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第四章 彼が社長になると決意した理由

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自分の行動が酷くはしたなくて、シートの上で小さくなる。
彼は先ほどから黙っているし、呆れているのかもしれない。

「……あの」

「花音」

沈黙に耐えかねて私が口を開いたのと、海星さんが口を開いたのは同時だった。

「その。
どうぞ」

なにか言わねば耐えられなかっただけで、なにも考えていなかったので彼に譲る。

「花音のご両親との約束の時間までまだだいぶ時間があるから、ホテルに寄ろうか」

さらりと言われたその意味を理解するまでにしばらく時間がかかった。
理解すると一度は落ち着いた熱がまた、襲ってきた。

「あの、その」

「というか俺が限界」

邪魔になりそうにない場所に車を停め、海星さんはカーナビを操作している。
ちらりと見えた検索ワードは【ホテル】になっていた。

「あんな目で花音に見つめられて、我慢しろっていうほうが無理だろ」

目的地が決まったのか再び彼が車を走らせる。
そのうち見えてきた、いかにもな建物に彼は車を入れた。
戸惑いつつ降りた私の腕を掴み、海星さんは足早に進んでいく。
すぐに見えた部屋のドアを開け、ベッドに半ば私を放り投げた。

「……海星、さん?」

起き上がる私の前で彼がもどかしそうにジャケットを脱ぎ捨てる。
その手がノットを数度揺らし、ネクタイを緩めた。
シャツのボタンをひとつ、さらに袖口のボタンも外しながら彼が私に迫ってくる。

「……花音が、悪いんだからな」

「……あ」

耳の形を確かめるかのように舐め上げられ、声が漏れた。

「あんな目で俺を煽って」

「ん、んん……」

キスしながら海星さんが私のワンピースのファスナーを下ろす。

……煽ってって、先にあんな熱っぽい目で見て煽ってきたのは海星さんじゃない。

反論したいけれど、十二分に躾の行き届いた身体は彼に触れられるだけで歓喜の露を零しだす。

「……なあ。
もう湿ってるんだけど、花音もその気だったのか?」

愉悦を含んだ声で笑いながら、海星は下着の上からもう敏感になっている突起を撫でた。

「んんっ、んっ……意地悪」

きっと、わかっているのに聞いている。
海星はいつもそうだ、私を苛めて愉しんでいる。

「じっくり可愛がってやりたいが、そこまで時間がないからな……。
赦せ」

下着を脱がせ、指先に私が溢れさせた蜜を纏わせて赤い真珠をくるくると彼が弄ぶ。
すぐにビリビリと足先が痺れ、果てが近いのだと感じさせた。

「ああっ、あっ、……あっ、あっ、……ダメ、海星、イくっ……!」

大きく目を見張り、小さく身体を震わせてまもなく達した。

「可愛い、花音」

あやすようにキスしながら、彼がしとどに濡れた谷間から指を侵入させる。

「あっ、あっ」

「気持ちいいか?」

こくこくと頷く私の反応を見ながら、指が二本に増やされた。

「ああっ!」

海星だけが知る私の悦い場所を抉られ、軽く喉が仰け反る。
ぐいっ、ぐいっ、とそこを押され、深い快楽のスイッチを入れられた。

「ダメダメダメ、それダメだからーっ!」

迫ってくる〝それ〟は、自分が自分じゃなくなりそうでいつも怖い。

「花音の〝ダメ〟は〝悦い〟だろ」

けれどかまわずに海星はそこを責め続ける。
抉られるたびに快楽の熱が私の中に溜まっていった。

「ああっ、あっ、はぁっ!」

きつく彼の腕を掴み、容量を超えて膨れ上がっていく快感に耐える。
それはとうとう限界を超え……。

「あっ、ああーっ……!」

弾けると同時にぶしゃっと潮を噴き出した。

「はぁ、はぁ」

「だいぶ潮を噴くのが上手くなってきたな」

眼鏡の向こうで目を細め、うっとりと海星の手が私の髪を撫でてキスしてくれる。
それだけで嬉しくなっちゃうのってなんでだろ?

「もっと花音を可愛がりたいけど、時間がないからな……」

スラックスの前をくつろげ、下着を下ろして彼は自身のそれを取り出した。
はち切れんばかりに勃ち上がったその先端を私の蜜口にゆるゆると擦りつけ、そのまま私の身体の中へと入ってきた。

「はぁっ、ああ……」

ゆっくりと彼が進んでいくだけで、私に甘美な喜びを与える。
目を閉じ、それを甘受した。

「花音の胎内、キモチイイ……」

恍惚とした声が聞こえ、目を開けた。
海星は目を閉じ、無意識に締めつける私が与える快感に浸っているように見えた。

「花音……」

ゆったりと彼が動き出す。
それは次第に速くなっていった。
カチカチとベルトの金具の揺れる音がする。
海星は難しそうに眉を寄せ、迫り来るそれに耐えていた。
今日ははっきりと彼の表情が見えるが……ああ、そうか。
今日は私も彼も眼鏡をかけたままだ。
彼にも私が、彼の手によって乱れている様がはっきり見えているんだろうな。
そう自覚するとぎゅっと隧道が締まった。

「締めるな、花音」

さらにきつく、海星が眉を寄せる。

「む、り……」

天辺を目指してもう身体は走り出していた。
はっ、はっ、と彼の吐息も余裕のないものへと変わっていく。

「かい、せいっ……!」

もう限界だと彼に目で訴えた。

「俺、もっ……!」

促すように数度、彼が強く最奥を撞く。

「あっ、あっ、ああーっ、あぁぁぁぁ……」

突き抜けた先、どくどくと吐き出される余韻に浸りながら、私の声はフェードアウトしていった。

「はぁっ、あっ」

私の胎内から出ていき、彼が隣にごろりと寝転ぶ。

「俺は気持ちよかったけど、花音は……?」

まだ荒い息で海星が尋ねてくる。

「気持ちよかったです……」

目を閉じて深い息を吐き出した。
少し眠いように身体がだるい。
でもそれが、いつも幸せだった。

「よかった」

私にキスをし、海星がティッシュで自身の出したものが垂れ落ちるそこを拭いてくれる。

「俺、コンタクトにしようかな」

また私の隣に寝転び、海星さんは肘枕で私を見下ろした。

「なんで……?」

「コンタクトだと花音とエッチするとき、顔がはっきり見えるだろ?
さっき、花音の可愛い顔がよく見えて滅茶苦茶興奮したし」

「あー……」

その理由はわかる、かも。
今日は私も海星さんの顔がはっきり見えて、いつもよりも興奮した。

「でも私、眼鏡の海星さんが好きなんですが……」

私に眼鏡フェチの性癖はないと思う。
でも、ノー眼鏡の海星さんに迫られるより、眼鏡の海星さんのほうがよりどきどきするっていうか。

「ふぅん。
花音は眼鏡の俺が好きなんだ?」

片頬を歪め、にやりと彼が笑う。

「じゃあこれからは、眼鏡をかけたままシようかな」

「ん、……あ」

耳もとで囁かれ、せっかく収まった熱がまた、身体に宿り始める。

「だめぇ……また、スイッチ入っちゃぅ……」

甘い吐息を漏らしながら彼の顔を手で押さえて遠ざけた。

「それは大変だ。
約束の時間に遅れるわけにはいかないからな」

私から離れ、海星さんがわざとらしく肩を竦める。
それを恨みがましく睨みつけたが、彼にはまったく効いていなかった。
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