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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事

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 香辛料の種が届いた。
 植える為の道具を買いに出かける支度をしていると、ベッドの上でくつろいでいるパフィが声をかけてきた。

『何処に行くつもりだ?』

「スコップとかじょうろを買いに行くんだよ。種が届いたから」

『馬鹿かおまえは』

「え? だって、種を植えるでしょ?」

『おまえまさか、種を植えて地道に育てようとしてるんじゃあるまいな?』

「その通りだけど?」

 いくらダンジョンの魔力で育つとは言っても、一度はちゃんと育てないと駄目だってナインさんが言ってたと伝えると、パフィの、と言うかマグロの二又のしっぽがぱしぱしとベッドを叩いた。

『いつ出来るのだ、香辛料は』

「一~二年?」

 草じゃないなら、何年もかかると思う。

『愚か者めが。さっさとダンジョンに行くぞ』

「え?」

 なにがなにやら分からないでいると、パフィがジャンプしてきたので慌てて抱き止める。

『種だけ持て』

 僕の腕の中でブツブツと文句を言うパフィ。
 香辛料が育つのに時間がかかる事が許せないのかな?
 でも、こればっかりはどうしようもないよね。

 種を持ってダンジョンに入る。
 香辛料を植えるのは第二層。
 今回手に入った種は胡椒の種。

 第二層に降りると、パフィは僕の腕から下りて先を歩いて行く。

『胡椒はな、種から発芽させる事が非常に難しい』

 え、そうなの?

『挿し木により育てるのが普通だ』

 さしき?

『詳しい説明が知りたくばあの魔法薬学の小僧に聞くと良い』

 レンレン様なら確かに知ってそうだけど……。

「あー……うん、必要になったらそうするね」

 僕の答えにパフィはにやりと笑う。

『簡単に言えば、さっきも言ったように種からの育成は難しく、木として三年程は経たねばならん』

「三年!」

 思っていた以上にかかるんだ。

『採取出来たとしても病気になりやすい。
まぁ、簡単に言えば、それなりに面倒だと言う事だが』

 ふむふむと頷いていると、パフィのしっぽがぐるぐると回転した。

『私は待つのが嫌いだ』

 うん、知ってる。

『だから、こうする!』

 ポケットに入れていた胡椒の種が勝手に外に出て、空中に浮かんだ。

『ボサッとするな。このあたりに適当に木が育つように想像しろ』

「あ、うん」

 言われた通りに木が芽吹くのを思い浮かべる。
 地面からニョキニョキと出てきた芽はぐんぐん育って上に伸びていく。
 と、思ったら先を切られた。パフィの爪でスパッと。
 さしきの大きさは僕の身長ぐらい。

「えっ」

『このぐらいで良い。挿し木にするだけだからな』

 いまいちさしきがよく分からないけど、パフィに言われる通りにする。
 空中に浮かんでいた種がさしきの根元に沈むように埋まっていく。
 二又のしっぽがぐるりと回転して、土の中から芽が出てきた。
 さしきにしがみつくように芽が伸び、つる茎が伸びていく。

「すごいね。あっという間に育ってく」

『待つ気はない。出来たての香りの良い胡椒をたっぷり使ったおまえの料理が早く食べたいからな。
それに一度育てば後はダンジョンの魔力が胡椒を育てるからな、一回だけなら手を貸してやろう』

 美味しいものを食べる為なら、面倒くさがりなパフィも手伝う気になるんだね。
 そこまでするぐらい、胡椒って良い香りなのかな?
 ちょっと楽しみになってきた。
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