125 / 271
第二章 マレビト
031-2
しおりを挟む
ネロは毎日のように花だったりエノコログサを持って来ては、パフィにまじないをかけてもらっていた。それを持って部屋を出て行くんだけど、たぶん、間違いなく、第一王子の所に。
大丈夫なのかなぁ、と不安に思いながら、食堂を出て行くネロを見ていたら、隣で洗い物をしていたラズロさんが話し始めた。
「黒猫が出入りしては、ベッドから起き上がれない第一王子の遊び相手をしているそうだぞ。王子も喜んでるみたいだけどな」
うん、ネロですね……。
「しかもその猫が持って来た花やエノコログサが王子を守ってるって話だ。
それで侍従も一人、暇を出されたって言うしなぁ」
「その、侍従さんは一体何をしたんですか?」
エノコログサにかかったまじないが、どんなものなのかが気になって、詳しい話を聞きたくなった。
「なんでも、侍従が水にこっそりと毒を入れようとした所、エノコログサが光って、水が濁ったんだと。
他の侍従がそんな濁ったものを殿下に飲ませる気かと詰め寄ったら、こんな色になる筈ではと、自白したとかなんとか、って話だ」
あー……パフィ得意のまじないだね、それ。
村で、賭け事をして家のお金に手をつけてしまったおじさんがいて、奥さんがどれだけ問い詰めても賭け事なんてしてないと言い張っていたら、パフィがやってきておじさんにまじないをかけたんだよね。
そうしたら、賭け事以外の内緒にしていたことも全部話しちゃって、大ゲンカになって、村中を巻き込んだことがあったっけ……。
「殿下が無事で良かったです」
料理に毒を混ぜられないから、別の形で毒を盛ろうとしてるってことだよね。
第二王子側の人が誰も第一王子に近付けないようになったら、僕の方に来るのかな。
たぶんだけど、パフィはそうしたいんだろうし。その為にネロにまじないのかかった花だったりエノコログサを持たせて第一王子の元に行かせてるんだろうなぁ。
ネロは最近僕が構ってあげられてないから、暇みたいだし、第一王子に遊んでもらってるんだろうな。ごめんね、ネロ……。
でも、王子も喜んでるみたいで、それは良かったな。
ベッドから出られない王子を、ネロが少しでも癒してくれてると良いんだけど。
「ところでアシュリーさん、わたくし、謝らないといけないことがあるんです」
「なんですか?」
氷室で見かけた、大量のいものことかなぁ。春のいもは、それはそれで美味しいよね。
「春にもいもって穫れるじゃないですか?」
やっぱりそうみたい。
こんな、かしこまった言い方しなくても、怒ったりしないのに、いつもこんな風に言うラズロさんに、笑ってしまう。
「ニョッキにしますね」
「さすがアシュリー!! オレ、前にアシュリーが作ってくれたクリームソースで食ってみたい!」
「ラズロさんも手伝って下さいね」
「おうよ!」
クリームソースなら、第一王子にも食べてもらえそうだし、身体にも良さそうだよね。
大丈夫なのかなぁ、と不安に思いながら、食堂を出て行くネロを見ていたら、隣で洗い物をしていたラズロさんが話し始めた。
「黒猫が出入りしては、ベッドから起き上がれない第一王子の遊び相手をしているそうだぞ。王子も喜んでるみたいだけどな」
うん、ネロですね……。
「しかもその猫が持って来た花やエノコログサが王子を守ってるって話だ。
それで侍従も一人、暇を出されたって言うしなぁ」
「その、侍従さんは一体何をしたんですか?」
エノコログサにかかったまじないが、どんなものなのかが気になって、詳しい話を聞きたくなった。
「なんでも、侍従が水にこっそりと毒を入れようとした所、エノコログサが光って、水が濁ったんだと。
他の侍従がそんな濁ったものを殿下に飲ませる気かと詰め寄ったら、こんな色になる筈ではと、自白したとかなんとか、って話だ」
あー……パフィ得意のまじないだね、それ。
村で、賭け事をして家のお金に手をつけてしまったおじさんがいて、奥さんがどれだけ問い詰めても賭け事なんてしてないと言い張っていたら、パフィがやってきておじさんにまじないをかけたんだよね。
そうしたら、賭け事以外の内緒にしていたことも全部話しちゃって、大ゲンカになって、村中を巻き込んだことがあったっけ……。
「殿下が無事で良かったです」
料理に毒を混ぜられないから、別の形で毒を盛ろうとしてるってことだよね。
第二王子側の人が誰も第一王子に近付けないようになったら、僕の方に来るのかな。
たぶんだけど、パフィはそうしたいんだろうし。その為にネロにまじないのかかった花だったりエノコログサを持たせて第一王子の元に行かせてるんだろうなぁ。
ネロは最近僕が構ってあげられてないから、暇みたいだし、第一王子に遊んでもらってるんだろうな。ごめんね、ネロ……。
でも、王子も喜んでるみたいで、それは良かったな。
ベッドから出られない王子を、ネロが少しでも癒してくれてると良いんだけど。
「ところでアシュリーさん、わたくし、謝らないといけないことがあるんです」
「なんですか?」
氷室で見かけた、大量のいものことかなぁ。春のいもは、それはそれで美味しいよね。
「春にもいもって穫れるじゃないですか?」
やっぱりそうみたい。
こんな、かしこまった言い方しなくても、怒ったりしないのに、いつもこんな風に言うラズロさんに、笑ってしまう。
「ニョッキにしますね」
「さすがアシュリー!! オレ、前にアシュリーが作ってくれたクリームソースで食ってみたい!」
「ラズロさんも手伝って下さいね」
「おうよ!」
クリームソースなら、第一王子にも食べてもらえそうだし、身体にも良さそうだよね。
2
お気に入りに追加
347
あなたにおすすめの小説
転生嫌われ令嬢の幸せカロリー飯
赤羽夕夜
恋愛
15の時に生前OLだった記憶がよみがえった嫌われ令嬢ミリアーナは、OLだったときの食生活、趣味嗜好が影響され、日々の人間関係のストレスを食や趣味で発散するようになる。
濃い味付けやこってりとしたものが好きなミリアーナは、令嬢にあるまじきこと、いけないことだと認識しながらも、人が寝静まる深夜に人目を盗むようになにかと夜食を作り始める。
そんななかミリアーナの父ヴェスター、父の専属執事であり幼い頃自分の世話役だったジョンに夜食を作っているところを見られてしまうことが始まりで、ミリアーナの変わった趣味、食生活が世間に露見して――?
※恋愛要素は中盤以降になります。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
少女は自重を知らない~私、普通ですよね?
チャチャ
ファンタジー
山部 美里 40歳 独身。
趣味は、料理、洗濯、食べ歩き、ラノベを読む事。
ある日、仕事帰りにコンビニ強盗と鉢合わせになり、強盗犯に殺されてしまう。
気づいたら異世界に転生してました!
ラノベ好きな美里は、異世界に来たことを喜び、そして自重を知らない美里はいろいろな人を巻き込みながら楽しく過ごす!
自重知らずの彼女はどこへ行く?
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる