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高校時代
②@本屋(1)
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高校2年の5月。私は始めて少し遠くの古本屋に行った。兄の部活の試合の応援のため遠出したので、せっかくならと思い早めに行って兄の試合まで古本屋巡りをしよう、と思ったのだった。
一言で言わせてもらう。すごかった。そこは古本屋が多いと有名な場所で、ずっと行きたかったけれどなかなか行く機会がなく、今回来ることができてすごく嬉しかった。色々な古本屋に行って、読んでみたかった本、絶版になった本、店長さんおすすめの本などをたくさん購入した。バイトやっててよかったー!
そして、時間が迫っていたので最後の1軒、と決めた古本屋で私は運命の人に出会った。
かっこいい
その人は大学生らしき人で、黒縁の眼鏡をかけた黒髪の人。立って本を読んでいる姿が凛としていてかっこよくて私は、一目惚れをした(と思う。なにしろ、恋愛をしたことがないからよく分からないけど。ネット情報を信じるなら、これが一目惚れ)。その人を見つめていたら目が合ってしまったので、慌てて頭を下げて店を出た。
かっこよかったな。兄の試合の会場に着くまでずっとあの人のことを考えていた。また会いたいな。でも、ここら辺に住んでいるならもう会えないかもな。でも、またここに来たいな。寂しく思いながらも、素敵な出会いができて私の心はぽかぽかしていた。
それからはカフェが忙しくなってしまったのであまりあの時のお兄さんのことは思い出さなかった。しかし、新たにバイトさんが入って少し落ち着いたので私は、またあのお兄さんに会った古本屋に行こう、と決めていた。
バイトが休みの日曜日。天気もよく散歩日和だったため、あの古本屋の最寄駅から1つ手前で降りて街並みを眺めながら歩いて行った。そして、目当ての古本屋さんに到着し、本が目当てじゃなくてごめんなさい、と心の中で店主さんに謝りながら入ったら。
(いた!)
この前と同じように本を読んでいた。面白いところなのか、微笑みが見える。ああ、かっこいいな。目の保養だなあ。かっこよすぎてドキドキしていたし、また会えて嬉しくてポカポカした気持ちが混在していた。また会えて嬉しかったけれど話しかける勇気はなかったので、目が合う前にお兄さんから目を逸らした。そして、あの日見ることができなかったこの本屋の本を見てまわったのだった。何冊も欲しい本があり、それを全部買うと重くて帰りが大変になりそうだった。けれど、この本たちにはこの機会を逃したらもう2度と会えないかもしれないと思い、欲しいものは全部購入して家に帰ったのだった。
そこで買った本を読み、重かったけれど買って良かったなと思いながら日々を過ごしていた。そしてあの再会からしばらく経って近所の本屋さんに行った時、すごく嬉しいことがあった。なんと、近所の本屋さんにあのお兄さんがいたのだ! 見間違いかと思ったけれど何度も振り返って見たから、絶対に本人だ。たまたま遠出してこちらに来ているのかな? それともここら辺に住んでいる? あの時あそこで会ったのは、私と同じように遠出していたから? そんなことを考えながら本を戸棚から取り出そうとしたら誰かと手がぶつかってしまった。
「あ、すみません」
そう言って顔を上げたら。
「こちらこそすみません」
お、お兄さん! なんとお兄さんと手が触れ合ったのだ。嬉しくてでもそんなの顔に出したらいけない、と思ってなんとか耐えていたけれど、
「顔、赤いよ」
と一言言われて、その努力は無駄だったと悟った。あー、恥ずかしい。そう思いながら顔を手で仰いでいたらお兄さんから話しかけられた。
「前、少し遠くの古本屋さんにいたよね、2回ほど」
「は、はいっ!」
お兄さんも覚えていてくれた。それが嬉しくて声が上擦ったけど許して。
「はは、そんなに緊張しなくても。本好きなんだ?」
「はい!」
そうしてお兄さんと少し話した後、
「僕は谷口。よかったらおすすめの本を紹介し合えたらいいなって思って。よろしくね」
と言ってメールアドレスを教えてくれた。嬉しくてまいあがった私は、
「橋水美紗です!」
と言って自分のメールアドレスを紙に書いて渡したのだった。
まさか、お兄さんと連絡先を交換できるとは! 嬉しくて嬉しくて家に着いたら、すぐに『連絡先、ありがとうございました』と連絡してしまった。
一言で言わせてもらう。すごかった。そこは古本屋が多いと有名な場所で、ずっと行きたかったけれどなかなか行く機会がなく、今回来ることができてすごく嬉しかった。色々な古本屋に行って、読んでみたかった本、絶版になった本、店長さんおすすめの本などをたくさん購入した。バイトやっててよかったー!
