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北の帝国と非有の皇子

非有の皇子×入札

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「指名競争入札ですか?」

「ああ。城に近い貴族向けの高級住宅街の教会跡地は新興貴族に人気だが、やはり商売が絡むとなると商業地区の教会跡地はな…」

 暫く屋敷に居ると言うお祖父様に、手頃な店舗を買えないか?土地代はいくらくらいなのか?とこれ幸いにと聞き出す俺である。


 この帝国ではおよそ16000弱の教会関連施設があり、ここ帝都にも大小合わせて千以上の教会関連施設があったそうだ。
 それをお祖父様たちが奔走し、浄化作業を完了させて、その跡地をどうするかと言う問題が出てきた。
 東西南北にあるもっとも大きな跡地には、新たなツクヨミの神殿を建てようとはなったけど些か多い。

 宗教というものは残酷で、俺が元いた世界でも、文明や宗教を破壊した後、神殿跡地に新たなる神殿施設を建設するなど、歴史を見れば宗教と国の支配は綿密に絡み合いる。支配者は国教司祭となり精神から簒奪した国を支配するのだ。宗教は簒奪者にとって良い理由なのである。

 日本も同じように、過去において巫女や神に最も近い天皇を祭主として敬い、政治まつり事面でも、票集めという面もあるが、各政党に多くの宗教団体などが絡んでいた。海外への隷属を危惧した豊臣秀吉が新興宗教弾圧に向け動いたのは誰しも知る事だった。

 国を作る上で切り離せない宗教。神からこの土地の支配を任されたという意味もあるのだろう。
 この帝国の人たちも、信仰を奪われることに慣れているのかわからないが皇帝が改宗するのであれば…という姿勢スタンスではあるのだが…

 些か教会施設が多すぎる。
 必要最低限、祈りの場があればいいと言うツクヨミの言葉に、半分以上の跡地を民間に売り出そうとしたが、城に近い貴族向けの高級住宅地近くしか買い手がつかず…商業が盛んな商業地区では小さな土地は駆け出しの商人たちに買われてゆくが、いくら浄化済みとは言え、ゲンを担ぐ商売には縁起が悪いと、地価が跳ね上がる広い土地などはなかなか買い手がつかないそうな。

(実際、幕とか無いだろうし街の人たちは跡地から骨が掘り起こされているのをみているだろうしなぁ…)

『丁度いいのではないですか?』

(え?)

『貴族街から城へ続くメインストリートに面した活気ある土地も売りに出されているようですし、複合商業施設ショッピングセンターを作ってそれこそ店子テナントを募って施設オーナーになれるじゃないですか』

(ツクヨミ…言うのは簡単だけどね…お金いくらかかるかも見当がつかないし、借金もしたくない。資本金はある程度手元に残したほうがいいだろ?)

『そう言う時のグラキエグレイペウス公爵ですよ』

(お祖父様?何故に)

『グラキエグレイペウス公爵家は相当な資産家ですよ。出資してもらうとか共同経営などやりようがありますからお話しだけでも聞いて貰えばいいんじゃないですかね?』

(採算取れるかも未知数なのに、俺の趣味にお忙しいお祖父様を巻き込むのもな…)

『そして那由多には強い味方がいます!』

(味方?)

『まず私と異世界の神々』

(異世界の神様…あ!商売繁盛の…!!)

『それに加え、』

(加え?他に何かあったっけ?)

『広告塔に売ってつけの皇家が!ほら!何かヤル気が出てきませんか?』

(うーん)


「…お祖父様…」

「どうした?ナユタ」

「実はご相談したい事がありまして…」





 な~んかツクヨミに丸め込まれている気がするが…お祖父様に、大きな土地を見繕いたいのと、その候補の教会跡地を見に行きたい有無を伝え、後日街に観に行くことになった。気に入ったらボト大臣に指名入札の権利を貰うんだ。

 ずっとお祖父様の屋敷に引きこもっていたので嬉し恥ずかし初めての帝都歩きである。

『那由多。お財布の紐はしっかりと固定するんですよ?』

(……はい)


 
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