上 下
40 / 59
第六章 身籠もり旅行

6-2

しおりを挟む
「風呂、入らないか」

ちょいちょいと海星さんが手招きした向こうには、半露天の檜風呂があった。

「そう……」

そこまで言って、止まる。
今のこれは〝一緒に〟ってことなんだろうか。

「えっと……」

「いまさら恥ずかしがらないでいいだろ」

しれっと海星さんは言ってくるが、いつもはダウンライトで薄暗い寝室で抱かれているのだ。
こんな明るい時間だと、なんというか恥ずかしさが倍増というか。

「どうせ眼鏡がないから見えない」

「そう……ですね?」

だったらいい……のか?
いやしかし、この二泊三日は爛れた生活をするためにきたのだ。
これくらい、平気じゃないと困る。

「じゃあ……」

「うん」

若干の疑問は残るが、一応は納得した。

それでも一緒に服を脱ぐのはアレで、先に海星さんに入っていてもらう。

「お待たせしました……」

ノー眼鏡ではよく見えないのでそろそろと浴室へと入る。

「気をつけろよ」

「はい……」

ぼんやりと見える視界を頼りに海星さんの隣に浸かって気づいた。

「……眼鏡」

「は?」

「なんで眼鏡、かけてるんですかー!?」

そう。
彼の顔の上には今まで見たことがない、グレー縁のプラスチック眼鏡がのっている。

「風呂用眼鏡だが?」

なに当たり前のこと聞いてんの?
とでもいう感じだが、さっき「眼鏡がないから見えない」
って言いましたよね……?

「俺はかなり目が悪いからな、眼鏡なしで知らない風呂は危ない」

それはそうだろうけれど!
なんか負けた気がするのはなんでだろう……?

「……私も眼鏡かける」

「待て」

勢いよく立ち上がり、眼鏡を取りに行こうとしたものの、海星さんに止められた。

「普通の眼鏡を風呂で使うと熱と湿気で劣化する」

「うっ」

眼鏡が壊れるのは、困る。
しかし。

「でも自分だけ眼鏡とか狡くないですか」

「言っただろ?
俺は眼鏡なしだとよく見えないから、特に初めての風呂は危ない」

確かに海星さんはかなり目が悪い。
私は眼鏡がなくても携帯の画面なんかは確認できるが、彼は顔をくっつけるようにして見ていた。

「それより」

こちらを向いた海星さんの手が、私の脇の下に入る。

「ここに来い」

「えっ、ひゃっ!」

さらに持ち上げるようにして彼の上に足を開いて座らされた。
そのまま角度を変え、浴槽の背に彼が寄りかかる。

「これだと俺の顔がよく見えるから問題ないだろ」

すかさずちゅっと彼は口付けしてきた。

「そういう問題では……」

「そういう問題。
あと、花音も眼鏡をかけているとキスしにくい」

ちゅっ、ちゅっ、と軽く重なる唇は、次第に長く、深くなっていく。
そのうちぬるりと彼の舌が入ってきた。
ぬるり、ぬるりと下が絡まり、頭の芯が痺れていく。

「んっ……」

口付けをかわしながら、海星の指が胸の突起を摘まむ。
くりくりと捏ねくりまわされ、どんどん身体の熱が上がっていった。

「はぁっ、ああ……」

与えられる刺激かもどかしくて、微妙に身体を揺らす。

「キモチイイ?」

耳もとで囁かれ、こくりと黙って頷いた。

「さっきから俺のに擦りつけてるけど、自覚あるのか」

くすりと愉悦を含んだ声で笑われ、一気に身体が熱くなる。
気づけば私は刺激を求めて、海星のモノに腫れ上がった蕾を擦りつけていた。

「そのまま続けろ」

恥ずかしくてもうやめたい気持ちと、もっと刺激を求める私が対立する。

「どうした?
続けろって言ってるだろ」

「あん」

すっかり熟れてしまった、胸の赤い実を捻られ、甘い吐息が漏れた。
海星に命令され、背筋がぞくりとする。
おそるおそる、再びゆっくりと腰を動かしだした。

「なあ。
そんなに擦りつけて恥ずかしくないのか」

促すようにまた、彼が胸の実を摘まむ。

「言わない、でっ」

気持ちよくて身体が止まらない。
腰を振る私を愉しそうに海星は見ている。
それがさらに私の身体の熱を上げた。

「気持ちよさそうだな」

「キモチ、イイのっ!」

果てを目指して身体は走り出している。
さらなる快楽を求めて、必死に身体を動かす。

「俺も、キモチイイ」

「あっ、あっ、ああーっ!」

ぐりっと胸の突起を捻り潰され、頭がスパークした。
身体を仰け反らせガクガクと震える私を海星が支えてくれる。

「はぁ、はぁ」

「滅茶苦茶可愛かった」

まだ荒い息の私に彼が口付けを落としてくる。
私は達したが、彼のそこはまだ堅いままだ。
それにまだご褒美をもらえていない私の胎内はうずうずしていた。

「かい、せい」

彼の首に腕を回し、媚びるようにレンズ越しにその妖艶に光る瞳を見る。

「これが欲しいんだろ?」

今度は海星のほうから擦りつけられ、こくんと頷いた。
彼の顔が近づいてきて、耳もとに唇が寄せられる。

「……自分で挿入れろ」

熱い声で囁いて彼が離れる。
じっと見つめるオニキスの瞳は私に命令していた。
それでもできないと首を横に振る。

「俺はいいよ?
でも花音は我慢できるのか?」

「ああぁ……」

花芽をその先端で擦りあげられ、甘い疼きがさらに増した。

「ほら、挿入れろ」

彼の手が見せつけるように自身のモノを揺らす。
恨みがましく睨んだところで彼にはまったく効いていない。
少しのあいだ逡巡したあと、意を決して腰を浮かせ、それを花筒の入り口へあてがった。

「んっ、ああぁ……」

見つめあったままゆっくりと腰を下ろし、かいせいわたしのなかへ収めていく。
いつもよりも蜜道は締まり、彼のものをはっきりと感じた。

「はいっ、た……」

満足感でにっこりと微笑みかけた途端、彼の唇が噛みつくみたいに重なった。
頭を掴み、激しく求めながら海星が奥を撞いてくる。
呼吸すらも奪うキスは息をつく隙がない。
苦しくて頭がじんじんと痺れていくが、それが――キモチイイ。

……ダメ、これ。
飛ぶ……!

「あっあっあっあっあっあっ」

意識がショートし、そこから少しのあいだ記憶がない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

起業家幼馴染社長からの監禁溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
起業家幼馴染社長からの監禁溺愛

鬼畜外科医から溺愛求愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
鬼畜外科医から溺愛求愛されちゃいました

イケメンイクメン溺愛旦那様❤︎

鳴宮鶉子
恋愛
イケメンイクメン溺愛旦那様。毎日、家事に育児を率先してやってくれて、夜はわたしをいっぱい愛してくれる最高な旦那様❤︎

孕まされ婚〜こんな結婚したくなかった〜

鳴宮鶉子
恋愛
ワンナイトLOVEで妊娠してしまい結婚するはめになった美結。男友達だと思ってたアイツがわたしに手を出すとは思ってなかった

ハイスペ男からの猛烈な求愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペ男からの猛烈な求愛

授かり相手は鬼畜上司

鳴宮鶉子
恋愛
授かり相手は鬼畜上司

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

天敵同期からの最低なプロポーズ

鳴宮鶉子
恋愛
一夜の過ちでまさかの妊娠。わたしを孕ませた相手は大嫌いな天敵同期で……。

処理中です...