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第一章 新しい生活の始まり
020-2
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「冬の王は、やっぱり強かったんですか?」
当たり前だ、って言われるだろうけど、他にどう尋ねていいのか分からないから、そう訊いてみた。
「冬の王討伐隊に参加するのは二度目なんだけど」
ノエルさんが話し始めた。
「前回の冬の王は魔力が凄まじくて、死傷者も沢山出て、トキア様がいなかったら本当に危なかったと思う」
前回はトキア様も行かれたんだ。
「氷の槍が降って来て、どんどん兵士達が傷付いていくんだよ。回復魔法が間に合わないぐらい。トキア様の案で盾を変形させる事に成功して、冬の王の氷の槍の殆どを盾に吸収させてからは、こちらの被害も少なくなって、攻撃出来るようになってね」
ねぇ、とノエルさんがクリフさんに話を振る。クリフさんが頷いて続きを話し始める。前回の時も二人は参加したんだ。
「団長の号令を受けて、冬の王を守っている魔物達を屠ってからは戦況が好転して、そこからは冬の王の魔力を削る事に注力した。長期戦だったが、勝てて良かった」
「氷の槍には炎の魔法を使うのかと思っていました」
パニーノを齧る。
話に聞き入ってたら、蝶を追いかけ回すのに飽きたネロがやってきて、パニーノを食べようとするから。
「初めはね。でも、氷の槍が振る範囲が広過ぎたし、火のエーテルが少ないから炎を広げるのは難しくて、守りきれなかったんだよ」
あぁ、なるほど。冬だし、冬の王がいるから火のエーテルは少ないだろうから、そうすると魔法使いが火の精霊と契約していないといけないもんね。
「盾に吸収させるって、どうやるんですか?」
槍が盾に穴を空けてしまうんじゃないか、って、僕なんかは思ってしまうんだけど。
「トキア様は盾を水の状態で展開したんだよ。
大気中には水のエーテルが沢山あったからね、それをある程度の厚さで広げたの。冬の王からの冷気で水は氷化していってね。これは魔法師団の半数が参加して、大きな盾みたいにしたんだ」
へぇーっ!
水の盾に刺さった氷の槍、炎じゃないし、溶けたりしないよね?
「盾に氷の槍が刺さった瞬間に発動する魔法を、残りの師団の上級魔法使いが展開したんだよ。えっとね、魔法による膜を貫通する瞬間に氷の槍が砕けるようにする防御の魔法でね、細かくなった氷なら水の盾に取り込むのは難しくなかったから」
魔法って、凄い……。
僕のなんちゃって魔法とは、あまりに違い過ぎて……。って言うか、僕のを魔法と呼ぶことがそもそも間違いな気がしてきた。
「前回はそんな感じだったんだけど、今回はうって変わって楽でね」
クリフさんが二度頷く。
楽、と言うのがどのぐらい楽なのか、想像もつかないけど……。
「救援要請を出してきたあっちの国にね、優秀な子がいたんだよ」
優秀な子。ノエルさんが言うんだから、よっぽどなんだろうな。
「でも、あっちの国はその子の価値に気付いてないって言うか」
「いや、あの国が前時代的過ぎるのだろう」
「そうだね」とノエルさんが納得したように頷いた。
「うちの国は、数代前まで隣国と同じだったんだけど、疫病が流行ったり、雨不足による飢饉だったりと、続いたんだよ。だからこのままの体制では国が崩壊するって危機感を王家が抱いて、改革が進んだんだよ。だから僕のような平民でも、貴族様のクリフと肩を並べていられる訳」
うんうん、とラズロさんも頷く。
「無用な制度とは思わないが、あまり身分にばかりこだわっても良くない。貴族であろうが平民であろうが、愚物は愚物だし、優れた人材はいる」
平民の僕がこうしてクリフさんと話せるのは、本来ならあり得ない事だもんね。
