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2章

呼び出し

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 池澤さん一家は原田課長が一旦会議室へご案内。
 東雲さんと私は梅原係長に仕事へ行くよう言われた。係長は会議室に行くそうだ。

 午前中、課長と係長は戻って来なかった。部長もそちらへ行っている様子だった。
 こんな大騒動になってしまうなんて。

 悪いことをしたつもりはなかったのだけど、会社に迷惑をかけてしまった。
 いろんな不安に押しつぶされそうになる。

 それでも何とか業務をこなした。いつもより集中できていなかったから、ミスしていないか、後できちんと確認しなくては。

 昼休みに梅原係長に呼び出された。会議室へ連れて行かれる。
 まさか、問題を起こしたから最悪クビになったりするのだろうか。

「失礼します」

 ビクビクしながらドアを開くと、中に課長がいた。近くのお店で買ってきてくれたであろう、少しお高いお弁当が三つある。

「呼び出してごめんなさいね。どうぞ、かけて」
「ありがとうございます」

 課長の向かいの席に座る。係長はお弁当を配ってから課長の隣に腰かけた。ふたりとも神妙な面持ちだ。

 社長や部長はいないけれど、やっぱり何か処分の話だろうか。
 私はできればこの仕事を続けたい。

「あの……っ!」

 私が声を発したのと同時に、課長が話し始めた。

「怖い思いをさせてごめんなさいね。池澤さんからは今後一切是枝さんや会社に近づかないように念書をもらったし、警察に引き渡したから。彼のご両親もちゃんと監視すると約束してくれたわ。もう大丈夫だとは思うけれど、念のためにしばらくは気をつけてね。できれば一人にならないでほしいんだけど、送り迎えしてくれそうな人はいるかしら?」

 梅原係長の顔をちらりと見てしまう。彼はできるだけ真顔でいようと努力しているのはわかった。

「いなくはないです……」
「そう。申し訳ないけれど、お願いしておいてもらえるかしら?」
「はい」

 散々助けてもらっているのに、これ以上お願いして大丈夫だろうか。係長にも仕事がある。

「さー、ご飯食べましょ。疲れたでしょ」
「あ、あの、クビとか、減給とかは……」
「どうして被害者の是枝さんが処分されるんだ?」

 係長が怪訝な表情になる。課長もお弁当を開けていた手が止まった。

「会社に迷惑かけたって……」
「そんなこと、あるわけないだろう」
「そうよ。むしろこんなお弁当一つでお茶を濁してごめんなさいね。落ち着くまで有給取ってもいいんじゃないかしら?」

 何だか拍子抜けしてしまった。
 そしてまだここで働けると安心したせいか、涙がこぼれてきた。

「是枝さん⁉」

 係長のあわてた声が聞こえる。

「ごめんなさい。何だか安心してしまって……」

 泣き笑いながら、化粧を崩さないよう気をつけて涙を指先で拭う。
 梅原係長はこちらへ歩み寄ると、そっと洗いざらしのハンカチを差し出してくれた。

「ありがとうございます」

 受け取って、遠慮なく使わせてもらう。

「大変な目に遭わせてしまって申し訳ない。だけど、この仕事が嫌になって辞めないでいてくれたらと思う。是枝さんは貴重な戦力だから」

 仕事面でも認めてくれていたと、嬉しくなる。

「はい!」

 私は笑顔で大きくうなずいた。係長も優しい微笑んでくれる。

「さー、お昼をいただきましょ。部長の奢りだから」

 原田課長はウインクして見せた。
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