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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 第五層の水晶は随分大きくなってきた。コッコの卵ぐらいはある。卵のようにだ円の形をしている訳ではなく、表面はデコボコしてる。
 ふわふわと空中に浮かんで、キラ、キラと、光るのが、まるで息をしてるみたいに見える。

「パフィ、核ってどのぐらいまでを言うの?」

 魔力を注ぎ終えて、気になっていたことをパフィに聞いてみた。
 出来上がりがどんなものなのか分からないから、この作業をいつまで続けるのか気になる。
 この作業を始めてから、魔力が空っぽになるからと沢山食べるようになってしまった。
 ラズロさんたちは良いことだ、って言うけど。

『核はとっくに出来ている』

 そうなんだ。
 よく分からないけど、順調に大きくなってるってことだと思う。
 
「この水晶がどうすごいのかがよく分からないんだけど」

『おまえには暇さえあれば魔力を注がせ続けたからな、大分育った。
今の大きさでそうだな……この国なら一瞬で消し飛ぶ』

 ……これ、育てて良い奴なのかな?
 北の国とかが知ったら欲しがるんじゃないのかな?
 不安になった僕はそのことを尋ねた。

『魔力水晶は魔法使いには御し難いものだ。魔力の純度が高すぎて制御出来まい。
魔法使いはな、己の中の魔力を使う事には慣れているが、外から魔力を取り込む事や、水晶のような外にある魔力を使う事には不慣れだ。
よしんば使えたとして、何処かの国もろとも使用者が滅ぶだけだ』

 そう言ってにやりと笑う猫。

 今、さらりととんでもないことを言われてしまった。

「関係ない人を滅ぼすのは駄目だよ……」

 パフィは魔女だからなのか、そう言った所が僕達とは違う。
 僕をからかうのにあんな言い方をしているんだろうけど、嘘は吐かないから、そうなんだろう。

「アマーリアーナ様は一体どれぐらい大きくなったのを欲しがってるんだろう?」

 この大きさで一つの国を滅ぼせるぐらいに大きいなら十分なんじゃないかって思ってしまうけど、ヴィヴィアンナ様が予言をするには足りないのかな?

『予言はな、己が精神だけを未来に飛ばすものだ。
垣間見るだけでも魔力を大きく消耗する。
だが、ヴィヴィアンナならば水晶を必要とせずとも未来は見える筈だ』

 毎日魔力を注いでいるうちに愛着みたいなものがわいてきて、僕は勝手に水晶に名前を付けて呼んでいる。
 名前はトラス。

「またね、トラス」

 振り向いて水晶に向かって手を振る。
 そんな僕をパフィは呆れ顔で見る。

 第五層を後にして、階段を登る。
 僕の前をパフィがトトトトッ、と軽い音をさせて登っていく。
 登りながらパフィが話す。

『それなのに水晶を必要とすると言う事は、見れていないと言う事だ』

「ごめん、よく分からない」

 見れていないから水晶が必要?

『未来視を邪魔されているんだろう』

 パフィは進むのを止めると、振り返って言った。

『魔女の邪魔が出来るのは魔女だ』

 また進み出したパフィの後を追いかけながら考える。

 魔女の邪魔を出来るのは魔女。
 焦熱の魔女様か、氷花の魔女様が、予言の魔女ヴィヴィアンナ様の未来視の邪魔をしてる?
 だから相手の魔女を上回る力を使って、未来を見ようとしてる?

「パフィはどれぐらい分かってるの?」

 本当はもう少し分かってるんじゃないかって思う。
 でも、魔女の言葉には力があるから言わないだけで。

『秘密だ』
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