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公爵領と帝国の皇子(みこ)

帝国の皇子×ガルテングナーデの街

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 休憩は終わり使用人たちが天幕を片し、各々馬車に乗り込むと馬車を浮かせ再度森を爆走する。
 今日中に森を抜け、9つあるうちの1つ目の貴族領の街「ガルテングナーデ」に着きたいそうだ。

 俺が真ん中で右がティーモ兄様、左がキアラン。御者の背中合わせの位置に母様とペネロペ先生が座る馬車の中は母様が小さい頃の話で盛り上がっていた。

「お義姉様はそんなにお転婆だったのですか?」

「そうさ。初めて会った時、子供の泣き声が聞こえるから辺りを見渡しても木のウロを見ても居ないから、まさかと思って上を見たら木の枝に跨りながらにゃいていたんだ」

 キアランはおどけた様に話している。
 母様は公爵家の御令嬢なのに、木登りも出来たのか。

『この世界の貴族令嬢はかなり活発なんだね』

『……グラキエグレイペウス公爵家がちょっとおかしいだけですから。これから先、ガールフレンドが出来た時、気軽に木登りしようよ! なんて事言ったらダメですよ?』

『や、まさか。……木登りは誘わないよ……』

 危ない危ない。孤児院に木があったら遊びの一環として木登り競争とかにみんなを誘う所だった。田舎育ちだったから、木登りして山の果実とか獲るのは結構得意だったし、木の上から見る景色が好きだったんだよね。

「あの時は、森には地を這う危険な魔物がいるかもしれないから、迷子になったら高所に逃げなさいってお父様が言う物だから」

「ははは! 心配されていたんだね。あの森は、恵みは多いけれど魔物は少ないんだ。でもちゃんと身体を鍛えて神兵として神子様を1番近い所で護ってるアンちゃんが凄いよ」

 ペネロペ先生が何かを堪えているけれど黙っているままだ。母様はそのお転婆から一転、淑女としての礼儀や習い事をこなして皇后になったのだ。
 でも今回は俺のお付きの神兵って事になっている。

「しかしこの馬車は凄いにゃ。全然揺れないし、馬の速度が商人の使う馬とは段違いにゃ速さだよ。一度冒険者の魔馬に乗せてもらった事があるけれど、あの魔馬みたいだ。乗り心地は最悪だったけれどね」

 車窓から見える濁流の様に流れる景色に驚嘆しながらキアランが言っていた。

「ずいぶんと遠回りをしてしまって申し訳ありません」

「いや、いいんだよアンちゃん。人族の神子の奇跡をこの目でも見てみたいしね。僕たち猫の妖精族ケット・シーは好奇心が旺盛なんだ。決められた道を徒歩でまっすぐ行くよりも、未知の道を遠回りの方が面白そうだろ? 誘ってくれてありがとう」

「そう言っていただけて安心いたしました。無理やりお誘いして付き合わせてしまったので……」

 実はお祖父様の領地は意外に帝都から近い様だけど、今回はぐるっと回って、神子のお披露目前に人員の足りない元教会跡を浄化する、と言う使命を持ってしまったので、そこで選ばれた9つの領地。ちょいと観光とか今後役立ちそうな市場調査をしつつ、のんびり各地を回りグラキエグレイペウス公爵領へ行こうかなと思っているのだ。
  
『旅は道連れ、世は情けってやつだよ』

『……巻き込んだと言う感じも否めませんが』

『……そうとも言うけど』


 車内でわいわいと話し込んで、途中一度、お茶休憩を挟み、やがて森を抜けると辺り一面麦畑が見え始めた。

「ここの麦はまだ刈り取られていない様だね」

「金色の絨毯みたい」

 風に遊ぶ黄金の麦の穂を眺めていると数人の旅人が見えた。馬車は驚く旅人を尻目に、ズンズンとあぜ道を通り、やがて帝都よりも随分と小さな城壁の正門についた。

 ポツポツいる旅人の後ろに馬車をつけると、御者の魔力がゆっくりと収束して行く。馬車を地に下ろしたようだ。

 入領をするのに、以前は俺の商人ギルドのカードがあったけど、今回は国から発行された往来切手…手形? うーん旅券パスポートと言えばいいのか? を護衛が門番に見せていた。

「神子様、ようこそガルテングナーデの街へお越しくださいました。子爵邸までご案内いたします」

 話が通っていたのか、そのまま子爵邸まで案内されるそうだ。

『街の宿屋で夜を越すのかと思ってたよ』

『そこら辺は一応体裁は整えないとならないですからね』

 浄化が終わったら少し市場とか行かせてもらおうと、俺の膝で丸まるアルを撫でながら思ったのであった。




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わかった人にはわかる場所
恵比寿かぼちゃが有名なあの土地です。
北の大地の土地勘全くないので適当(ごめんなさい)なんですが次はどこの町がいいかなぁ。リクエストありますかね(笑)
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