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第一章 新しい生活の始まり

014-4

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 宵鍋から戻る途中に、洗った種はいつ乾くのかと聞かれた。数日かかりますと答えたら、ラズロさんはショックを受けていた。
 ちょっと粒マスタードに対する期待が高まり過ぎな気がするなぁ。

「最近は空気が乾燥してるので、直ぐに乾くと思います」

 たぶんだけど。

「その後に白ワインビネガーを入れるんだったら、最初から入れちゃっても良くないか?」

「カビたり、味のイマイチなのになってしまいますよ?」

「早く乾けー」

 思わず笑ってしまった。
 ラズロさんのこの切り替えの早さ、凄いと思う。

「それで? 乾いたら白ワインビネガーを入れて?」

「どんどん白ワインビネガーを種が吸っていくので、ヒタヒタになる状態のままで、3~4日置いておきます。
膨らんでまるまると膨らんだ種を潰します。それでまた3~4日置いたら完成するんですけど、味が落ち着いてないので、更に氷室に置いておきます。食べられるかどうかは、味見しないと分からないです。種によって食べられるようになるまでにかかる時間が違うので」

「なるほどな。じゃあそん時の味見、オレもやらせてくれよ」

 本当にすぐ食べたいんだね……。

「はい」

 城に戻った僕達は、ザルの上にカラシナの種を並べていく。早く乾くように、くっつかないように。

「今年は冬が来んのが早いかも知れねぇな」

「本当ですね」

 王都での初めての冬。
 お休みの日、ノエルさんと一緒にお買い物に行く予定。この前は最低限の物しか買ってない。冬用の物はまだ全然揃ってないから、冬が来るのが早めなら、準備を急がないと。

 「ラズロー!」

 食堂の窓から、守衛さんが声をかけてくる。

「おう! 何だ?!」

「おまえの知り合いだって言う行商人が城門に来てる!」

「今行く!」

 ラズロさんが走って駆けて行く。片付けをして、僕も食堂に戻る。

 端肉でペーストを作る為に、鍋をとり出す。前は高い位置にあったのを、僕でも取りやすいようにとラズロさんが場所を移動してくれた。
 あんなに端肉を買って来られてどうしようかと思ったけど、端肉を毎日のように煮ていると、食堂が暖まるから過ごしやすい気がする。

 鍋に端肉を入れて、魔法で上から水を注いでいく。
 沸騰させてから弱火で煮込みたい。火魔法を3つ同時に出して、鍋の下に入れる。

 煮込みながら何を買うかをメモする。トキア様に教えてもらい始めて、少しずつ書けるようになって来た。
 簡単なのは書いたり読んだり出来る。

 スポンジは必須。駄目になった時の事も考えて、多めに買いたい。
 リンさんに頼まれてる手に塗る油に、香りの良い薬草を入れたいんだけど、薬研(やげん)が無くて困る。
 今後も使うし、薬研も買おうかなぁ。高いかなぁ。日用雑貨じゃないから、値段が分からない。
 村では魔女の家にあった薬研を使わせてもらう代わりに、魔女の分も作ってたんだよね。
 当たり前になり過ぎてて、使おうとして無いと気付くものが多いなぁ。
 王都は雪、いっぱい降るのかな。雪ってフルール食べるのかな?

「アシュリー?」

 ラズロさんが戻って来た。

「おかえりなさい、ラズロさん。良い物は見つかりましたか?」

「いや、今から見に行く。アシュリーも厚着して来いよ。見た事無い物も結構あるから、買わなくても楽しいと思うぜ。それから買い食いもするから、フルールもな」

「はーい」
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