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北の帝国と非有の皇子

非有の皇子×顛末

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 ボーッとしていたかと思えば突然突っ伏したり、笑いながら泣いてたり、独り言をモニョモニョ言っていたりと傍目から見たらかなり挙動不審だった俺は、公爵家の使用人たちにえらく心配され、医者まで呼ばれてしまった…と言うのは後の笑い話ではあるが…

 ここで笑い話ではない情報もツクヨミから齎されてしまった。


(え?糞女神を倒したわけじゃないのか?)

『はい。流石に私1人では肥えた強欲の魔女アヴァリチアをどうすることもできず、一時的に封印する事には成功はしたのですが…』

 ツクヨミは俺から得た魔力に、異世界の神の名の力、黒い奴インヴィディアの力を得たとしても、信仰由来の力の差等はどうにもできないと悟り、不意打ちでツクヨミの糸でからめ取り、糞女神の力を吸い取りながら繭状にして休眠状態…つまり封印の様な形に持っていったそうだ。

『私の力が及ばず…封印はもっても数十年…早ければ10年程で解ける様な物です。私もかなりの力を消費してしまい…また那由多の左目に御厄介になる事をお許し下さい』

(まぁツクヨミが左目に居ることは構わないんだけど封印が早くて10年程で解けるって言うのが厄介だな…)


 そんな会話をした後、グラキエグレイペウス公爵お祖父様を頼って、ボト大臣へ、ボト大臣から外務大臣みたいな外務を担当するお偉いさんに所謂、国家緊急事態宣言みたいなのを発令してもらった。
 自然信仰ではない各国の教会施設の捜査ガサ入れや、関係者の調書等取って失脚させ、先ずは糞女神の信者を徹底的に無くして力を低下させる作戦だ。

 くっくっくっ。使える権力を使わずして何が権力か。

 序でにツクヨミの信者も増やそうって事になって、早速城の礼拝堂や、新しくできた教会など帝都内で、とりあえずツクヨミや、こっそり日本の神様もお祀りしてみた。まぁ俺が持ってる御朱印の神様だけど…御朱印を一枚ずつ切り離して(と言うか神使さんに気に入った神殿を選んでもらった)御神体みたいに人目につかないけれど中心的なところに祀った。神官が用意した神饌もちゃんと減っている様で、神官がやたらと感動しているようだ。あとは毎日祈ると些細なと言うかちょっとした小さな幸せもある様で、住民たちに喜んでもらえているらしい。俺が徳ポイント関係で出し惜しみしていたからな…街の皆んなに祀ってもらって喜んでいるのかな神使さん。

 何はともあれ、おいちゃんは学ラン少年に殺虫剤で天誅じゃっ!て言っちゃったし。後数年でどうなるかはわからないけれど…少しでも糞女神の力を削いでなんとかしたい物です。

(あの学ラン少年、精神不安定になっちゃって危なげでちょっと心配だし…)

 おいちゃんの老婆心ではあるが。
 後は、神に敵対する能力のツクヨミによる強化育成鬼レッスン、主に俺。である。
 後は戦力に、ツクヨミがかつて天空の覇者だった、

 天空の城郭都市『妖精の箱庭ザシークレットガーデン

 を復活させましょう!って言い出した。あの城郭都市は話に聞くと空母の様でもあり戦艦の様でもあったそうだ。何それ?!男の子の夢が詰まってるじゃないの。空を飛ぶってだけでも楽しいのに。

 対神戦に城郭都市ザシークレットガーデンが効くかどうなるかはわからないけれど、それには先ずは一に人材、二に人材。土地にくわえて先立つ物。つまりは金も必要になる。

 たとえ生まれが皇族でも系譜にはないので、俺には商人としての身分しかない。ならば商人として先ずは稼ぎつつ…人材を探し…ちまちま『妖精の箱庭ザシークレットガーデン』を再建するのが目標だ。

 つい数日前までやる事が迷子になっていたとは思えない程忙しくなってしまった。

 後は皇室関係。
 俺の父たる皇帝は、未だ快癒とはいかない物の順次仕事を増やしてリハビリをしているみたいだ。

 母様は、

「ナユタがどこか遠い所へ行ってしまいそうで…」

 と、俺の側から中々離れず。
 俺的には皇帝とイチャイチャ子作りに励んでほしいなとも思うけど、皇帝が快癒するまでは…と言う期限付きで、これ迄の母様の扱いと言うか諸々の事もあり、心労での里帰りを許してもらっているそうだ。
 お陰で母様近辺に近衛騎士が幅を利かせ中々に筋骨隆々の強面でイカつくなっている。

 俺?
 俺は、古の帝国の様式で5歳以下の子供は系譜に載らないと言うのを復活させて、皇太子にってボト大臣が張り切っていたけど丁重にお断りして泣かせてしまった。
 外見は確かに皇帝にそっくりだけど、やっぱり負い目を感じると言うかなんと言うか。やっぱり生まれ変わったあの子の居場所を奪ってはいけない…と思っちゃって。母様もその事はわかってくれているので無理強いはしなかった。その代わりどこか有力貴族の養子にとかはじまってしまったけどそんなのお断りである。

 お祖父様に言ったら、グラキエグレイペウス公爵の養子に…という話も出てきた。もしそうなったら今度はお義父様と呼ばなければならないのか?なかなかややこしい。お祖父様だけどお義父様。でもお祖父様はまだまだ若く、俺くらいの歳の子供がいてもおかしくはないと思う。

 元々皇太子だった皇帝の皇族直轄領地と、お祖父様が何個か持つ内の爵位…伯爵位と言っていた…をある程度の年齢になったら継承させるとか言っていたけどどうなることやら。未だ養子に納得のいかないボト大臣は協議を重ねている…らしい。

 そして地下牢に居た呪いの元凶だった側妃…あの黒い奴に身体を取り込まれて、骨と皮だけになって横たわった豪華な服を着た人らの1人だった。
 側妃自身も妊娠し、子供を産んだ様だが、皇帝に盛っていた薬剤により子供は死産。夢と現実がごちゃ混ぜになって動かぬ人形を自分の子としていた様だ。
 母様を狂っていると吹聴していたそうだが、1番狂っていたのは側妃だったのかもしれない。ある意味同情は出来ないけれど、神に踊らされた憐れな女性である。

 地下牢には兵士や牢屋番、収監された犯罪者…主に側妃関係などそれなりに多く人が居たそうだが、ツクヨミが消えた後は皆骨と皮になって事切れていた。
 貴族以外は荼毘をして埋葬する様だが、兵士たちは手厚く葬り、犯罪者たる者たちは、最上級の刑でチリも残さぬ魔法の業火での荼毘が実行された様だ。
 これは戻ってもあなたの居場所はないと言う強い拒絶の葬送方法で、残った物で確認できたのは天に昇る煙だけだったとか。それも程なく消えたそうな。
 側妃に与して甘い汁を吸っていた何十と言う貴族家が消えたり遠縁に爵位を譲ったりしたようだが、虐げられていた側からすればなんともあっけない終わりだ。

(まぁ過去の事よりこれから先へ意識を向けないとな…)

 そうなのである。
 大口ビックマウスを叩いた始末をつける為に、齢3歳、石原 那由多は未来に向けて、今日も緻密な魔力操作に新しい魔法とわんさか習得するのにツクヨミ先生の指導の元、励むのだった…



「ナユタ。まだ早いんじゃないかと思ったけど…そろそろお勉強も始めましょうか」

「…え…?」

 ニコニコ笑う母様と、丸い縁メガネをクイクイっとあげる見知らぬインテリ夫人が俺をジロジロと見つめ値踏みをしていた。

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