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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

046-4

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 メルにはベトベトになるまで舐められて、コッコには突かれすぎて袖に穴が空いてしまった。
 ネロは膝の上から動かない。

「ごめんね、寂しい思いをさせて」

 普通の鶏のコッコと、猫のネロは旅に連れていけない。メルは一応魔物だけど、のんびりやさんはだから、僕の事をちょっと見かけないなーぐらいにしか思ってない気がする。

 フルールが裏庭のダンジョンから戻って来たのは、ついさっき。心なしかご機嫌に見えるフルールの小さなおでこを撫でる。

『水晶を見せろ』

 ポケットから取り出し、パフィの前に置く。

『ふむ。順調に魔力を蓄えているようだな』

「これ以上大きくなったりする?」

 あんまり大きくなると、持ち運びが大変そうで、それが心配。

『いや、それ以上は大きくなるまい』

「そっか、良かった」

 ほっとした。大きくなったトラスも持ち運ぶのもそうだし、馬車に乗ったとき、一緒に乗るクリフさんやノエルさんに狭い思いをさせたくないし。

『あのおしゃべり、王子の命を受けて一目散に王都から出て行ったぞ』

「レンレンさん?」

『そうだ』

 ポーションを作るのにミズル草を使うのは、どうやらこの国だけらしい。
 いつもミズル草を採集しに行く場所に向かったみたい。

『魔法使いと騎士も一緒にな』

 にやりとパフィが笑う。

 ノエルさん、クリフさん……頑張って……。

『そういえばおまえ、とろみの根を持って帰って来ていたな』

「あ、パフィも知ってるんだね」

 粉にして水に溶かせばとろみになると言う根っこ。
 レンレンさんの本にはアダの根と書いてあった。

『あれは薬にもなるからな』

「スープに入れてみたいと思ってるんだ。温かさが長持ちしそうじゃない?」

『そう思ってやって見た事があるがな、固まってしまって上手くいかなかったぞ』

 ふん、とパフィが鼻を鳴らす。
 粉もミルクに溶かす時に少しずつやらないと固まってしまう。粉状のものと液体を混ぜるときは少しずつ、が良いのかも知れない。

「ちょっと試してみるね。もしかしたら上手くいくかも知れないし」

『失敗したら許さんぞ』と言ってパフィはにやりと笑った。

「頑張ります」

 食堂に戻って、アダの根を洗う。
 マイロさんたちが結構取って来てくれたので、たっぷりある。粉にすれば日持ちもするし、これから寒くなるから温かさを長持ちさせられるとみんなもよろこんでくれるかな。

「翌日にはすぐに料理なんて、アシュリーは真面目だな。少しは休んで良いんだぞ?」

 ラズロさんがやってきた。

「僕がいない間、ラズロさんとナインさんが頑張ってくれたんですから、休むんならラズロさんたちじゃないですか?」

 なんだかんだ言っても、僕は馬車に乗ってるだけだったし。

「ありがとな、アシュリー」

 嬉しそうに笑ったラズロさんは、僕の頭をわしわしと撫でた。

「それで? なんだこれ?」

「アダの根、と言うものだそうで、乾燥させて粉にすると、液体にとろみを付けられるんだそうです」

「アダ粉の元か!」

 ラズロさんも知ってるのか。

「若い頃に行った街でな、とろみのついた料理を食った事があってな、何が入ってるのかと聞いたらアダの粉だと教えられたんだよ。あんまり見かけねぇし、見かけても手間がかかるからってんで値が張るからな、好んでは買わない」

 根っこを持ち上げて、これがなぁ、と呟くと、「よっし、二人でやろうぜ。そうすりゃ早く終わって休めんだろ」と言って腕まくりする。

「あ、そうしたら、出店に行きたいです」

「行こうぜー」
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