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第四章 魔女の国
055-2
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仔牛の骨とスジ肉、野菜を六日ほど煮込んだ。量が多いから三回に分けて。
一晩置いておくと、骨やスジ肉から出てきた脂が上に浮かんで固まる。柔らかいけど、揺れない固さ。
脂の塊なんだけど、これがフルールは大好きみたいで、お皿を持って僕の横に立つ。
僕としても脂は要らないから、フルールが美味しく食べてくれるのは嬉しいし助かる。
スプーンで脂を掬って、フルールのお皿にのせる。鼻をひくひくさせて、耳をぴょこぴょこと揺らす。
脂をお皿にのせて、食べていいよと声をかけると、茶色の少しだけ透明な脂をフルールは口に入れる。
さすがに脂は噛む音がしないけど、つるりと口に吸い込まれていくから、なんだか美味しそうに見えちゃう。
「美味しそうに食べるなぁ」
僕が声をかけたからか、フルールは食べるのを止めて僕を見た。
「ごめんごめん、食べていいよ」
フルールの小さなおでこを撫でて、立ち上がる。
ザックさんが教えてくれた作り方のとおりに煮込んだダシと、野菜や骨を潰しながら濾して分ける。
潰した野菜たちは捨てずに、もう一度煮る。また炒めておいたタマネギや冬ニンジン、ニンニクを足して、水を注いで煮込む。
鍋からたちのぼる湯気は、暖炉の煙突の中をのぼっていく。
「アシュリー、おはよー」
リンさんはカウンターに腰かけた。
「おはようございます、リンさん」
寮の食事がなくなったので、朝食も食堂で食べる人が増えた。
朝は仕込んでおくこともできないので、すぐに食べられるものしか用意しなくていいのは嬉しい。
「今日の朝食なぁにー?」
「今日はタマネギの酢漬けと腸詰と野菜のスープと平パンです」
「全部食べるっ!
寒い冬に朝から温かいスープ! 寮のごはん作ってくれてた人には申し訳ないけど、ほんっとアシュリーが来てくれて良かった! ごはんは美味しいしあったかいし、お風呂も入れるし!」
「喜んでもらえて僕も嬉しいです」
ふと、パフィの言葉を思い出す。
もっと魔力をと欲しがった時のこと。
あの時は自分に与えてもらったスキルをハズレだと思ってた。でもこうして僕のできることで喜んでくれる人がいて、必要とされて嬉しい。
もし僕に魔力がもっとあったとしても、もっと多く持ってる人がいて、たとえばティール様、ノエルさん、トキア様のような凄い人たち。そんな人たちを前にしたら同じようにもっと魔力があったらって思ってそう。
でもノエルさんたちを見てると、本当に大変そうで。なんていうか、あればいいんじゃないんだなって思った。あったらあったで大変なんだって思った。
器にスープを入れて出す。
「熱いので、気をつけてくださいね」
「ありがとー!」
僕とラズロさんの食堂改革は進んで、カトラリーも使う人に勝手に取ってもらうことにした。このへんはノエルさんやティールさんが提案してくれた。
フォークもスプーンも使いたい人もいれば、フォークだけでいいって人もいるから。皿も置いておく。
パンも石窯で焼きあがったものを大皿にのせておく。酢漬けも好きな量を取ってもらう。
忙しい人はパンだけ取って食堂を出て行くこともあったりする。寝坊しちゃった人とか。
食べ終わった食器は、皿を置くカゴ、カトラリーを入れるカゴ、器を入れるカゴを用意しておく。
食べ残してしまった人は、フルールのお皿に移す。
こうしておいて、たまったカゴをラズロさんが持ってきてくれて、新しいカゴに交換する。僕には重くて持てないから。兵士の人たちはたまに持ってきてくれたりと、助けてもらってる。
食べ残しが減って、僕とラズロさんの計画は上手くいっていて、おかげで二人で頑張れてる。
