神様お願い!~神様のトバッチリで異世界に転生したので心穏やかにスローライフを送りたい~

きのこのこ

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北の帝国と非有の皇子

非有の皇子×名付け

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元精霊の子達の親の体調を見て、この使用人用の離れでしばらく静養させる事になった。

 今回、保護された獣人や妖精族など行くところがなければ、グラキエグレイペウス公爵家で雇うことは可能か、後でお祖父様にも相談しようと思っている。いずれ店を経営するにしても、人手はあった方がありがたいしね。

 そしてこれからこの国はそろそろ冬支度に入るそうで、北国の長い冬に備えて貴族の領地持ち達は帝都を離れ、各々の領地に戻る頃だそう。グラキエグレイペウス公爵家も帝都の屋敷を執事に任せて、領地へ戻るそうだ。今回希望を出した土地の本格的な購入は来年となる。

 領地への移動は、ヤクトシュタインからこの帝都トロッケングロスフルスに来た時と同じく、転移門から移動できる様だが、俺としては異世界の旅の情緒を味わいたい。地方のグルメもリサーチしたいし。
 もっと欲をいえば、地上を行った方が方向がわかって個人で転移移動する時に細かく指定ができて楽だしね。

 母様に相談したら、ティーモ兄様と共に賛成してくれた。魔馬グラニたちの脚力と、俺が黒妖精の穴蔵フマラセッパで注文した馬車の性能も良いので、母様からお祖父様にお願いしてみると言ってくれた。

『でも母様……旦那さんほっぽらかして大丈夫なのかな……』

『大丈夫じゃ無いですか?今のところ皇帝は最低限の事以外は大臣が代行して政事を取り締まってるし、本来、アネットさんがやる民衆への施しやなんかは、代わりにボト大臣の部下が采配してるし、家令と執事長で分担し、城を切り盛りしてるみたいですし』

『……でも』

『まぁ、今だけですよ。アネットさんが自由に出来るのは。城に戻れば否が応でも「私」を捨て国の「僕」となるのですから。せめて那由多がアネットさんについていって、帝国の皇子となった方がアネットさんも安心するでしょうけどね』

『……』

『今は時間が許す限り、アネットさんは那由多のそばに居続けると思いますよ』

 母様……。

 日本で一般人だった俺は、統治だの皇帝学など考えも及ばなかった。この世界の皇子がどう言うものなのかもわからない。
 もし皇族という事で重要な位置に配属され、俺が決めた国同士の一つの政策が失敗したらどうなるかとか、沢山の命を失う事になったらとかと思うと酷く恐ろしい。簡単に何も考えずに皇族になると思える性格だったら楽だったのに。国民の税で生かされるってどんな感じなんだろう。ただわかっているのは重く責任がのしかかるのは確かだ。

 この世界に来て義務も何も無く、ただただゆっくりと生活して自由に生きたい。それだけだったのに。

 俺はまだ3歳で若く、将来の道が何十本とある中で、皇子という一本の道に歩いていって良いのかさえわからない。

 生まれ持っての皇子ならこんな悩みさえないのだろうけれど。

『深く考えることはないのです。皇族にはなるけど、皇位継承権を捨てるという道もありますし』

『継承権を捨てる……そっか。そうだよな』

 いつか生まれてくるであろうあの子の為に、母様を笑顔にして居心地も良くしてあげたいしね。

『後で母様に相談してみるよ』

『きっとアネットさん喜びますよ』



 さて。悩ましい問題はさておき、パパに頼まれたカーバンクルの名付けもしなきゃだ。

 離れから帰ってきた時にちょうど晩餐だったので、カーバンクルにもフルーツ入りミルク粥を食べさせてみたんだよね。

 ステータスを見たら雑食って書いてあったので。今は食後の焼き菓子を両手に持ってぽしぽし食べている。


 ▼カーバンクル ♂   (幻獣)
 ◆額の宝石と毛皮が超高額で売れる為、乱獲され、現在個体数が極端に少ない生きる宝石となっている
 名前 なし
 年齢 0
 パパ憑依用特殊個体
 ◆パパが憑依中カーバンクルの意識は眠っている

