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颯斗編①

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 1年の頃から、「今日の体育合同だって。かっこいいとこ見れるよ! やったね!」「今日もかっこいいよ!」と毎日のように言ってきた菅山。返事をするのがだんだん面倒になり、想い人が兄貴と結婚することが決まったある夏の始まりの日。俺は菅山と付き合うことを了承した。

 麻由子とはいわゆる幼なじみ。彼女と兄貴は8個年上で、小さい頃は一緒に遊んでくれて、優しいお姉ちゃん、という認識だった。しかし、俺が中学生になり、周りが異性を異性として意識するようになる年頃。俺は、成人して今まで以上に綺麗になった麻由子と久しぶりに再会して、好きだと自覚したのだった。しかし、俺は8個も年下。それに加え、彼女は兄貴に惚れている。それがあったから、彼女が好きだという気持ちは絶対に誰にも気が付かれないように気をつけていた。

 つもりだったのに。菅山と付き合い始めて、初めてのデート。そこで麻由子と会い、話に夢中になっていたら、いつの間にか菅山が消えていた。慌ててスマホを見たら、

『ごめん。用事思い出した。帰る。あと、別れよう。好きな人いるのに他の人と付き合うとか、やめた方がいいと思う』

 と連絡が来ていた。

 気づかれた。今まで隠していたし、誰にも指摘されなかったのに。兄貴にすらバレていないのに。でも、俺は麻由子に対していまだに好意を持っているし、うるさい人が隣からいなくなるのなら清々するだろう、と思って、『分かった』と返事をした。

 菅山と別れて数ヶ月。

 麻由子と兄貴の夫婦生活は順調らしい。子供のことについても話し合っているとか。結婚式の時、麻由子と兄貴が誓いのキスをした時泣きそうになったのに、そういう話を聞いても嫉妬しなくなった。「おめでとう」と素直に言えるようになった。

 それなのに。

 菅山のことは気になってしまう。目で追ってしまう。体育の時楽しそうにしている姿。友達と話して笑っている姿。そういう姿を見つけては、俺にも見せて欲しいと思ってしまう。

 そしてある日の放課後。ブラブラと校舎をうろついていたら、空き教室から声が聞こえた。それが菅山の声だったので思わず聞き耳を立てたら。

「好きです! 俺と付き合ってください」

 告白場面だった。そいつは、1年のイケメンと騒がれている生徒。顔も性格も良い、という非の打ち所のない人物らしい。なんて返事するのか待っていたら。

「少し考えさせてください」

 とあいつが言っていた。

 考えさせてください? つまり、この1年と付き合う可能性があるってことだよな。そう思ったらムカムカした。この1年は、俺の知らないあいつを知ることになるってことか? 嫉妬で1年を殴りそうな衝動に駆られた。

 ああ。俺、いつの間にか。

 そう思うと同時に、告白現場の空き教室の扉に手をかけていた。


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