できないことがあっても、別の方法でできたらいいんだって知ってる。
一晩置いておくと、骨やスジ肉から出てきた脂が上に浮かんで固まる。柔らかいけど、揺れない固さ。
脂の塊なんだけど、これがフルールは大好きみたいで、お皿を持って僕の横に立つ。
僕としても脂は要らないから、フルールが美味しく食べてくれるのは嬉しいし助かる。
スプーンで脂を掬って、フルールのお皿にのせる。鼻をひくひくさせて、耳をぴょこぴょこと揺らす。
脂をお皿にのせて、食べていいよと声をかけると、茶色の少しだけ透明な脂をフルールは口に入れる。
さすがに脂は噛む音がしないけど、つるりと口に吸い込まれていくから、なんだか美味しそうに見えちゃう。
「美味しそうに食べるなぁ」
僕が声をかけたからか、フルールは食べるのを止めて僕を見た。
「ごめんごめん、食べていいよ」
フルールの小さなおでこを撫でて、立ち上がる。
ザックさんが教えてくれた作り方のとおりに煮込んだダシと、野菜や骨を潰しながら濾して分ける。
潰した野菜たちは捨てずに、もう一度煮る。また炒めておいたタマネギや冬ニンジン、ニンニクを足して、水を注いで煮込む。
鍋からたちのぼる湯気は、暖炉の煙突の中をのぼっていく。
「アシュリー、おはよー」
リンさんはカウンターに腰かけた。
「おはようございます、リンさん」
寮の食事がなくなったので、朝食も食堂で食べる人が増えた。
朝は仕込んでおくこともできないので、すぐに食べられるものしか用意しなくていいのは嬉しい。
「今日の朝食なぁにー?」
「今日はタマネギの酢漬けと腸詰と野菜のスープと平パンです」
「全部食べるっ!
寒い冬に朝から温かいスープ! 寮のごはん作ってくれてた人には申し訳ないけど、ほんっとアシュリーが来てくれて良かった! ごはんは美味しいしあったかいし、お風呂も入れるし!」
「喜んでもらえて僕も嬉しいです」
ふと、パフィの言葉を思い出す。
もっと魔力をと欲しがった時のこと。
あの時は自分に与えてもらったスキルをハズレだと思ってた。でもこうして僕のできることで喜んでくれる人がいて、必要とされて嬉しい。
もし僕に魔力がもっとあったとしても、もっと多く持ってる人がいて、たとえばティール様、ノエルさん、トキア様のような凄い人たち。そんな人たちを前にしたら同じようにもっと魔力があったらって思ってそう。
でもノエルさんたちを見てると、本当に大変そうで。なんていうか、あればいいんじゃないんだなって思った。あったらあったで大変なんだって思った。
器にスープを入れて出す。
「熱いので、気をつけてくださいね」
「ありがとー!」
僕とラズロさんの食堂改革は進んで、カトラリーも使う人に勝手に取ってもらうことにした。このへんはノエルさんやティールさんが提案してくれた。
フォークもスプーンも使いたい人もいれば、フォークだけでいいって人もいるから。皿も置いておく。
パンも石窯で焼きあがったものを大皿にのせておく。酢漬けも好きな量を取ってもらう。
忙しい人はパンだけ取って食堂を出て行くこともあったりする。寝坊しちゃった人とか。
食べ終わった食器は、皿を置くカゴ、カトラリーを入れるカゴ、器を入れるカゴを用意しておく。
食べ残してしまった人は、フルールのお皿に移す。
こうしておいて、たまったカゴをラズロさんが持ってきてくれて、新しいカゴに交換する。僕には重くて持てないから。兵士の人たちはたまに持ってきてくれたりと、助けてもらってる。
食べ残しが減って、僕とラズロさんの計画は上手くいっていて、おかげで二人で頑張れてる。
できないことがあっても、別の方法でできたらいいんだって知ってる。
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