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第七章 嫉妬と愛と

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エレベーターの中で海星は右肩を壁に預け、組んだ腕の上で指をせわしなくとんとんしている。
なにか言わなきゃとは思うが、なにを言っていいのかわからない。

そのうちエレベーターが止まったのは、スイートルームがある階だった。
無言で私の手を引いて歩き、入った部屋で海星が私をベッドに放り投げる。

「きゃっ!」

起き上がろうとしたが、そんな隙さえ与えずに彼は私を押さえつけ唇を重ねてきた。
無理矢理、舌を捻じ込んで私を蹂躙するキスは呼吸すら許してくれない。
頭がぼぅとなり、意識が遠くなっていく。
余裕なく眼鏡同士のぶつかるガチガチという激しい音がした。

「……消毒」

私から顔を離し、自身が濡らした自分の唇を彼がねっとりと舐め上げる。
ぼんやりとした頭で、それを見ていた。

「誰が他の男にこの唇を許していいと言った?」

海星の手が私の頬をぎりぎりと握りつぶす。

「ご、ごめんなさい」

私の意志じゃなかったとはいえ、右田課長にキスを許したのは間違いない。

「男どもから熱い視線を送られているだけでも嫉妬で狂いそうなのに、他の男とキス?
どれだけ危機感が薄いんだ?」

「ご、ごめんなさい」

レンズの向こう、そこからは嫉妬の焔で燃え上がる石炭のような瞳が見ていて、恐怖で身体が震える。

「オマエには今一度、自分が誰のものかわからせないといけないな」

薄らと笑う海星は怖いくらいに妖艶で綺麗だった。
外したネクタイを彼が手に取る。

……今からなにをされるのだろう。

ぞくりと背筋が逆立つのを感じる。
怖いはずなのに私の身体は、蜜を零していた。

「はぁっ、あっ、はぁっ」

薄暗い部屋の中に、荒い吐息が響く。

「ごめん、ごめんな、さいっ!」

カチカチと激しく、海星の動きにあわせてベルトの金具が音を立てる。

「それはなんに対する謝罪だ?」

「ああーっ!」

反省を促すように奥を思いっきり撞かれ、悲鳴が漏れた。
ネクタイで縛られ、自由にならない腕がもどかしい。

あれから海星は自由を奪い、なんの準備もできていない私の身体の中へと強引に押し入ってきた。
謝っても許してもらえない、ただ嫉妬をぶつけるだけの乱暴な行為。
つらくてつらくて堪らないはずなのに、私の心は歓喜で震えていた。

……こんなに狂うほど、海星は私を想ってくれている。

それは無上の喜びだった。

「お願いっ、もう無理、無理だからっ!」

何度も達せさせられた身体がつらくて懇願する。

「なら、反省したのか?
反省するまでやめないからな」

「ごめんなさい、私が悪かった、からぁっ!」

もう何度目かの謝罪の言葉を口にしたものの。

「それはなんに対する謝罪だ?」

会話は堂々巡りし、海星がやめる様子はない。
きっと彼は、終わらせるつもりなどないのだ。

「あっ、あっ、ああーっ!」

もう何度目かわからない絶頂を迎え身体をガクガクと震わせるが、海星はかまわずに私の奥を撞き続ける。

……このままじゃ私、壊れる。

しかしそれはそれでいい気がしていた。

「ごめん……ごめんな……さい」

次第に私の声は絶え絶えになっていく。
もうとっくに限界を超えていた。

「だからそれはなんに対する謝罪だ?」

「それ……は……」

意識ももう、切れ切れになっていた。
気を失うまでもうさほど時間はないだろう。
最後に私の気持ちを、海星に伝えなければ。

「私……が……愛……して……いるの……は……かい、……せい、……だけ……」

精一杯の気持ちを込めて、彼に微笑みかける。

「ああっ!」

悪態をつくように声を上げると同時に海星が果てる。
そこで意識はぷっつりと切れた。
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