「僕、この国に生まれて良かったです」
疫病とか、飢饉は僕のいた村が、今の形になるきっかけだったんだろうな。
当たり前だ、って言われるだろうけど、他にどう尋ねていいのか分からないから、そう訊いてみた。
「冬の王討伐隊に参加するのは二度目なんだけど」
ノエルさんが話し始めた。
「前回の冬の王は魔力が凄まじくて、死傷者も沢山出て、トキア様がいなかったら本当に危なかったと思う」
前回はトキア様も行かれたんだ。
「氷の槍が降って来て、どんどん兵士達が傷付いていくんだよ。回復魔法が間に合わないぐらい。トキア様の案で盾を変形させる事に成功して、冬の王の氷の槍の殆どを盾に吸収させてからは、こちらの被害も少なくなって、攻撃出来るようになってね」
ねぇ、とノエルさんがクリフさんに話を振る。クリフさんが頷いて続きを話し始める。前回の時も二人は参加したんだ。
「団長の号令を受けて、冬の王を守っている魔物達を屠ってからは戦況が好転して、そこからは冬の王の魔力を削る事に注力した。長期戦だったが、勝てて良かった」
「氷の槍には炎の魔法を使うのかと思っていました」
パニーノを齧る。
話に聞き入ってたら、蝶を追いかけ回すのに飽きたネロがやってきて、パニーノを食べようとするから。
「初めはね。でも、氷の槍が振る範囲が広過ぎたし、火のエーテルが少ないから炎を広げるのは難しくて、守りきれなかったんだよ」
あぁ、なるほど。冬だし、冬の王がいるから火のエーテルは少ないだろうから、そうすると魔法使いが火の精霊と契約していないといけないもんね。
「盾に吸収させるって、どうやるんですか?」
槍が盾に穴を空けてしまうんじゃないか、って、僕なんかは思ってしまうんだけど。
「トキア様は盾を水の状態で展開したんだよ。
大気中には水のエーテルが沢山あったからね、それをある程度の厚さで広げたの。冬の王からの冷気で水は氷化していってね。これは魔法師団の半数が参加して、大きな盾みたいにしたんだ」
へぇーっ!
水の盾に刺さった氷の槍、炎じゃないし、溶けたりしないよね?
「盾に氷の槍が刺さった瞬間に発動する魔法を、残りの師団の上級魔法使いが展開したんだよ。えっとね、魔法による膜を貫通する瞬間に氷の槍が砕けるようにする防御の魔法でね、細かくなった氷なら水の盾に取り込むのは難しくなかったから」
魔法って、凄い……。
僕のなんちゃって魔法とは、あまりに違い過ぎて……。って言うか、僕のを魔法と呼ぶことがそもそも間違いな気がしてきた。
「前回はそんな感じだったんだけど、今回はうって変わって楽でね」
クリフさんが二度頷く。
楽、と言うのがどのぐらい楽なのか、想像もつかないけど……。
「救援要請を出してきたあっちの国にね、優秀な子がいたんだよ」
優秀な子。ノエルさんが言うんだから、よっぽどなんだろうな。
「でも、あっちの国はその子の価値に気付いてないって言うか」
「いや、あの国が前時代的過ぎるのだろう」
「そうだね」とノエルさんが納得したように頷いた。
「うちの国は、数代前まで隣国と同じだったんだけど、疫病が流行ったり、雨不足による飢饉だったりと、続いたんだよ。だからこのままの体制では国が崩壊するって危機感を王家が抱いて、改革が進んだんだよ。だから僕のような平民でも、貴族様のクリフと肩を並べていられる訳」
うんうん、とラズロさんも頷く。
「無用な制度とは思わないが、あまり身分にばかりこだわっても良くない。貴族であろうが平民であろうが、愚物は愚物だし、優れた人材はいる」
平民の僕がこうしてクリフさんと話せるのは、本来ならあり得ない事だもんね。
「僕、この国に生まれて良かったです」
疫病とか、飢饉は僕のいた村が、今の形になるきっかけだったんだろうな。
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