しい彼女のことだし、自分で言うのも何だが、みんなが遊んで帰っている中1人でいたのが気の毒そうに見えたのだろう。
 もう1つは、彼女が僕を遊びに誘いたかったから。
 個人的にこの可能性は無いに等しいが、最近の彼女はよく僕に絡んでくるから、なくはない。
 他の人ではなく彼女だから特に僕は気にしていないが、彼女自身僕のような陰キャラと関わるのは普通ならば嫌なはずだ。
 彼女は人気者だから友達は沢山いるだろうし、僕じゃなくてもいいはず。

 結局僕は答えが分からなくなって聞き返す。

 「分かんない。 どうしたの?」
 「どうしたもこうしたもないよ。 ちょっとカフェにでも行こうよ。 玲も誘ってるからさ」

 マジか。
 思考が停止する。

 思ってもいなかった答えに固まっていると、隣のクラスからとてとてと小走りで僕らのクラスに向かってくる足音が聞こえた。

 「2人とも、お待たせー!」

 玲だ。
 どうやら冗談ではないらしい。
 友達とカフェに行くなんて、人生初の経験だ。
 それも、学校で人気の女子2人と。

 クラスでは相変わらずだが、意外と充実した生活を送れていると思うと口元が緩む。
 外は春の陽気に包まれてぽかぽかと暖かかった。
 春風が僕の背中を押した。
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