そして、時間が迫っていたので最後の1軒、と決めた古本屋で私は運命の人に出会った。
かっこいい
その人は大学生らしき人で、黒縁の眼鏡をかけた黒髪の人。立って本を読んでいる姿が凛としていてかっこよくて私は、一目惚れをした(と思う。なにしろ、恋愛をしたことがないからよく分からないけど。ネット情報を信じるなら、これが一目惚れ)。その人を見つめていたら目が合ってしまったので、慌てて頭を下げて店を出た。
かっこよかったな。兄の試合の会場に着くまでずっとあの人のことを考えていた。また会いたいな。でも、ここら辺に住んでいるならもう会えないかもな。でも、またここに来たいな。寂しく思いながらも、素敵な出会いができて私の心はぽかぽかしていた。
それからはカフェが忙しくなってしまったのであまりあの時のお兄さんのことは思い出さなかった。しかし、新たにバイトさんが入って少し落ち着いたので私は、またあのお兄さんに会った古本屋に行こう、と決めていた。
バイトが休みの日曜日。天気もよく散歩日和だったため、あの古本屋の最寄駅から1つ手前で降りて街並みを眺めながら歩いて行った。そして、目当ての古本屋さんに到着し、本が目当てじゃなくてごめんなさい、と心の中で店主さんに謝りながら入ったら。
(いた!)
この前と同じように本を読んでいた。面白いところなのか、微笑みが見える。ああ、かっこいいな。目の保養だなあ。かっこよすぎてドキドキしていたし、また会えて嬉しくてポカポカした気持ちが混在していた。また会えて嬉しかったけれど話しかける勇気はなかったので、目が合う前にお兄さんから目を逸らした。そして、あの日見ることができなかったこの本屋の本を見てまわったのだった。何冊も欲しい本があり、それを全部買うと重くて帰りが大変になりそうだった。けれど、この本たちにはこの機会を逃したらもう2度と会えないかもしれないと思い、欲しいものは全部購入して家に帰ったのだった。
そこで買った本を読み、重かったけれど買って良かったなと思いながら日々を過ごしていた。そしてあの再会からしばらく経って近所の本屋さんに行った時、すごく嬉しいことがあった。なんと、近所の本屋さんにあのお兄さんがいたのだ! 見間違いかと思ったけれど何度も振り返って見たから、絶対に本人だ。たまたま遠出してこちらに来ているのかな? それともここら辺に住んでいる? あの時あそこで会ったのは、私と同じように遠出していたから? そんなことを考えながら本を戸棚から取り出そうとしたら誰かと手がぶつかってしまった。
「あ、すみません」
そう言って顔を上げたら。
「こちらこそすみません」
お、お兄さん! なんとお兄さんと手が触れ合ったのだ。嬉しくてでもそんなの顔に出したらいけない、と思ってなんとか耐えていたけれど、
「顔、赤いよ」
と一言言われて、その努力は無駄だったと悟った。あー、恥ずかしい。そう思いながら顔を手で仰いでいたらお兄さんから話しかけられた。
「前、少し遠くの古本屋さんにいたよね、2回ほど」
「は、はいっ!」
お兄さんも覚えていてくれた。それが嬉しくて声が上擦ったけど許して。
「はは、そんなに緊張しなくても。本好きなんだ?」
「はい!」
そうしてお兄さんと少し話した後、
「僕は谷口。よかったらおすすめの本を紹介し合えたらいいなって思って。よろしくね」
と言ってメールアドレスを教えてくれた。嬉しくてまいあがった私は、
「橋水美紗です!」
と言って自分のメールアドレスを紙に書いて渡したのだった。
まさか、お兄さんと連絡先を交換できるとは! 嬉しくて嬉しくて家に着いたら、すぐに『連絡先、ありがとうございました』と連絡してしまった。
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