 スキル 魔力貯蔵 透明遁走エスケープ

 とても大人しい
 雑食。なんでも良く食べる
 トイレの場所は教えれば覚える


 あ。トイレのこと考えてなかったなぁ…この世界はペット用トイレとかあるのだろうか……まぁなければ作ればいいけど。

 ボロ座布団だったカーバンクルは今やふっくら高級クッションになっている。パパはどこを歩いたのか、くすんで薄汚て灰色の濁色だった体毛は、浄化により輝く金色の美しい体毛に変貌を遂げていた。

 しかし名前……名前ねぇ……ポチとかタマとかしか思い浮かばんぞ。モモンガっぽいしモモとか。額の石でルビーとかサファイア…いや体毛がキラキラ金色っぽいし金さんで良いかなもう…

 当のカーバンクルは、お腹いっぱいになって満足したのか、「キュッキュッ」と言いながら短い前足で顔をこすりコロリと俺の膝で丸くなってくつろいでいる。毛についていた菓子くずをとり、そっと撫でるととても柔らかい毛質でうさぎの様にふわふわだ。確かに極上の手触りで気持ちがいい。高額で取引されることはある。

「ナユタ、ずっとその子を撫でながら難しい顔をしてどうかしたの?」

 おっと。眉間に皺が寄っていたかな?
 隣にいたティーモ兄様がキョトンとした顔をして、食後のデザートの焼き菓子を食べながら俺をみてる。

「このカーバンクルの名前を考えていたのですがなかなかパッと思いつかなくて悩んでいたのです」

「名前?ナユタはこの子の名前をつけてテイミングをするの?」

 ティーモ兄様が、興味深そうにキラキラした目でカーバンクルを見やる。

「はい。でもピンとくる良い名前が思い浮かばなくて」

「どんな名前になるか楽しみだねぇ」

 ティーモ兄様はカーバンクルにニコニコしながら話しかけた。

 カーバンクルはと言うと

「キュ」

 っといって首を傾げていた。

 うーん。俺はカーバンクルの首?元をこしょこしょとかきながら考えた。ちょうど痒かったのかパタパタと短い脚が動いてる。

 カーバンクル…ガーネット…地球で最も多く出回っているのが古代から知られる鉄礬柘榴石アルマンディンというガーネットだったはず。そこから文字ってアルマはどうかな…金さんもいいけど。アルマって確かラテン語圏で、魂とか精神とかを意味する言葉だったはずだ。そう言えばフランスにも、セーヌ川にシャンゼリゼ通りからエッフェル塔に向かう通りにそんな名前の橋がかかっていたはず。

「俺の名前は那由多。お前の名前はアルマの「アル」でどうだ?」

 俺はカーバンクルを持ち上げて聞いてみた。

「キュキュ!」

 名前を受け入れたのか、カーバンクルと俺の中で一本線と言うか……何かしらのの繋がりを感じた。

『上手く従魔契約テイミングができた様ですね』

『あとは商業ギルドか何処かで証明を発行してもらわないとな』

 名前をもらって嬉しいのかアルはパタパタとふっさりした長い尻尾を緩く振り手足をパタパタさせている。
 今はまだ0歳のせいか、魔馬グラニたちと違って単純な嬉しいという感情しか感じない。

『もっと成長すれば細かい感情も読み取れる様になりますよ』

「ナユタ!この子の事、テイミングできたの?」

 ティーモ兄様は食事が終わったのか、椅子から降り近くへ寄ってきた。

「はい。アルという名前で受け応えてくれました」

「触ってもいい?」

 目をキラキラさせて言うティーモ兄様にスッとカーバンクルを渡す。

「どうぞ。アル、ティーモ兄様だよ」

 そっとアルを受け取ったティーモ兄様は、ふわふわだと大層喜んでいた。





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