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第四章 魔女の国

059-3

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 パフィが生まれたことと、北の国に魔力の多い人が生まれやすくなることがつながらない。

「ラズロさん、アマーリアーナ様のおっしゃっていたこと、分かりましたか?」
「……あれ、理解させるつもりで話してないだろ」

 ラズロさんも分からなかったみたい。

「南側の魔力を魔女様が吸っちまった、って話でもないだろうしなぁ」

 それだとノエルさんたちも魔力が少なく生まれてるはずだし。

「ダグ先生?」

 なにか真剣に考えているようで、眉間にしわが寄ってる。
 話しかけられたことに気がついて、ダグ先生がこっちを見る。

「あぁ、すまないね。ちょっと気になることがあったものだから」

 気になること?

「前にアシュリーくんと冬の王の話をしただろう?」
「はい」
「気になってね、調べてみたんだよ」

 ダグ先日はこめかみを指で押さえて、息を吐いた。

「冬の王に関する文献を調べたところ、五百年より前にはなくってね、あってもそれ以降だった」
「魔女様と冬の王に関連があるってのか?」

 いや、と答えてダグ先生は首を振った。

「いくら魔女といえど、生まれて間もないんだし、それはいささか強引だろうと思うのだがね……私も関連があるのかと訝ってしまう」
「魔女様のことは置いといても、なにかがあったんだろうな、冬の王を生み出すなにかが」

 南の国や西の国でもスキルを与えられる人はいるけど、魔力が足りないから、魔法使いや魔術師になれなくなってしまった。
 この国もたぶんそう。

 五百年前に生まれたパフィ。
 同じぐらいのときに出てくるようになった冬の王。

 先生たちが言うように、そのことがつながっているような気がしてしまう。
 思い込みは駄目だって分かるけど、同じ頃に大きなことが続けて起きたなら、そう思ってしまうものだと思う。

「冬の王って、なにがしたいんでしょうか?」

 魔力の高い魔物に取り憑いて、人のいる場所を目指すという冬の王。
 いつも退治されているから、冬の王が何のためにそんなことをしているのかが分からない。
 魔物だし、関係ないのかな。

「より高い魔力を求めてるんじゃないかと噂だよ」

 今度はノエルさんが来た。

「魔力ですか?」

 そう、と答えて僕の隣に座る。

「コーヒーでいいな?」
「うん、ありがとう」

 ラズロさんが厨房に向かう。

「高い魔力を持つ魔物に憑依して、他の魔物たちを引き連れて移動するんだ、冬の王は」
「最初から人間に憑依するとかはできないんですか?」
「そうなんだよね。それができないのは、なにか理由があるのかも知れない」
「北の国がやってるとか?」
「いや、それはないと思うよ。毎回被害が甚大だからね」

 それが毎年のように起きてるとなると、北の国がわざとやってるってことではないのか。
 うーん、僕には分からないな。

「今回のことで西の国と我が国は裏でやりとりをしていてね」

 西の国。今回北の国から要請を受けてるという国だよね。

「北の国は、氷花の魔女 キルヒシュタフ様と少なからず縁があるようなんだ」

 ノエルさんが大きなため息を吐く。

「キルヒシュタフ様は、焦熱の魔女 ダリア様に並んで、創始の魔女とも呼ばれるんだ。
魔女の強さはその身に宿す時間が全てだと聞いたことがある」

 キルヒシュタフ様はたぶん、パフィのように助けてくれたりはしないんだろうな。
 でも、魔女はきまぐれだから、なにがきっかけで動きだすか分からない。
 パフィとキルヒシュタフ様がぶつかるようなことはないとは思うけど、同じ魔女だし。
 でも、なんだか胸がざわつく。
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